2008年12月05日●第　１２７　話

　●マニマン・エドッ記リ　６

オオエドに３３３メートルの赤い鉄塔が建ったのはマニマンが小学生になったばかりの頃です。数年後、東京から転校して来た友だちの家に行くと、高さ５０センチほどのそのプラモデルがありました。それから半世紀、オオエドは塔だらけになりましたが、ムーンゴッタから見ればツクシかスギゴケの密集のような感じでしょう。そんなことを思いながら、マニマンは鳥になった気分で展望台からぐるりとオオエドを眺め回し、ビルの森の中にゴッタを探しました。何でもあるオオエドですから、まん丸い形の建築物のひとつやふたつはあるはずです。ところが、ママーニにも手伝ってもらって眼を凝らしても見つかりません。納得の行かないマニマンは、ふと真下を見ました。ビルに囲まれた小さな区画に、小さな細い石の塔がツクシかスギゴケの密集のように林立しています。墓地です。ビルは墓石の拡大形ですから、急にマニマンはビルの森のオオエドが死者の街に思えました。マニマンは『世界はゲットーだ』という古い曲のメロディを思い浮かべながら、『世界は「塔に至る」だ』と内心つぶやきました。