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●金沢にて、金沢21世紀美術館その2
功も成功、大成功だったのではないだろうか。裏日本という呼び方は差別的に響くので今はあまり使わないようだが、日本海に面する県にある美術館の中では金沢21世紀美術館は最もよく知られ、またたくさんの人が訪れているのではないか。



●金沢にて、金沢21世紀美術館その2_d0053294_0192028.jpg北陸最大の繁華街である香林坊からすぐの場所で、兼六園の斜め向かいに位置するとなると、金沢観光に訪れる人は必ず立ち寄るし、北陸の美術ファンは企画展を毎回楽しみにしているだろう。筆者らが訪れた時、老若男女が次から次へと人が入って来て、大混雑と呼ぶにふさわしい状態であった。そのため、なおさら遊園地を思い出した。今館内でもらった展示マップを見ている。11月4日まで『ソンエリュミエール-物質・移動・時間』と題して常設展をやっている。常設展と言うのはふさわしくなく、所蔵品展がいいか。展示マップにこの美術館のキュレーターが展覧会の題名を説明している。原稿用紙2枚程度で、その最後に『切り拓かれた思惟の宇宙を遊泳する旅は束の間ではかなくとも、またとない機会として鑑賞者ひとりひとりに記憶されることだろう。』と書いている。「思惟の宇宙を遊泳する旅」とはえらく文学的だが、大多数の鑑賞者はこの言葉に悪い気はしないだろう。ただし意味がよくわかっての話で、初めてここに来る中学生ならばもっと別の言い方の方がいい。『表現された思いを見て歩くことは、鑑賞者にとってまたとない機会となってほしいものです。』筆者ならこう書く。『物質・移動・時間』の副題もいかにも現代美術を振りかざした無機質な言葉で、ほとんど意味がない。いや、全く無意味だ。どんな作品でもこの3つは関係するし、表現している。それをことさら強調するのは、特にこの3つの項目が顕著な作家ないし作品を選んだというつもりかもしれないが、それはこじつけだ。あるいは嘘だ。美術作品はみな「物」を見せるものだ。そして製作するには時間が必要だ。また、完成した作品は美術館という別の場所、別の時間に移して鑑賞される。これは現代作品に限らない。所蔵品を見せるからには、何らかのまとまった定義が必要であるのはわかる。そのため、キュレーターが紹介文を書くのはわかるが、かなり無理してこじつけているようで滑稽だ。あるいは田舎っぽさを露呈している。「ソンエリュミエール」は1952年にフランスで最初に開催されたイヴェントに由来するらしい。「音」と「光」を合わせたショーで、今ではパチンコ屋がそれを代表している。ま、この展覧会を遊園地と見るのは正しいわけだ。また、現代美術家は美術館のイヴェントに駆り出され、人を多く動員出来るかどうかで世界的名声が決まる。昨日はこの美術館が開催する特別展は他館では手がけないものと書いたが、それは現代美術の動向に目を光らせ、その最先端のものをいち早く紹介しようということだろう。そんなことが現実に可能だろうか。世界のどこもまだ本格的に紹介していないものを真っ先にというのはまず不可能だ。経費がかかることであり、海のものとも山のものともまだわからないものに大金を投じ、日本で紹介するわけには行かない。それで欧米で名が知れわたり、何度か各地の美術館で個展が開催された者から選ぶことになる。一方、現代美術家も売り込みを世界中にかける。とにかくいくつもの美術館で作品を所蔵してもらえることが箔となり、また作品が売れる理由になる。そこには画商、画廊が介在するし、また間に入ってもっと多くの商人が儲けようとする。21世紀美術館はどのようにして作品を購入しているのだろう。地方都市なので、そのための財源も多くないだろう。館の外には昨日載せたような渦巻型の迷路状の色透明パネルの作品があった。全く遊園地そのもの、いやそれよりはるかに楽しさは劣る。昨日の1,2枚目の写真にはそれを最初から見抜いていた家内が傘を差しながら10メートルほど離れた位置に立ってこちらを向いている。美術館自体は円形でガラス貼りという退屈な印象なので、せめて玄関前の誘導地帯には目立つ作品をと考えたのだろう。この美術館はほとんど架設建築、フランスで言えばサーカスのテント小屋のイメージだ。もちろんサーカスはサークル(円)に因む言葉で、見世物を最初からイメージして館の構造を決めたのだろう。また簡単に取り壊し出来そうな点もサーカスのテントと同じだ。館内に入って思ったことは、外形が円でなくてもいいことだ。内部は四角い部屋で構成されていた。ならば五角形や星型でもよかった。いっそのこと若い女性に人気のあるハート型が、今や服などでも大人気の髑髏型でも面白かった。それほどの奇抜さがあった方が、学芸員の理屈づけにも最適であった。どっち道金沢にもっとたくさんの人が来てほしいという経済効果を狙ったのであるから、世界に図抜けた奇抜な話題性があった方がいい。それが円形だけというのでは、肩透かしを食らった感じがした。いっそのこと全館を地下に埋めて、地表は誰もが弁当を広げられる芝生にするか、遊園地にすればどうであったか。
●金沢にて、金沢21世紀美術館その2_d0053294_0201057.jpg

 この美術館で初めて現代美術に触れる小中学生は多いだろう。そういう子どもの中のほんのわずかが興味を持ち、将来美術家になりたいと考える。学芸員はその可能性を想像して、自分たちがいかにも偉いかのような錯覚をする。だが、その子が将来現代美術家になるにはどうすべきかという具体的なことは何も教えないどころか、大きな挫折を与える方が多い。ま、それはどんな分野でもそうだ。どんな小さな町でも男の子は少年野球団に入る。そして高校野球から将来はプロを目指す。多くの親はそう考えるし、子はそんな親の馬鹿な考えを背負う。そういう裾野の広い野球人口のおかげでプロ野球選手の人材に事欠かずに済んでいる。芸術も同じだろう。美術館がその最先端でまず夢をばら撒いている。そして芸大美大という学校商売が盛んだ。ところが芸大美大を出てもプロでしかも世界に名が売れる作家になるのはプロ野球選手と同じほど割合が少ない。純粋に絵を描くことが好きな小学生がいるとする。その子が大人になって画家として食べて行きたいと先生に言った時、先生はまず芸大や美大に進学すべしと告げる。その言葉にしたがって入学し、卒業する。ところがそれからどうして食べながら描いて行くかは誰も教えてくれない。まずは働きながら絵を描くことになるが、そのことでかつて美術館で見たように自作が世界中の美術館に展示されることなど夢のまた夢である現実を知る。だが、どうすれば世界的な作家になれるかは先生も学芸員も予測不可能だ。それがわかれば苦労しない。オリンピックのメダルを取る方がまだ簡単だ。決まった狭い枠の中で努力を重ねればいい。美術は一寸先が闇のような世界で、手探りで進むしかない。そのことを賢い子は早い段階で知る。絵がうまくても馬鹿な子は芸大や美大を出ればどうにかなるなどと呑気なことを考えるが、たいていの学芸員はそういう連中だ。何しろ時間から時間までサラリーマンのように働けば食べては行ける。そういう本当の苦労知らずが芸術家を査定するからおかしなことになる。また、学芸員は画家がデッサンの1枚でもしている間、文献に目を通すなど知識の吸収に精を出しているから、画家よりも芸術に詳しいと大きな錯覚をする。そういう学芸員が世界的に増えて、かくて現代美術はアイデア勝負になった。先のキュレーターの文章のように、中身がないのに言葉で煙に巻く。絵の好きな子どもが大きな芸術家となるのに抜群のデッサン力が必要といった時代はもうとっくに終わった。そんな絵は腐るほどある。もうあらゆるものがあらゆる描かれ方法で描かれ、今やかえって恐ろしいほど下手ななぐり書きが歓迎される。もちろんそれを巧みな弁説で学芸員を黙らせる話術はいる。ともかく、時間を潰してちまちまとデッサンなど重ねても学芸員にそれがわかるはずがないし、学芸員も有名作家を持ち上げている方が自分の名が売れるから、「無名だが才能のある人」といった存在を絶対に信じない。それを子どもは早々と知り。タレントにでもなった方が近道だ。とにかく名前と顔を世間で売り、それから趣味で描けば、TV局が喜んで何度も番組を作ってくれる。すべては有名度だ。この21世紀美術館の展示品も同じで、有名作家の作品を見せる。「ああ、あの(有名な)作家の作品はもう見たわ」といった調子で鑑賞者も自慢話をする。有名なものを見るから感動するのであって、芸大や美大も出ていない学問のない人間が仮に膨大な努力を積み重ねて空前の作品を作ったところで、誰も注目しない。運がものすごくよければせいぜいゴッホやモジリアニのように死後有名になる。そしてそんな夢物語を芸大美大は今でもまともな顔をして学生に説明するのだろう。実際死ぬまでそれを信じて作品を作り続ける人が大勢いる。そんな無名の作家の中から仮に誰かが酔狂で見出して有名にしたところで、経済的にも名声的にも潤うのはそういう連中で、結局はそんな連中の手垢にまみれるという現実を墓の中で知ることになる。21世紀美術館で並んでいた作品はみな遊園地の面白さに長けていた。つまり、タレント性も豊かということだ。これは人に好かれることを示す。その意味でも美術作家になるにはまずTVに出てタレントになるべきだ。名を売りさえすれば後はどうにでもなる。人生目立ってなんぼだ。政治家も芸術家も同じという時代になった。
●金沢にて、金沢21世紀美術館その2_d0053294_0195257.jpg

by uuuzen | 2012-10-19 23:59 | ●新・嵐山だより
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