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●『CARNEGIE HALL』その4
曲について昨夜書いたが、このカーネギー・ホールでのライヴで1971年当時の組曲を全部披露したのではなかった。今日書くディスク4には、「BILLY THE MOUNTAIN」という、組曲として最初から書かれた長い曲の後、「MUD SHARK」(泥鮫)という曲がアンコールで演奏される。



この曲は6月の同じニューヨークはフィルモア・イーストでのステージでは他の曲と合わさって「泥鮫組曲」とでも呼んでいい一連の曲のひとつとして演奏された。5か月ぶりにニューヨークで演奏するに当たって、6月と同じレパートリーでは具合が悪いと思ったはずで、そのあたりはなるべく曲がだぶらない工夫がなされた。つまり、カーネギーでは同組曲から「泥鮫」のみ取り出して演奏したので、当時のレパートリーを全部収録するとなると、さらにディスクが必要になる。それはいいとして、今回の4枚組の中で一番いいと思うのはディスク4だ。「ビリー」はおよそ47分の演奏で、これは『JUST ANOTHER BAND FROM L.A.』の倍だ。あまりに長いのでCDでは3つのパートに分けてあって、それぞれで頭出しが出来る。まず「PART 1」が28分半、次に「CARNEGIE SOLOS」と題されたメンバー順のソロが13分半、そして「PART 2」が5分半だ。今これを書きながら13分半のソロをリピートで聴いているが、「PART 1」の最後でマーク・ヴォルマンが「ザッパ!」と声をかけ、その次の瞬間ソロが始まる。この掛け声がなかなかいい。だが、それを聴くのであれば、「PART 1」も繰り返し演奏させねばならず、この中間部のソロは頭出しの位置をもう10秒ほど前にずらして、その掛け声も含めてくれればよかった。「ザッパ!」と掛け声を張り上げるのは、ジョンとヨーコの『サムタイム・イン・ニューヨーク』収録のジョンのリード・ヴォーカル曲「ウェル」において、ジョンが中間のギター・ソロの場になった時にザッパにかける声を思い出させるが、他のザッパのアルバムでは聴くことの出来ないこの掛け声は、ステージのスリリングさを伝えて面白い。ところが、掛け声の次にザッパのギター・ソロがあるかと思うとそうではなく、ドン・プレストンのミニ・ムーグのソロになって、ザッパは背後でリズムを刻む。これが少々拍子抜けだが、本当はザッパが演奏するはずが、ドンが間違って演奏を始めたかと思うとそうではない。ならば、「ドン!」と声をかけるべきであろうが、それでは様にならなず、やはりリーダーを持ち上げたということだろう。この「ザッパ!」の掛け声はカーネギー・ホールだけではなく、他の都市でのステージでもあった。
●『CARNEGIE HALL』その4_d0053294_0295568.jpg

 それを筆者は梅村さんが何年か前に送ってくれた「ビリー」の完全編集盤で知った。それはファンの間で流通しているテープをいくつかつなぎわせたもので、「ビリー」の最長ヴァージョンとなっている。長さは56分43秒で、ディスク4ヴァージョンより10分ほど長い。もちろんザッパはこの曲を56分の長さで演奏したことはなく、半年間各地のステージで演奏する間に少しずつ変化して行き、たとえば初期ヴァージョンではあった部分が最後近い演奏ではなくなり、代わって別の要素が加わったりした。それら全部をひっくるめて、最も長いヴァージョンはどういう形になるかを梅村さんは考えた。それとディスク4ヴァージョンと最大の差は、『PLAYGROUND PYSCHOTICS』のヴァージョンにはあるイントロがついていることと、ドラム・ソロがかなり長いことだ。そのソロはおそらくザッパのステージでは最長の部類に入る。また、梅村さんは5、10、11月の3つのステージから合成したが、音質にそうとうな差があって、その点はディスク4ヴァージョンの比ではない。話を戻すと、この梅村ヴァージョンでも中間ソロに突入する直前に「ザッパ!」の掛け声があり、次に演奏されるのがキーボード・ソロだ。したがって、この長大なソロの前に掛け声をすることが折り込まれていたのであろう。ちなみに梅村ヴァージョンではこの中間ソロはディスク4のソロと同じほど長いが、音質の点で後者に軍配が上がる。ま、梅村さんは筆者を初め、ザッパ・ファンだけに無料で配布したもので、個人が楽しみものであり、海賊盤の謗りは受けないはずで、梅村さんが描いたジャケットの写真をついでに載せておこう。梅村さんは今回のディスク4ヴァージョンを聴いて、56分43秒の編集ヴァージョンを改訂する気が起こったであろうか。音質があまりに違い過ぎるので、このディスク4ヴァージョンを組み入れると全体の調和は取れないだろう。筆者がディスク4が最もよいと思うのは、この中間ソロの圧巻さだ。ステージのほとんど最後になって、メンバーの熱気が頂点に達している。このソロのリズムは他のザッパのソロを繰り広げる曲にはないもので、ポップス並みに単純と言えば全くそうだが、それだけに踊りたくなってよい。体が自然に動き出す曲を筆者は好む。ソロ担当はヴォーカルのフロ・アンド・エディは無理であるから、残り5人となるが、ドンのキーボードの次にイアン・アンダーウッドのアルト・サックス、そしてエインズリー・ダンバーのドラム、最後にザッパのギターが来て、ベースのソロはない。また、ザッパのソロは、それまでの激しいドラムの熱気を静めるような静かなもので、これがかなり物足りない。だがザッパはキーボードとアルト・サックスのソロが充分熱いので、自分も同じように演奏しては単調になると判断したに違いない。ザッパのソロの間、ドラムもそれまでとは違って音をかなり落とす。そしてザッパのギターが終わった直後にまたフロ・アンド・エディが歌う「PART 2」が始まる。
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 さて、この「ビリー」は「ソファ組曲」や「泥鮫組曲」とは違って、同じ組曲ながら、全体を構成する各曲は他の曲とは置き返られないものとなっていて、最初から「ビリー」用に書かれている。そのことがこの曲を一体感の強いものにしているが、その点で気軽に聴くにはいささかしんどいところがあるのも確かだ。だが、スロー・テンポで静かに始まる様子に一旦腰を据えて聴くと決めると、やがて演奏が万華鏡のようにどんどん変化して熱くなって行く仕組みに、いつの間にか魅せられる。この組曲形式は、ザッパは2枚目のアルバム『アブソリュートリー・フリー』ですでに完成度の高さを得ていたが、2,3分の短い曲を束ねて組曲にするというアイデアは、LPという収録時間の制約や、ビートルズの影響がある一方、ザッパはよりクラシック音楽を見つめてそれに倣ったと言ってよい。そしてこの組曲の考えは生涯忘れなかった。そのひとつの頂点は『ジョーのガレージ』だが、同アルバムは「ソファ組曲」や「泥鮫組曲」と同類的であり、「ビリー」のような一体感を持つ組曲は、73年の「グレゴリー・ペッカリー」以降は管弦楽曲で試されたと言ってよい。ともかく、ラジオでかかる2分半のヒット曲という単純な形ではなく、演奏するのにそうとう練習を積まねばならない複雑で長い曲を書くことを得意としたことは、この「ビリー」を聴けばよくわかる。これはフロ・アンド・エディという、歌の天才があって初めて実現した曲で、このふたりの息の見事に合った歌い方は、猛烈な早口で長い文章を完全にユニゾンで歌い語る部分を聴くと誰しも納得する。この部分は梅村ヴァージョンにも含まれていて、カーネギー・ホールだけではなかったことがわかるが、今回のCDの発売で初めて披露される。その意味でもディスク4の価値は大きい。さて、「ビリー」が終わった後、すでに日づけが変わっていたのであろう。ザッパは音楽協会のユニオンに追加料金で600ドルを支払うことになったので、その分、元を取るためにアンコール曲を演奏すると語り、観客を沸かせる。そして始めるのが「MUD SHARK」だ。この組曲全体は『フィルモア・イースト・ライヴ』を聴く必要がある。ステージ丸ごと収録シリーズ、今回の発売で以下のように6枚が揃う。毎年1枚とすればまだ13年要する。それまで生きているかな。
●『CARNEGIE HALL』その4_d0053294_0305659.jpg

1、 70年4、5月
2、 70年6月から71年2月
3、 71年5月から12月(『CARNEGIE HALL』)
4、 72年9月
5、 72年10月から12月(『ZAPPA\WAZOO』)
6、 73年1月から12月
7、 73年12月から74年7月
8、 74年9月から75年3月
9、 75年4、5月
10、75年9月から76年3月(『FZ:OZ』)
11、76年10月から77年3月(『PHILLY ‘76』)
12、 77年10月から78年4月(『Hammersmith Odeon』)
13、 78年8月から79年7月
14、 80年2月から7月
15、 80年10月12月(『BAFFALO』)
16、 81年4月から12月
17、 82年5月から7月
18、 84年7月から12月
19、 88年1月から5月
by uuuzen | 2011-12-19 23:59 | ●新・嵐山だより(特別編)
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