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●『碧緑の華 明代龍泉窯青磁-大窯楓洞岩窯址発掘成果展』
の絵柄を年賀状に描く際、左右対称の切り絵であるので、最初は2匹にするつもりであった。だが、それでは龍の全身を色紙の正方形に収めたり、タツノオトシゴのように横向きに描く必要があり、また龍は小さくなる。



●『碧緑の華 明代龍泉窯青磁-大窯楓洞岩窯址発掘成果展』_d0053294_0282427.jpg2匹というのも意味ありげで面白くないので、龍の顔を正面から捉えることにした。仕上がりは獅子の顔のようになった。彫り直しは時間的にも体力的にもない。それで一発勝負のその切り絵をパソコンで印刷した。プリンターのインクは年末に新品を買った。そのため、ここ数年のように赤1色ではなく、ほかの色を自在に使うことが出来た。青龍の言葉から龍を青くしてもよかったが、赤と青では目がパチパチする。そこで薄い緑の色紙に、仕上がった赤の紙で彫った龍を載せた。その薄い緑を選んだのは、心のどこかにこの展覧会について書こうと思っていたからだろう。さて、今日は正月気分の終わりである15日だ。予定どおり、正月らしいブログの話題はここ2,3日でこなした。書くべき展覧会は残っていないかと思うと、ひとつ書き忘れていることにすぐに気づいた。それを今日取り上げる。しかも、龍泉窯とは今年の干支にふさわしい。この展覧会の招待券も鳥博士さんから送ってもらった。定期的にそうしてもらっているが、全部を見ることはない。だが、見たものはなるべくブログにこうして感想を書くつもりだ。この展覧会は去年12月4日に国立国際美術館で『アンリ・サラ』展を見た後に回った。一昨年の2月に同じ美術館で同じように中国の窯跡から発見された磁器片を展示する展覧会『北宋 汝窯 青磁 考古発掘成果展』があって、ブログに感想を書いた。全く大した内容ではない。今回も同じことになるだろう。その理由は、筆者は中国の陶磁に強い関心を持たないからだ。この展覧会は名品を期待する向きには全く面白いものではない。発掘された磁器片を可能な限りつなぎ合せて器の形に復元しているが、元来失敗作であるから、仮に全部の片が揃って復元されても、それは2,3級品だ。日本に伝わって国宝になっているような名品を見ている方がはるかによい。だが、それを言えば身も蓋もない。というのは、そうした名品は数が少なく、発掘された破片でしかわからないことが多いからでもある。つまり、考古学の面から中国の陶磁器の歴史を見ようという展覧会で、実際発掘によって、歴史が塗り変えられた。
 『北宋 汝窯 青磁 考古発掘成果展』の後を受けて、この展覧会が開催されるのは、時代順を思ってのことで、一昨年の段階ですでにこの展覧会の開催は決まっていたのだろう。チラシ裏面の最初には、「歴史は青から碧へ。」とある。これは同じ青磁ながら、時代が下がるにつれて緑がかったことを意味している。展覧会の題名にある「碧緑」の「碧」は、紺碧の海といった表現から、青色系であることがわかる。龍泉窯は北宋時代から生産を始めた。それが今世紀に入って発掘がなされた結果、明時代の洪武・永楽年間、つまり14世紀に宮廷用の青磁を焼いたことがわかった。イタリアでルネサンスが起こる前のことだ。それほど古い時代の窯跡から近年発掘が行なわれたとは、中国とはどれほど広大で、発掘して調べなれればならない土地が何と多いことかと思わせられる。ひょっとすればエジプト以上かもしれない。四大文明の地であるから、そうであってもおかしくない。それはともかく、今回展示されたものはどれも緑が勝った青磁で、チラシやチケットに印刷されている鮮やかな黄緑ではもちろんないが、青とは全く呼べない。茶色がかった渋い色で、その複雑な色合いは西洋で言うセピア色を思えばいいのではないか。味で言えば、食通が好む珍味だ。その味は子どもにはわからない。その独特の深みが、お茶の色と同じように、見ていて心を落ち着かせる。青磁の色は、「青」の文字があるので、青と思いがちだが、実に豊富な色相があり、同じ時代の同じ窯でも、焼き加減によって発色ががらりと違う。それほど難しい焼き物であると、素人は思うしかない。おおまかに見て、「歴史は青から碧へ。」というように色合いが変わったのは、宮廷の好みの変化だろうか。あるいは、玉石の色により近づくことを思って、いわゆる真っ青に近いものよりも、もっと渋い、自然な色合いを求めたのだろうか。破片を見ただけで専門家はどの時代のどの窯かわかるに違いないが、今回、その色合いから改めて重厚さを感じ、また現在の原色を見慣れた目からは、日本にあまり馴染むものではない気もした。だが、鎌倉時代にたくさん輸入され、名品が伝わるほどに、武士階級には歓迎された。それは中国の珍しいものなら何でもよかったということを越えて、ひとことで表現出来ない深い味わいの色合いを、中国人と同じように味わうことが出来たためであろう。日本では、特に京都では、華麗な文様をたくさんつける焼き物が発達した。一方、青磁の控えめな無地の焼き物は、一旦魅せられると、容易に抜け出すことの出来ない魔力を秘めているように感じる。だが、日本ではその完璧な様子が、よいのがよくわかるとしても、多少息苦しく感じられたのではないか。現在でも青磁専門に焼く作家がいる。そういうものを見るのを筆者は好むが、宋の時代のような圧倒的な力強さ、迫力とは全く別のものを感じる。それは、汝窯から明代の龍泉窯の青磁の色の変化とは比較にならないほど、時代と地域性の隔絶による。そう思えば、破片でいいので、1000年前の青磁を手元に置きたいと考える人の気持ちはわかる。
 会場では珍しく映像の上映があった。40分ほどであったと思う。途中でうたた寝をしたため、半分ほどは見ていない。龍泉は、中国の南部、浙江省の龍泉県で、同じ名前の市もある。とても田舎で、建物は別にして、青磁を焼いていた頃と風景は変わらないはずだ。観光地ではないので、よほどの陶磁器に関心のある人しか訪れないだろう。これはひょっとすればTV番組で見た光景と混同しているかもしれないが、屋根つきの橋が映った。歴史のある橋らしく、両端の出入り口に橋の名前の書いた額がかけられていた。その橋を2,3人の小学生が通って行った。橋内部から外を見ると、韓国の田舎にあるのと同じ空気を感じた。発展著しい中国だが、まだまだ田舎が多く、そこにはのんびりとした時が流れている。そういう田舎町にかつて官窯があって、盛んに焼いていたが、納めるにはふさわしくないものが大量に出来た。そして、それを割って積み上げた土地がある。川を船に乗ってその場所を案内している中年男性が映った。普段は町の誰もそんなところには行かないようだ。川べりのちょっとした島のような場所に着くと、厚さ3メートルほどに破片が堆積していた。そこに上陸するのは難しそうであった。その男性もたまたま見つけたか、昔から一部の人が知っていて、それを小耳に挟んでいたのだろう。窯元はだいたいそういう辺鄙なところにあるというのが、日本も昔はそうであったと思える。破片を大量に捨てた場所はほかにもある。川面の下の泥の中にもたくさん埋まっているのが見えた。まさかそれらを全部発掘出来ないので、めぼしいところだけを掘ったのだろうが、それでも展覧会を開くには充分過ぎる量が得られた。そういう破片は、発掘がなされてからは一般人が持ち去ることを禁止したのかどうか知らないが、禁止出来ないほど大量にある。それゆえ、少しくらいは持ち出しても誰にもわからない。だが、それほど大量にあるので、誰も持ち出さないのが実情ではないか。では、それほどたくさんあるものが、なぜ近年発掘されたか。これは中国がようやく経済的な余裕を得たからであろう。そうした破片の価値はこれから上昇するものと思える。そのため、政府は先手を打って、一般人が発掘することを禁ずる措置を取るだろう。あるいはもうそうなっているか。映像の最後は、川沿いの1本の細い道だ。それこそ1000年前のままで、舗装されておらず、一歩踏み外すと川に落ちる。そこを青磁が運ばれて行った。そして、東は日本、西はトルコのトプカプ宮殿までもたらされた。日本にいると、文化に因んで1000年前の面影を感じる場所は少ない。中国ではそうではないようだが、急速な経済発展によって高速道路網が完備すると、龍泉もたちまち遅れを取り戻そうと都市化が進むだろう。また、中国が経済的に豊かになって、今後また優秀な焼き物を生む窯、あるいは作家がたくさん出て来るだろうか。美術を言えば、まずは絵画で、その次の次の次あたりが工芸であろうから、当分の間は19世紀までの陶磁器、つまり骨董品に人気が集まって、現在の作は見過ごされるのではないか。そんな時、日本の陶磁器が中国に先んじて国際的な評価を決めていればいいが、京都にも無数にいる陶芸家の作品は国際的にどうなのだろう。やはり、大した内容にはならなかったが、蛇足ながら書いておくと、陶芸にこの10日ほど、にわかに身近な出来事が生じ、またその過程のさなかにいる。その話題に触れておこうと思ったが、日を改める。
by uuuzen | 2012-01-15 23:59 | ●展覧会SOON評SO ON
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