2008年11月10日●第　１０２　話

　●マニマンの外心反射っ記　６

マニマンは遠くを見つめる時、自分の目玉の焦点が無限大に遠くなっていることを実感しますが、その点で鏡は不思議です。鏡は２次元の平面なのにそこに本物の世界と同じ遠近が映ります。本物がなければ鏡にその本物の世界が映りませんが、鏡の中には本物の世界のように入って行くことは出来ません。そのため、鏡の中の、たとえば遠くの雲を見る時、マニマンの目玉の焦点は贋物の無限遠になるような居心地の悪さがあります。それでまた文化の日のことを書きますが、マニマンは五角形の凧窓のある館で展覧会を見た後、バスで駅に行き、電車を待ちました。その時、右手に大きな鏡があって、そこに向こう側のプラットホームがくっきりと映っていることに気づきました。そして、鏡の像と向こう側の本物の光景との間に全く角度のずれがなく、鏡が存在しないように見えました。マニマンは一瞬ふらりと鏡の中に入って行くことが出来そうな気がしましたが、鏡にぶつかってけがをするか、あるいは入って行けるとすると、するりとプラットホームに落ちて電車にはねられます。やっぱり鏡の世界は恐いのです。