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●「THE GARDENS OF BABYLON」
を変えたままさっぱりレコードを聴いていない。もう1年以上になるかもしれない。CDの便利さに慣れるとそういうものだ。だが、CDデッキは壊れたし、LPでしか持っていないアルバムはLPに頼らねばならない。



●「THE GARDENS OF BABYLON」_d0053294_12205046.jpg今日取り上げる曲もその部類に属する。今月のこのカテゴリーに取り上げる曲は、昨日までは別のものを考えていた。そしてその次の候補が2曲あって、それら3曲から選ぶつもりであったが、今朝急に思いが変わった。先日中村とうようが亡くなったので、その思い出に因む曲がいいと考えた。そうでなければ、今日取り上げる曲はもう書く機会がないと思う。毎月なるべく季節に合わせた曲を選んでいるが、今月向きの先の3曲を全部取り上げ終えるのは早くて3年かかるということになる。それまでこのブログが続いていればの話だが。それはいいとして、7月は七夕があって、どうしても星座を思い出しがちで、そのようなロマンティックで雄大な曲がいい。その意味で今日取り上げるジャン・リュック・ポンティの「バビロンの庭」はいいと思う。アルバムではA面の2曲目に入っているが、次の曲は「銀河をさまよって」と訳せる題名で、七夕を思い出させるところ、「バビロンの庭」もまた7月向きだろう。さて、「バビロンの庭」がなぜ中村とうようの記憶と結びついているかと言えば、この曲をラジオで紹介する番組を聴いたからだ。染色工房に勤務していた頃で、アルバムが発売された翌年の1977年だったと思う。その番組はNHK-FMではなく、民放だった気がするが、中村とうようのほかにアシスタントとして若い女性が聞き役に回っていた。毎回アルバムを1枚取り上げる内容で30分番組、さほど長く続かず、半年ほどで終わったと思う。毎週聴いていたわけではないが、ポンティのこの曲が収録される『IMAGINARY VOYAGE』から数曲紹介された日はよく記憶している。そのアルバムを持っていたうえ、ポンティのその当時のアルバムは出るごとに全部買っていたからだ。筆者がポンティのソロ・アルバムで所有しないのは、1993年の『NO ABSOLUTE TIME』以降の発売だ。ポンティの同じような音楽には興味がなくなったからで、今なお買う気が起こらない。2,3か月前のニュースだったか、ポンティがついにドイツのザッパナーレに出演するとあった。ザッパとポンティの蜜月は1973年で、当時スタジオでふたりがどれほど録音したかの全貌は、いまだ明らかにされず、長年筆者はその発売を待っているが、ザッパはあまり出来がよくないと思ったのだろうか。ザッパはマハヴシュヌ・オーケストラに参加していたポンティを一種引き抜くような形でマザーズに加えたが、ザッパの当初の予想とは違って、ポンティの画一的な即興演奏にあまりいい思いを抱かなかった。ポンティはクラシック畑出身で、大阪万博の際はヨーロピン・ジャズの一員として来日し、最初はロックとは無縁であった。ロックの基盤はリズムを強調したリズム・アンド・ブルースにあるが、ザッパにすれがブルース・ヴァイオリンを上手くこなす演奏者がほしく、それがシュガーケイン・ハリスであったが、ハリスはハリスで、また画一的なところを感じたというのがザッパの正直な思いで、そしてポンティの演奏が新鮮に見えたのだろう。理想はハリスとポンティを足したような才能であったが、それは無理というものだ。
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 ポンティは当初、古風と言えば語弊があるが、先人のジャズ・ヴァイオリニストの演奏を摸倣したような感覚で活動していた。だが70年代に入って時代はジャズからフュージョンに急速に変化し、それに合わせて自分の音楽を変える必要を思っていた。それがアメリカのアトランティック・レーベルに移籍してからは、一挙にオリジナリティが開花した。それはマハヴィシュヌやザッパのバンドで腕を磨いたことが大きい。特に前者はザッパのバンドよりも居心地はよかったのではあるまいか。ジョン・マクラフリンの音楽の方向性が、ザッパとはまた違う意味でクラシック的で、ポンティの音と卓抜な技術はより必要とされたと言ってよい。だが、マクラフリンはヴァイオリニストとしてポンティだけを雇わず、そこにもポンティの収まりにくさ、言い返れば、ソロ性が際立っていて、いずれひとりで立って自分のバンドを抱えるつもりがあったのだろう。実際そのとおりになったが、その意味でポンティはやはり突出した才能を持っていると言える。だが、フュージョン・ブームの下火に伴なって人気は次第に翳りを帯び、先に書いたように、筆者は90年代に入ってからはもう新作を追わなくなった。そため現在どんな演奏をしているのか知らないが、今年は秋に来日するようだ。ただし、チック・コリアのリターン・トゥ・フォーエヴァーの一員としてで、そこにはソロ活動で人気を持続出来なくなった様子がうかがえる気がするが、この点はどうなのだろう。また、チック・コリアも含めてフュージョンの歴史を作って来た面々がこぞって今は人気が下火になっていて、かつてのバンドを超えて人気者が集まって新たなバンド編成でツアーすることが珍しくなくなっている。悪く言えば、十羽ひとからげだが、聞き手にとっては新たな編成でどういう音になるかを確認する楽しみがある。1,2年前だったか、ポンティとバンジョーの名手のベラ・フレック、それにスタンリー・クラークの3人で臨時バンドを結成したというニュースがあったはずだ。それも今秋来日するリターン・トゥ・フォーエヴァーと同じような考えによるが、ポンティは自分のバンドをしたがえて来日出来ないのは、日本での知名度の低さ、あるいはそこそこ知られるにしても、70年代の活躍がその後、持続しなかったことにもよる。懐メロとして70年代半ばの曲を引っ提げてやって来るのもいいかと思うが、現在の筆者の世代がコンサート会場に足を運ぶとは考えにくい。そのことは日本だけなのか、欧米でもそうなのかはわからない。ポンティは70、80年代はアメリカでは若者に圧倒的な人気を誇ったから、旧曲の披露でもそれなりに会場には人が集まるのではないか。ただし、フュージョン・サウンドが現在どこまで人気があるのか、これも筆者にはわからない。
●「THE GARDENS OF BABYLON」_d0053294_12214642.jpg

 ポンティのアトランティック・レーベル以前のアルバムは10枚近くあったろうか。それらは時代を反映し、それなりに面白く、筆者は全部持っているが、ほとんど聴かない。そしてポンティと言えば今日取り上げる『IMAGINARY VOYAGE』が一番いいように思う。アトランティック・レーベルもので最初に買ったのがこれであったからかもしれない。また中村とうようの思い出にもつながっていることもあるだろう。その番組での中村の声や話の内容はよく覚えている。30数年前のことであるのに、記憶とは新旧にかかわらず、鮮明に保たれるものがある。中村が最初に紹介したのはアルバムの最初の曲「NEW COUNTRY」であった。この曲を中村は、ポンティの経歴を紹介しながら、アメリカで人気を獲得するには、アメリカのフィドル曲を摸倣したようなこういう曲を演奏する必要があると語った。「NEW COUNTRY」とは「新しい国」のほかに、ポンティとしては「新しいカントリー・ミュージック」の思いを込めたのは明白で、その巧みな題名にまず感心する。このカントリー風味をアルバムに盛らねばアメリカでは成功しないというのは、ヨーロッパのミュージシャンの脅迫観念になっているところがあるのではないか。ビートルズもそうで、主にその役割をリンゴ・スターに担わせた。アメリカで人気を獲得していた1965年になってもまだビートルズはアメリカのカントリー曲で大ヒットした「アクト・ナチュラリー」をリンゴに歌わせた。適当なカントリー曲が作曲出来なかったという理由もあるだろうが、実際のところはアメリカでの人気の持続を狙うにはアメリカで大ヒットしたカントリー曲をカヴァーする必要があったのだ。またビートルズがフィドルを全面的に採用するのは1968年の『ホワイト・アルバム』の「ドント・パス・ミー・バイ」であったが、そこまでアメリカを意識し続けたことになる。ポンティはフランスのノルマンディーの出身で、そうしたアメリカ特有の音楽を若い頃にはおそらく聴くことはなかったろう。だが、単純な内容なので、その気になればいつでもという思いはあったに違いない。「NEW COUNTRY」では素早い演奏で、技術の披露は思う存分行なっていて、このようにフィドルを演奏出来る才能はカントリー音楽畑にはまずいない。それでアメリカ人はこの曲を聴いてびっくりしたに違いない。ともかくこの「NEW COUNTRY」に似た曲はポンティにはほかになく、その点でもよく練られたに違いないが、筆者が『IMAGINARY VOYAGE』を聴いて驚いたのは、この最初の曲のメロディをゆっくりと奏でるのが2曲目の「バビロンの庭」で、一気に時代も国もはるかに超えてしまうことだ。「バビロンの庭」はロマンティックで、フランス人のポンティの特質がよく出ていると思う。飛びっきり名曲と言うほどではないが、ポンティの何か1曲となれば、即座にこの曲を思い出す。あるいは『IMAGINARY VOYAGE』のB面のアルバム・タイトル曲だ。これは4つのパートに分れた長い曲で、パート3が最もよい。特にパート2から3に移るまでの演奏はメンバー全員の息が見事に合ってスリリングで、そのパッセージが終わった後に始まるポンティのソロは、彼の全曲の中でも最も印象深い出来映えと言ってよく、とても完成度が高い。そして実に感動的で、ポンティらしさが凝縮している。このパート3だけでもポンティの才能があますところなくわかるが、葉加瀬太郎の演奏しか知らない人がポンティの音楽を聴き始めるには、まずこのアルバムのこの曲あたりからがいいと思う。
●「THE GARDENS OF BABYLON」_d0053294_12215920.jpg

 このアルバムには後年ザッパのバンドに入るキーボードのアラン・ザボッドが参加している。またベースはザッパのバンドにいたトム・ファウラーで、ザッパがフュージョン音楽に接していたことがわかる。また、ポンティとザッパをつなぐのはジョージ・デュークで、ポンティは黒人のフィーリングはデュークから多くを学んだであろう。ザッパはポンティよりもデュークの才能に惚れていたようだが、やはり両者の共演は長く続かなかった。それはいいとして、ポンティの日本でのファンはポンティのベスト・アルバムを翌年発売の『ENIGMATIC OCEAN』を挙げる人が多いように思うが、それはたぶんにギタリストのアラン・ホールズワースが参加しているからだ。だが、ホールズワースの演奏は彼のソロ・アルバムの世界とは随分違って、ポンティ色に染まっている。また同作は、よりソリッドな仕上がりになっているが、ロマンティックさは減退している。A面に「MIRAGE」という哀愁を帯びた曲があるが、同曲より「バビロンの庭」を選びたい。さて、ポンティの来日公演は1979年2月にあり、筆者は家内と一緒に大阪の南御堂会館で9日に見た。半券を見ると、2500円、L列の25番だ。S席は3000円だったことがわかるが、早々とこれは売り切れになったと思う。買ったパンフレットは「WORLD TOUR ‘78-’79」と題されている。最後の見開きを見ると、アトランティックから発売された5作目を記念してのツアーだ。その5枚のうち、3作目が『IMAGINARY VOYAGE』だ。このジャケットは暗闇にポンティがたたずんで、なかなか恰好いい。ポンティのアルバムでは最も気に入っている。来日メンバーにアラン・ザボッドは参加していたが、パンフレット内のメンバー紹介の写真でザボッドはおどけた表情で、その点で来日メンバーの中では最もザッパのバンドにふさわしい風貌をしている。演奏ではベースのラルフ・アームストロングがかなり目立ち、観客の声援を受けていた。同会館は音が悪く、また筆者の席からはポンティの姿があまりよく見えなかった。そのような場所を使ったのは、客の入りが危ぶまれたからか。何人収容出来るのか知らないが、当夜は満員であった。その日の客は今でもポンティのファンだろうか。時代を越えて長年第一線で新作を発表し続けることは困難だ。ポンティが一番輝いていたのは、やはり来日公演の2年ほど前あたりではなかったか。当時のライヴ録音は1枚もののLPで発売されたが、その内容は来日公演と同じと言ってよく、ポンティの演奏はレコードとさして変わらない。その点、ザッパはコンサートとレコードは全く別物と捉えていて、コンサートの迫力と意外性はミュージシャンの中では特筆すべきものであった。だが、それは例外と呼ぶべきで、ポンティの才能が劣るというのではない。レコードとコンサートがほとんど変わらないというようになったのは、ジャズが廃れてからだろう。即興という意外性があまり歓迎されなくなったのだろう。それはいい場合にはいいが、悪い場合は客は損をした気分になる。だが、即興は客の熱気が創造に大きな役割を果たすもので、客が音楽作りに参加しているという考えがなくなった時に、即興もまた不要とされたのだろう。そこには演奏家と客との間に以前にも増して越え難い壁があるように思う。
by uuuzen | 2011-07-29 23:58 | ●思い出の曲、重いでっ♪
●嵐山駅前の変化、その124(... >> << ●時間の無駄話

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