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●『ラブレイン』
の雨。ロマンティックな題名の全20話。先週見終えたので記憶が新しいうちに感想を書いておく。韓国ドラマはだいたいどれも結末が最初から予想出来る。この予定調和に飽きが来るのは否めない。



それでも好みの俳優が出たり、また物語に登場する会社や業界、キーとなる条件設定が、現在の韓国社会をさまざまに反映しているので、その面白さで見るところがある。たとえばこの『ラブレイン』は日本でも人気の高いチャン・グンソクが主演だ。それだけでも視聴率を稼げると踏んで製作されたことがわかるが、これは視聴率合戦と日本を含めて海外への放送権を売る際の商売を考えてのことで、旬の俳優の起用は常識化している。それが面白くないとは言わないが、脚本の秀逸さが看過されがちで、また無名であっても演技力のある俳優を使う立場が忘れられやすくなっていることは否めない。グンソクの相手をするヒロインは筆者は初めて見た。ユナという芸名で、日本でもよく見かける顔だ。韓国ドラマに出て来る平均的な美人とは違って清楚な印象があるので悪くはない。だが、平凡な顔立ちで鑑賞向きではない。その意味で、この新人の起用は好ましいと思っていたが、先ほど調べて「少女時代」というグループ歌手のひとりであることを知った。それに、以前にもドラマに出演し、演技大賞をもらっている。となれば実力が認められての起用で、グンソクの人気と釣り合うと考えられての選出のはずだ。つまり、このふたりのラヴ・ロマンスを描けばどちらのファンからも歓迎される作品に仕上がるという読みがあったに違いない。その見え過ぎた仕組みをそのまま手放しで楽しいと感じるのはせいぜい20代までだろう。筆者はグンソクとユナのカップルが現実的にはあまり釣り合っているとは思えなかった。回を重ねる間にそれなりにこのふたりが居並ぶ様子に馴染みはしたが、ユナに女性的な魅力を感じなかった。3回目ほどに、どうも『冬のソナタ』にどこか似ていると感じたが、監督がユン・ソクホと知って想像が正しいことがわかった。ソクホ監督の『春のワルツ』は確か主人公の男女は新人を起用したのではなかったか。そのドラマも見たが、やはりヒロインに不満が残った。童話的な描き方は同監督の個性なので、それはそれで楽しむべきと思ったが、感想を書く気がしなかった。結局『冬のソナタ』のようにはヒットせず、そのまま同監督の名声も終わりかと思っていたところ、この『ラブレイン』で、さすがの才能と思った。童話的タッチはそのままに、『春のワルツ』をはるかに凌駕する絵画のような完璧なフレイミングとカメラワークで、そのあまりに凝った映像はほとんどこれまでの韓国ドラマでは最高の仕上がりと断言してよい。全場面が色彩効果を完璧に追及した結果によるもので、デジタルで色調を整えることとは別に、小道具ひとつ取ってもよほど吟味したことが伝わり、スタッフの多さがどれほどであったかと思わせられる。このあまりに絵画的な映像はこのドラマの画学生を主人公とする物語に見事に合致している。しかもどこにも安っぽさがなく、現在の韓国の経済を誇示する豪華さだ。日本ではまずこれと同質の映像のドラマは作れないだろう。
 話が変わる。目下BS朝日で『初恋』が放送中だ。このドラマは妹からビデオテープを借りて二回見た。韓国ドラマ史上最高の視聴率を取った作品で、現在三度目を見ても実に面白い。アナログ時代の作品で、音もところどころマスターテープの劣化のためか、急に小さくなる部分があったりする。また昨今の韓国ドラマのように華やかな社会やまた映像の美しい色合いとは縁遠く、貧しくて暗い雰囲気に満ちるが、どの俳優の演技も素晴らしく、ぐいぐい引き込まれる。これは、経済的な豊かさが良質のドラマを必ずしも作らないことを示す。先日文化勲章を得た山田洋次監督がTVで語っていた。日本映画は50年前は世界の最先端を走っていた。それが今はそうではない。高度成長を遂げる前の方が良質の映画を生み出した事実は、韓国ドラマにも言えるのではないか。筆者の見るところ、『初恋』を超える視聴率のドラマは韓国はもう生み出し得ない。そのことは日本で人気のあるグンソクとイナを起用し、しかも『冬のソナタ』の脚本家、監督を起用しての『ラブレイン』を見ればわかる。美しく仕上がっているが、『初恋』に比べれば感動があまりにも少なく、もう一度見たい気を起こさせない。これは最近の韓国ドラマすべてに言える。きれいにしかも完璧に出来ているが、どれも予定調和の結末で、しかもたとえば全20話とすれば各回の展開が見え透いている。それなりに楽しみにして毎回見はするが、ハラハラ、ドキドキ、ワクワク感に乏しく、期待に胸を膨らませることがない。先に使った「完璧」という言葉は、本当はふさわしくない。「完璧」はたとえば「無駄がない」という意味に捉えてよいが、韓国ドラマはその無駄のなさがあまりに目について面白くない。だが、これはハリウッド映画ではどれもそうであり、娯楽とはそういうものだ。つまり、韓国ドラマは暇つぶしの娯楽と捉える向きにはこれほど面白いものはない。芸術ではないのだ。芸術とは「完璧」でありながら、必ず「無駄」の部分を抱えている。これを韓国ドラマに当てはめると、無駄な場面がない。これはどの場面にも無駄がないという意味でもあるが、『ラブレイン』では特にそのことが徹底化されている。『初恋』では無駄が写り込んでいる場面がままある。これは低予算と細部を煮詰める暇がないための消極的な意味での瑕疵で、そこに芸術性を認めるものではないが、時としてそのさっさとやってしまった即興性が面白い。そこに活力がこもるのだ。『ラブレイン』にはそれがない。綿密過ぎて、作り事めいている。これはデジタル時代の大きな特徴でもある。一見無駄ないし無意味と思える場面や事物を含むことで、映像作品全体は真実味を帯びる。最低でも全16や20話のドラマでは、2時間程度の映画とは違ってそういう芸術的なことを考慮するのは難しい。『初恋』はその意味で芸術作品ではないが、それでも面白く見させる力が溢れている。俳優の演技力は『ラブレイン』も同じだが、『初恋』に力を感じるのは、おそらく暴力が描かれ、また貧しい者が最後には金持ちの暴力に打ち勝つという筋立てであろう。『ラブレイン』では貧しさは描かれない。また暴力場面もなく、醜い人間もわずかにひとりしか登場せず、しかも最終回ではそれがいい人に変わる。人気者の若いふたりを主役に配したお伽噺であるので、そういう結末にして後味をよくしようというのはわかる。だがそれではチャン・グンソクの演技の幅が狭まりはしないか。
 このドラマで気づいたことは、グンソクのファッションがユナのそれよりはるかに目立ったことだ。完全に男が孔雀化している。日本でもそうであろうか。グンソクのようにカラフルで女性的なファッションの似合う若い男優は日本にはいない。その点だけでも韓国の現在を知る手立てになって興味深い。『冬のソナタ』からははるかに違う、豊かな位置に韓国は至っている。そして、このドラマをユン・ソクホが撮っていることに同監督の新しい時代を生き抜くしたたかさを見るが、『冬のソナタ』よりも完璧な映像を撮りながら、かえって駄作となっていることに同情を覚える。絵としては実に美しいが、ほとんどただそれだけであるのが惜しい。せっかくの画家、また写真家を主役に据えながら、その芸術の核心に迫る内容ではない。脚本家やソクホ監督は万全の態勢を取り、無駄や隙のない作品を目指し、その成果を確実に得た。ところがその果実が深い味を秘めない。最初からアイドルふたりを起用した視聴率と商売を狙った作品ということが見え見えで、30代以上が見ても味わい深いといったことにはあまり意識が払われなかった。だが、それを言うときっと製作者から反論がある。というのは、このドラマは『冬のソナタ』よりもっと明確に親子二世代を扱い、最初の4回は1970年代の大学生生活を描く。そのことを知らずに見た筆者は、当初えらくレトロな設定や場面に驚き、街角や建物など、セットの巧みさに舌を巻いた。そして、韓国ドラマもついにこういう金のかけ方をするのだなと思った。特に興味深かったのは70年代の韓国の大学生がギターを持ってフォーク・ソングを歌うことだ。それがどれほど事実に即しているかは知らないが、ドラマでは70年代の後半のはずで、日本より7,8年遅いフォーク・ブームであったかもしれない。このフォーク・ソングを歌う男3人と、ユナの4人が、70年代と2012年のそれぞれ青年役を演じる。当然70年代を演じた4人は2012年には中年になっているので別の俳優が演じるが、それなりに似た顔が選ばれている。70年代の古風さがデジタルの鮮明な画像で描かれて多少の違和感があるが、デジタルでは色調を調整出来るから、70年代らしさを感じさせる古い色合いに整えられていた。またファッションや髪形、それに建物などは70年代を知る者にとってはまさにそれ風で、全編を70年代のドラマとして描いてもよかったのではないかと思ったが、2012年を描く回を見ると、最先端の風俗を映し、映像的には見応えがある。話を戻すと、二世代にわたる物語であるから、グンソクやユナが70年代に演じる役柄に、現在のたとえば筆者どの世代が感情移入出来る部分は確かにある。それはユン・ソクホ自身がそうであろう。監督の過去へのノスタルジーがこの作品を撮らせたところもあるはずで、その部分は30歳ほどの子を持つ親の恋愛という形でこのドラマに描かれる。ただし、それは自分たちの子どもが、自分たちの初恋の犠牲になってはいけないという自制心が働く形でしか描かれようがなく、そのことがいわばきれい事としてこのドラマを安っぽくしている。だが、そこにも反論があるだろう。いい歳をした大人が30年前の大学生時代に実らなかった愛を今こそ成就しようなどとは、かなり醜い姿であり、このドラマが描く形は現実的であるという見方だ。このドラマでは、大学生時代に結ばれることのなかった画学生が一目惚れした女性への愛が、30年後にどういう結末を迎えるかということが、グンソクとユナが演じる2012年の愛の物語よりもむしろ大きな関心となっている。これはグンソクとユナの若いファンだけではなく、中年が見ても面白い作品を考えてのことで、なるべく広い世代に見てもらうことで視聴率を稼ぐ意味でそれは当然の設定だ。だが、先に書いたように、同感するのはせいぜい20代ではないか。童話やお伽噺的に過去を懐かしむことは、普通の中年やそれ以上の人はまずない。心に思い描くことはあっても、映像で再現されることには気恥しさもあるからだが、一方では大学生の一目惚れが生涯を左右し、別の女性と結婚して子をもうけてまでも忘れ得ず、そのために離婚まですることが非現実的であるからだ。そして、このドラマではついにその初恋の女性を30年後に雨の街角で見かけて男は後を追い、対面する。そこまで昔の恋を忘れていなかったのであれば、なぜ別の女性と結婚したのであろう。その理由をこのドラマは描かない。そして、描くのはその画学生が結婚し、離婚した女性が嫉妬にかられて醜くなっている姿だ。それは真実の愛を得られず、学生時代の恋仇の女性に結局勝利出来なかった女の恨みとして理解すべきで、このドラマはそのように描くが、そんなふたりの間に生まれた男子が、夫が学生時代に愛した女性がほかの男との間に産んだ女子と一目惚れの恋愛をし、結婚するという物語は、いつものように運命的な愛、そして初恋に生涯執着するという韓国ドラマお決まりの世間の狭さを描いていて、このあまりにお伽噺しじみた内容に、もうそろそろもっと違う設定のドラマが生まれて来ることを期待したい。家内は70年代のフォーク仲間の残るふたりの中年になってからの絡みが少ないことが面白さを減じていると言っていた。全20話にまとめるにはそれも仕方ないだろう。二世代の交差を描くにはもっと回数を増やすべきではないか。
by uuuzen | 2012-11-08 23:59 | ●鑑賞した韓国ドラマ、映画


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