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●緑のタペストリーと絨毯、その6
れた音が聞こえるので家を出て100メートルほどのところで自転車を止めて前輪を調べた。どこもタイヤを擦っていないようなのでまた漕ぎ出したが、音は相変わらずだ。



オンボロの度合いもそうとうひどいので、調子の悪さはいつものことだ。昨日は前輪から擦れた音を発しながら照明器具の受けわたしに出かけた。擦れた音が気になって自転車を止めたのはそれからさらに200メートルほど行ってからもで、何となく幸先が悪かった。また、タイヤの空気は珍しく前輪が減っていたので、それのみ入れた。すると図書館に行く時よりペダルが軽かった。その点は気分がよかったのに、照明器具代金を入れた封筒をどこかで落としてしまった。それがどこかわからないものの、浅いポケットに大きなデジカメを入れた時に何か予感めいたものがあった。カメラの重さで先に入れた封筒がぐしゃぐしゃになり、それがまずいので、一旦カメラを出した。家の中でのことだ。その後カメラを取り出したのは、今日載せる白梅の写真を撮った時だ。その時に封筒がポケットからはみ出て地面に落ちたのかどうか。どこで落としたかわからないのは気持ちが悪い。こういうちょっとした不注意が、これからはますます増える気がするからだ。それが老化というもので、ま、そうなるのは自然であるので、お金を落としたことをあまり深刻に考えない方がよい。今日も昨日と同じ話題から始めたのは理由がある。今日も同じ自転車に乗って出かけた。右京税務署だ。毎年バスで出かけるが、天気がいいので自転車で行くことにした。その方がかなり早いはずだ。それに知らない道を行くのは楽しい。バスは便利だが、いつも同じ道を走る。たまには自分の足を使って知らない道を行くべきで、見慣れた景色が違って見える。そしてそういうものを写真に撮ってブログのネタにする。そう思いながら今朝はカメラを持って行かなかった。昨日と同じ服装で、カメラはここ3年ほど使っている緑色の不織布の手提げバッグに入れて自転車の前カゴに置けばいいものを、カメラのせいで昨日はお金を落としたので縁起が悪いと思った。だが、また何か過るものがあった。それは、カメラを持って出ない場合こそ、撮影したいものに出会うことだ。実際そのとおりで、梅津でふたつ見かけた。それを後日撮影しに行くつもりだが、最初に見かけた今朝でないのが本当は気に食わない。
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 税務署に行くのに、高辻通りを主に走った。朝10時頃で、陽射しが明るく、とても気分がよい。思わずメロディが浮かび、それをずっと口ずさみながら、その曲を今月の終わりに取り上げようと思った。空は刷毛でさっと刷いたようなうすい雲がいくつか見えた。その雲があまりにも絵のようで笑えた。急いで税務署に行く必要もないので、ゆっくり走った。西大路通りに出た時、北へ走り、西院近くまで来てから反対方向であることに気づいた。それほどの方向音痴だ。右京税務署は確定申告の期間中はここ数年別の建物を使っている。それに駐車場がない。自転車をどこで停めればよいか。すぐ北にスーパーがある。そこに停め、少し買い物をすればよい。買い物をせずに駐輪だけでは悪い。買い物を済ませて帰途につき、同じ道を走らなかった。少しでも違う景色を見る方が楽しい。途中、緑は少ない。四条通りより南は工場が多いからだ。天気がとてもよくて気分がよかったことのほかに、ようやく最終日に申告が間に合ったこと、そして自治会の次期会長がようやく決まって、今朝は大きな肩の荷を下ろした気分であった。次期会長など四役の名前などを記した各種書類を自治連合会に届ける期日が今日であった。数日前に連合会の副会長から催促の電話があった。15日までにお願いしますと言われてうろたえた。もう少し日数に余裕があったと思っていたからだ。それで以前もらった書類をあれこれ確認すると20日が締め切りとあった。それを思って次期会長の選出を慎重に進めていたので、15日までという電話は正直気分が悪かった。それならば20日ではなく、15日が締め切りとすべきだろう。5日間は大きい。いや、1日でもそうだ。わずか1日であっても、その間に決定的な大きな仕事が出来る。ともかく、15日までと言われてそれに間に合わせるべくここ数日は猛烈にあちこち動いた。次期会長選出の経緯についてはいずれまた本格的に書くつもりでいるが、筆者としてはよくやり遂げたと思う。4年で会長を辞めるつもりでいたから、予定のとおりに事が運んだ。
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 各種書類を15日までに提出しろと電話して来た副会長の自宅に持って行った。嵐山郵便局にも用事があったので、近隣ではあるが午前の税務署行きに次いでまた自転車を使った。副会長は不在、仕方なくポストに放り込んだ。その帰り、住宅地の道路の角を曲がった瞬間、下校中の小学4年生くらいの女児が見えた。そのままではその子にぶつかる。咄嗟にそれを避けようとして、ハンドルを左に切った。その瞬間バランスを失って倒れた。それだけではなく、ブレーキをかけた反動で全身が自転車から離れて前方に飛んだ。その拍子に両手でアスファルトを思い切り支え、顔を地面にぶつけずに済んだ。すぐに両手の掌を見た。アスファルトのざらつきで擦っていたならば血が出ていたが、地面に落ちる時に両手でふんばったので、砂粒の無数の跡が全面についただけで済んだ。そのように自転車に乗っていて倒れたことは過去に二回ある。一度は30歳くらいで梅津に住んでいた時、銭湯に出かける夕方であった。前輪のブレーキを思い切りかけてしまい、全身が自転車の前にすっ飛び、プラステッィクの桶が派手に割れた。けががなかったのは反射神経がまだよく働いたからか。二度目は10年ほど前だ。松尾橋をわたっている時で、前方の老人が急に狭い歩道で歩く位置を変えた。すぐ後方に迫っていたので、そのままでは老人にぶつかる。それでハンドルを車道側に切った。段差が3,40センチある。車道に倒れ込んだ。ちょうど後方には車がなかったのが幸いであった。黒の絹のジャケットの袖をアスファルトで擦って古着同然になってしまったが、それだけで済んでよかった。二度あることは三度あるで、それが今日であった。倒れ込んだ拍子に両足はサドルや後輪に圧迫されてしばらく立ち上がれなかった。女の子はすぐに近くに駆けつけて『大丈夫ですか』を心配そうに二度言った。内心『何と不格好なおじさんなのだろう』と思っていたろう。サングラスをかけていたが、それが恐いおじさんに見えたかもしれない。そうそう、そのレイバンのサングラスを今朝税務署に行く時にかけたところ、家内がおかしいと何度も言う。鏡を見てもどうおかしいのかわからない。ところが外して手に取って初めてわかった。いつもポケットに無造作に入れているが、圧迫されて眉間の細い横棒がひしゃげてしまい、正面から見るとレンズの並びが縦長に近くなっていた。それに気づかずにここ10日ほどは自治会の人たちと話をしたが、きっと『変なサングラスをかけているな』と思われたことだろう。身なりを段々とかまわなくなって来ている筆者を見て家内は『それが老化の始まり』と言う。全くそのとおりで返す言葉がない。
●緑のタペストリーと絨毯、その6_d0053294_0475968.jpg サングラスはすぐに両手で両端を引っ張ると元の形に戻った。そう言えばかけ心地が違う。それに気づかずにひしゃげたままで使用していた。地面に突っ伏した時、そのサングラスは割れなかった。顔をぶつけなかったので当然だ。割れても同じ形の新品をもうひとつ持っているので、どおってことはない。立ち上がって走り出したところ、自転車の前輪の擦れる音は昨日の数倍になっている。10メートルも行かずに前輪を確かめた。タイヤの覆いや支えがかなりひしゃげている。両手で引っ張ると簡単に元の形になった。それでまた走り出したところ、昨日と同じ程度の音になったものの、音質が違う。次の用事の郵便局まで走り、そこで前輪を調べた。すぐに擦っている箇所がわかり、また両手で手直しした。そうして走ると、すっかり擦れた音はしなくなった。これを怪我の功名と呼ぶのは正しくない。女の子に衝突せずに済み、また自分も血を出さず、打撲もせずに済んだから、怪我をしたことにはならない。だが、昨日自転車に乗りながら気になっていた前輪が擦れる音からすれば、お金を落としたことが怪我と言ってよく、2日がかりで気になる擦れ音が消えたのは、何か犠牲を支払うべきことがお金を落としたことであったのだと思えばよい。今日の2枚の白梅の写真は昨日撮ったもので、違う梅の木で、双方は100メートルほど離れていた。この2枚を撮っただけで、落としたお金のことを考えれば、1枚1000数百円かかっていることになる。次の縦長の1枚も昨日撮った。桜の林の桜の老木の際だ。ここに4,5月になるとクローヴァーなどの雑草が繁茂して寝転びたくなる。そのことは半ばシリーズ化しているこの題名の投稿の最初に書き、お気に入りの写真も載せた。春がまだ浅いので、緑の絨毯と呼べるほどにはなっていないが、それでもどことなくピンク色を帯びて春を感じさせる。折れた細い枝は老木の桜のものだ。風が強い日の翌日はそれが増える。
by uuuzen | 2013-03-15 23:59 | ●新・嵐山だより(シリーズ編)
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