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●サンドウィッチとバーガー
くなものを食べないことも、家内が筆者と外出することをあまり好まない理由になっている。さて、今日も展覧会の感想について書く気分ではなく、写真の在庫整理とする。



家内とよく出かける場所は美術館だ。京都はもちろんだが、大阪と神戸も多い。夕食はどうにか帰宅して食べることが最近は多いが、昼食を自宅で済まして出かけると、5時に閉館する美術館であるから、たいてい予定していたものが全部見られない。そのため、昼食は梅田や三宮でとなることが多い。梅田で食べる時はほとんどいつも同じ店だ。もう5,6年、いやもっと以前かもしれないが、梅田食堂街という、JRの高架下に密集する狭い通りが阪急を下りてすぐのところにあって、その中の一軒で食べるようになった。ほかのいくつかの店も利用していたが、いつの間にかそこ専門になった。梅田食堂街は戦前からあるのではないだろうか。安い店が並び、仕事帰りのサラリーマンが主に立ち寄る雰囲気に満ちる。とはいえ、筆者はそこで友人と飲んだためしはない。全部で数十軒ほどあろうか。縦横に店が並んで、迷路のようだ。まさに大阪らしくていいが、大阪市はそこを一新してもっとハイカラな感じにしたがっているのだろう。筆者が昼食によく行く店は、夜はバーになる。その料金も格安だ。昼はブランチ・セットが500円だ。日替わりをいつも頼む。なみなみと入ったコーヒーと、サンドウッチのセットがその価格だ。これは京都では考えられない。安くてもその量では800円は下らない。さすが大阪と言うべきだが、その食堂街ではどこも安いので、客を奪うのに競争だ。筆者が行くのはほとんど日曜日だが、日替わりは曜日で決まっているのではないから、いつ行っても焼いた食パンの間に挟む中身が違う。先日は久しぶりメニューを見て、日替わりではなく、サンドウィッチの中身を指定すると50円高くなることを知った。中身はどうでもよく、空腹が満たされればいいので、日替わりで充分だ。店内は天井が低く、また各席に灰皿を置いてあるので、客はたいていたばこを吸う。それを家内はいやがるので、なるべく煙の少ない場所に座る。いつもだいたい席は決まっている。店員は3人いて、オーナーらしき男性のほか、アルバイトの若い女性がふたりだ。女性の顔を覚えていないところ、頻繁に入れ変わるのか、あるいはたくさん雇っているのだろう。いつも2,3割の入りで、天井の上から響いて来る電車の音を気にしなければ、軽く腹を満たすにはちょうどいい店だ。喫茶店では今はコーヒーが500円以上するが、何しろ三角形に切った、厚みが5、6センチあるサンドウィッチが4つついて500円であるから、合理的な大阪人に向く。
●サンドウィッチとバーガー_d0053294_0335654.jpg

 先日その店に家内と入った。12時半頃であった。注文を聞きに来た30代の女性にブランチ・セットをふたつ頼んだ。すぐにコーヒーが運ばれた。サンドウィッチは作っている最中で、すぐに持って来るだろうと思っていると、筆者らの後に入って来た女性ふたりに先に運ばれた。おかしいなと思って奥に立っている女性店員に声をかけると、注文を取り来たのとは違う、知的で20代前半の美人がやって来た。どこかおどおどとしていて、すぐに中国からの留学生であることがわかった。ブランチを注文したことを伝えると、すいませんと謝り、一旦奥に行ってすぐに別のコーヒーを持って戻って来た。先に運んだものが冷めたので交換すると言う。筆者も家内もまだ一口も飲んでおらず、さほど冷めていなかったので、申し訳ないと思い、このままでいいと言ったが、それを受け入れずに、新しいものを置いて行った。それからすぐにサンドウィッチも運ばれて来た。相変わらず謝り続けるので、こっちが恐縮してしまう。その女性は注文を取りに来ていないにもかかわらず、自分のせいであるかのように感じている。大阪人は「いらち」であるから、注文したものがなかなか出て来ないことに我慢がならないが、待ち時間はせいぜい10分が限界だろう。筆者らもそれくらいは待った。その10分は、そうした薄利多売の店では長い。5分も待てば客は苛立つ。それを知っての、コーヒーの取り替えであったのだろう。それにしても、500円のブランチ・セットでコーヒーを2杯も出していれば赤字ではないか。確かにコーヒーは香りがよく、おいしいというほどのものではないが、もっとまずい店で500円以上するところがざらにある。一度夜に行って、ビールやハイボールを飲みたいが、家内は飲まないので、その機会はなかなかない。友人と一緒に飲みに行くような雰囲気ではなく、ひとりで、家路に向かう前にちょっと1杯喉を潤すのにちょうどよい店だ。そういう店なら立ち飲み屋があちこちにあるが、その店はそこまで急かされるような雰囲気はない。筆者がその店に入るのはいつも午後1時までだが、ブランチ・セットは、その名にそぐわず、朝の開店から夕方まで注文出来て、おそらくバーに変わる寸前まで食べられると思う。それはともかく、先日は初めてその店内をデジカメで撮影した。ストロボが発光しなかったので、撮影したことを店員は知らないだろう。店内は薄暗く、壁面にはカシニョールの複製画がいくつかかかっている。BGMはジャズだ。
 三宮で昼を食べる店は決まっていない。毎回違う。それもまたいい。京都では、筆者の身丈に合う店はどこも入ったが、さらに新しい店を探つもりはあまりない。京都は大阪に比べて高く、またおいしくない。価格と味はよく釣り合いが取れているもので、予算がだいたい決まっていると、どこに入っても同じだ。朝のTV番組で、有名人がよく行く店を紹介するコーナーがある。そうした店はたいていは少々割り高で、しかも筆者が行ったことのない地区にあることが多く、わざわざ訪れる気にならない。特にイタリアンやフレンチと聞くともう駄目だ。そういう店は、現地では2,3流どころに匹敵し、しかも現地では驚くほど安価であるにもかかわらず、その数倍の価格を設定している。同じお金を払うのであれば、そんな外国の付加価値のある料理を食べるのは損で、和食がいい。インドやタイ料理の店も近年はやたら増えて価格も低下気味だが、それでもそうした国によく行く友人に言わせると、現地の10倍かそれ以上の感覚で、アホらしいと言う。外国に行かなければ食べられないものであるから、価格的に高級となっても仕方がないが、幻想に酔っているだけとも思える。フランス料理で最もおいしいのは、旅行者がほとんど行かない、現地の下町の臓物料理と言う。それはそうだろう。ところが、日本でフランス料理で高い料金を取るには、まさかそうしたホルモンをメインにするわけには行かない。結局日本の高価なフランス料理は、金持ちぶることの好きな、そして味音痴が食べる。だが、和食といっても、京の割烹料理となると、これまたびっくりするほど高い。筆者は全くの安物食いだが、今一番好きな京都の店は、河原町三条のさぬきうどん店だ。そこで山芋と卵の入った温かいうどんを注文する。370円であったか、これがとてもおいしい。毎回これを食べる。毎日でも食べたい。先日は筆者の席のすぐ隣りに、アメリカ人夫婦とその子ども3人が陣取った。子どもは長男が14,5歳、妹は12歳と10歳くらいか。ふたりとも体格がよく、金髪で、絵に描いたような美人であった。家族全員が箸をうまく操ってうどんをすすっていた。ちらちらとその様子を見ながら、微笑ましかった。その外国人はきっと思っている。『日本で日本らしい食べ物が、こんなに安価で食べられるとは。』 先ほどのことに絡めて筆者が言いたいのはこうだ。『フレンチやイタリアンの料理で、200円や300円で食べさせる店がなぜ日本にないのか。桁がひとつ間違ってやしませんか。』
●サンドウィッチとバーガー_d0053294_0341596.jpg

 これも先日。家内と京阪電車に乗る用事があった。その前に腹を少々満たそうということになったが、阪急から京阪に乗り替えるまでの道のりにはろくに食べる店がない。すぐに、よく行くマクドナルドを思ったが、筆者はその店の味はあまり好みではない。独特の臭みが鼻をつくからだ。それで、店の前を通り過ぎた。さてどうしようかと思った瞬間、眼前にチラシを配っている若い男性が現われ、筆者の前ににゅっとそれを1枚差し出した。見ると割り引き券だ。バーガー・キングという新しく出来た店だ。それがどこにあるかときょろきょろすると、チラシ男性のすぐ背後であった。その道は、家内は朝晩毎日通っているが、初めて同店に気づいたと言う。筆者はスーパーの買い物にしろ、とにかく目的のものを見つける速度がきわめて早い。いつも家内はそのことに驚く。家内の呆れ顔がまだ収まらないない間に、もう筆者は家内を連れてその店の中に入っていた。安売りの商品は限られていたが、昼食には充分だ。290円だったか、胡椒の利いたチキン・バーガーをふたつ注文した。コーヒーは別料金だ。このバーガーがとてもおいしかった。それに量も多い。1個で満腹になった。あまりに安いので、翌日家内は仕事帰りに3個買って来た。節分までがその価格であったが、今は100円ほど高い正常の料金になっている。それでもあの量と味からすれば、安い。新しい店なので、内部もきれいであった。2階から四条通りを見下ろすと、さきほどチラシをくれた男性が道行く人にまだ配っていた。いい齢をしたおっさんが、500円以下の昼食をあれこれうるさく評定する姿は、あまりにみすぼらしいと言うべきだろう。だが、還暦を過ぎて老化する一方であるから、もう量もあまり食べられず、安いB級の食べ物で充分とも言える。グルメというものは趣味としては格好いいのだろうが、男が食べるものにあれこれこだわり過ぎる姿はみっともないという思いが筆者にはある。そういう考えをどこで身につけたのだろう。
by uuuzen | 2012-02-10 23:59 | ●新・嵐山だより
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