2008年11月20日●第　１１２　話

　●マニマンの外心反射っ記　８

マニマンの散歩道に、丸い反射鏡が向い同士に立つ場所があります。マニマンは鏡の中に映る鏡ほど奇妙な思いにさせるものはないと思います。鏡の中に鏡が映っていて、その映る鏡にまた鏡が小さく映り、その小さな鏡にまた映り、さらに映って、どんどん映って、まだまだ映り続けることが無限に続きます。きっと分子にまでそれが繰り返されているので、最後の映りを確認するには電子顕微鏡が必要です。そして、分子ゴッタの表面がツルピカの鏡になっているとすれば、世界は根本から鏡で出来ていることになります。マニマンは自分が分子サイズになって、分子ゴッタが映し合う無限反射を見つめている姿を想像しますが、夢幻を見る気分になってめまいを感じ始めます。ですから、散歩中にそんなことを考えると、反射鏡の鉄柱にぶつかってけがをするか、車か牛にはねられるか、あるいは田中さんの田んぼに入るか、犬の巻糞を踏んでしまいます。そのため、無限に反射し合う鏡が町中に立つことはとても物騒ですが、ニンゲンは普段そんなことを考えず、誰もマニマンの勝手な外心反射を面白がりはしません。