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2008年04月14日●第 178 話
大きな枝垂れ桜をかがり火越しに撮影して満足したマニマンは、夕闇が色濃くなったことに気づきました。桜咲く夕暮れ時はいいものです。マニマンはそんな時刻にわいわいと花見をした記憶がありませんが、酒を飲んで大騒ぎをしたこともないので、花見酒はきっと花見客に圧倒されて気分が乗らないでしょう。そんなことを思いながら、マニマンは帰宅気分モードに切り変え、歩みを早めてすぐに神社の本殿前に出ました。そこでマニマンははっとしました。人は少なかったのですが、顔が判別出来ないほどに暗くなった中、何百という数のちょうちんが舞殿の四方を取り巻いて一斉に灯っていたのです。ほかに灯かりは一切ありません。ちょうちんの中には電球が入っているのですが、それでもマニマンは、『江戸時代はきっとこんな雰囲気だったろうな』という感慨に浸り、しばし灯かりの列を眺めました。そこから100メートルも歩くと、ネオンが氾濫する都会のまっただです。マニマンは都会と隣り合わせにそうした幽玄の場所があることに不思議さとありがたさを思い、再度帰宅気分モードになって駅に向かいました。
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