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●ドゥイージルのアルバム『Go With What You Know』解説、その4
まりの悪さのような感じがザッパのアルバムにはしばしばある。12小節で循環するブルースやブギで通す曲であれば、安心して聴くことが出来るが、そうしたものだけに囚われず、しかも今までにない新しいものに挑むとなると、多彩な楽器音や曲の複雑な構成を考えることになる。



そして、後者は下手をすると、何をやりたいのか聴き手に伝わらず、印象にうすい結果をもたらす。ドゥイージルの『GO WITH WHAT YOU KNOW』はそういう傾向が強いと言ってよいが、その実験精神は父親譲りだ。だが、ザッパはエドガー・ヴァレーズが自分の音楽を実験音楽とは思わなかったことからして、自作曲に実験という言葉を用いるのを嫌ったかもしれない。そしてこれはドゥイージルも同じか。体よく実験的であると評されことは、裏返せば未熟ということであり、そんな未熟な作品をなぜ発表するのかと謗られもしかねないからだ。そのため、『GO WITH WHAT …』に収録される曲はみなドゥイージルなりの完成した曲と言わねばならないだろう。その観点に立って曲を見直すと、ザッパにはない別の意味での収まりの悪さがあり、しかもそれはドゥイージル世代の新しい感覚の産物であると思わないわけにはいかない。つまり、その悪く言えば未完成的な収まりの悪さこそが持ち味で、それを何年も続ける中で、成熟さを増すという見方だ。ドゥイージルはZPZの活動をしながら、一方で自作アルバムを作り続ける方向に今後も進むだろう。それが父の音楽に学び、それを模倣しながらも独自のものを見出すことであり、真の意味でもザッパの息子と言うにふさわしい仕事がそこから生まれる。その道は険しいが、得られるものは今でのように、父の音楽に深く分け入らなかった時より豊かなものになるだろう。その第1作として『GO WITH WHAT …』を見ると、今後の展開が楽しみだ。以下に簡単に同アルバムの各曲について見ておこう。
●ドゥイージルのアルバム『Go With What You Know』解説、その4_d0053294_10375337.jpg

 1曲目「LOVE RIDE」はロケット打ち上げ音から始まる。唯一ドゥイージルのヴォーカルがあるポップス性豊かな曲でギター・ソロはない。ドラムスはジョー・トラヴァーズで、彼はほかに3、4、7、8、10、13曲目を担当している。2曲目「NOITPURE」は、早弾きのギター・ソロ曲で、父とは違う持ち味がある。3曲目「FIGHTY BITEY」はハード・ロック調ギター曲で、今までのドゥイージルの路線上にあるが、主題のひとつにエレクトリック・シタールの部分使用がある。4曲目「CC∫」はバイクの音のイントロ。リフはビージーズの「サタディ・ナイト・フィーヴァー」調で、これもドゥイージル好みを表わしているが、そのリフをBlues Saracenoがアコースティック・ギターで演奏する。5曲目「PRELUDUMUS MAXIMUS」はプログラミング曲だ。映画音楽的な管弦楽曲で演奏時間は短い。シンクラヴィアのような楽器を使ったのかどうか、また各パートをドゥイージルが書いたのか、それとも今はそうしたオーケストレーションがコンピュータの力によって簡単に出来るのかどうか。いずれにしてもドゥイージルがこういう音を好むのは今後の広がりが期待出来る。6曲目「RHYTHMATIST」はベースをスコット・テュニス、ドラムスをテリー・ボジオが担当。プログラミング管弦楽曲にギターがかぶさる。凝った構成で、後半にソロが少しある。7曲目「THUNDER RIMP」は「ピンク・パンサー」的なブギ・リフから始まり、プログラミング管弦楽曲が登場。これを2度繰り返した後、ギター・ソロに突入する。9曲目「ELECTROCOUSTIC MATTER」はタイトルが内容を示している。途中で「INCA ROADS」の主題変奏があり、また逆回転を使い、アコースティック伴奏にエレキ・ソロがかぶさる。ドラムスとベースはドゥイージルによるMIDI打ち込みによる。これは1、12曲目も同じ。10曲目「THE GRIND」は宇宙的サウンドから始まり、ジョー・ジャクソンの「BEAT CRAZY」と同じブギ・リフに移る。やはり以前のドゥイージル好みを思わせるハード・ロック調の曲だが、演奏途中に短い休符が目立つ長めの前奏の後、ギター・ソロに入る。VAI風と言ってよいだろう。切れ目なしに次曲「PEACHES …」につながる。12曲目「CHUNGA‘S WHISKERS」は9曲目と似る。ザッパの「チャンガの復讐」とは関係がない。アコースティック伴奏にエレキギター・ソロが重なる。13曲目「AUDIO MOVIE」はタイトルが中身をよく示す。ロケット到着音から始まるが、ドゥイージルは「ギター・サウンドスケープ曲」と書く。習作的だが、ザッパにはない意欲作で、多くのアイデアが詰まり、変化に富む流れを持つ。ベースはMark Meadowsで、2000年発売のドゥイージルの前作『AUTOMATIC』にも登場したが、その点から考えて、本アルバムはここ数年以内の溜め込んだ録音から選曲した可能性がある。

●2003年3月13日(木)正午前
●ドゥイージルのアルバム『Go With What You Know』解説、その4_d0053294_1037916.jpg昨日は税務署に行った後、一駅隣りの四条大宮に出た。仕立て上がった振袖を発送するために箱やタトウ紙を買う必要があったからだ。それより先にまずチケット・ショップで23日まで京都国立近美で開催されている展覧会の入場券を買った。ネット・オークションでそのチケットはしばしば出品されていたが、いつもかなり高く落札され、送料や最低でも105円の銀行振込手数料を考えると、こうしたチケット・ショップで買った方が5割は安い。みみっちい話だが、筆者のように片っ端から展覧会に行く者にとっては少しでも安い方がよい。9日に神戸に展覧会を観たことは先日少し書いたが、そのチケットもネット・オークションで購入した。神戸行きのその日、電車に乗ってからいつも外出時にバッグ代わりに持ち歩くレコード店の青いLP袋を覗くと、当日までが会期の別の京都での展覧会チケットが見つかった。てっきりもう少し遅くまでやっていると思っていたが、勘違いしていた。それで電車の中で先にその展覧会を観ようと一瞬考えたが、神戸を優先することに決めた。そのチケットもオークションで買ったもので、神戸から戻って6時の閉館まで仮に入れたとしてもゆっくりと観るのは無理であるから、もったいないが没にすることにした。神戸で展覧会をふたつ観終わってから元町に出て食事を済ませば5時35分になった。ドイツ文化センターに7時に着くのはほとんど無理な気がしたが、とにかく競歩モード以上の速度で歩いて阪急三宮駅に着き、ドアの閉まる寸前の特急に間に合った。四条河原町に着いたのが7時5分前で、もう諦めようかとも思ったが、京阪に乗って四条駅からふたつ北の最寄りの丸太町駅まで行き、そこから歩けばどうにか数分遅れで観ることができると判断した。それにその日のプログラムは『三文オペラ』の前にブレヒトの私的なフィルムが上映され、それがおそらく数分間であるので、それが終わったあたりであろうと予測したが、やはりそのとおりであった。7時10分にセンターに着くと、受付には誰もおらず、さてどうしようかと10秒ほどきょろきょろしていると、映写室から例の女性が出て来た。「まだ入れますか」「ええ、今始まったばかりです」。かくして『三文オペラ』は最初の1分ほどは見逃したものの、全編を楽しんだ。この作品はあまりにも有名なのでここで何も書く必要はないだろう。ちゃちな泥棒よりもっと大悪党が銀行家であるとする主張は実際正しい。今の日本を見てもそうだ。不景気になっても大きな銀行は国から援助を受けて倒れることがないし、現金で振り込む場合、手数料が最低でも105円(他銀行へとなると650円もする)かかるなど、全く理不尽な気がする。そのために友人は振込手数料無料の新生銀行を利用しているが、そうした動きはますます多くなるだろう。あまりにも客の方がおとなし過ぎて、銀行が威張り過ぎであることをもっと自覚した方がよい。神戸を歩いていて、ある大手の都市銀行の前を通った。それはもう豪華過ぎるほどのたたずまいで、ホテル以上であった。ギリシア神殿のような立派な石の柱を持った銀行は昔から日本でも当然のごとく存在するが、ギリシアの神が見て呆れるに決まっている。そこで祭られている神はマネーの神であり、現代はかくてマネーこそが最も神々しい存在に上りつめた。ギリシア神殿並みの豪華なビルディングも実はみなささやかな人々のお金をガバガバと吸い取って、それを手品か詐欺同然に操って増やして得たものだ。中学生時代、筆者と同じように成績のよかったある男子が大手の銀行に就職したいと言っていた。とても堅物な物静かな男で、いかにもそのまま銀行マンにぴったりの風貌であった。その後その望みがかなったと風の便りに聞いたが、さて今はどんな恰幅のよい銀行家になっているだろう。あるいはリストラされたか。ここまで書いて5分中断した。郵便が届いたので階下に行った。Fさんからだ。立ったついでにBGMをギーゼキングのラヴェルのCDからヴァイルの『三文オペラ』のLPに変える。ギーゼキング/ラヴェルの2枚組CDは先日オークションで購入した。春の今頃になると毎年ラヴェルのピアノ曲が聴きたくなる。ペルルミュテールとモニック・アースのどちらもフランス人の演奏のアルバムを所有しているが、フランス生まれのドイツ人のギーゼキングの演奏を700円の格安で見つけ、どのような音を出すのか興味があって落札した。一方ヴァイルのこの3枚組のアルバムを買ったのは20数年前で、ここ10年は針を落とした記憶がない。そのため箱を引っ張り出すと、紙虫の死骸がくっついていて、箱の周囲のあちこちが齧られて剥げていた。紙虫にすればわが家は天国同然の環境だ。ここ数年はもっぱらミルヴァやウテ・レンパーの歌うヴァイルのCDを聴いていた。スティングがよく歌っていたことも思い出す。ヴァイルはブレヒトと対でよく語られるが、ブレヒトの映画にはハンス・アイスラーも音楽を書いている。先日観た『クーレ・ワンペ』ではそのアイスラーの音楽がとてもよかった。恋人同士が野原を歩くシーンで流れるバラードには涙が潤んだ。そうだ、ヴァイルの後でアイスラーの歌曲のCDをかけよう。さて、Fさんについては以前にも少し書いた。去年は名古屋で『モネ展』と骨董祭を回った時に案内してもらったが、先月14日は神戸出張の帰りにわが家に立ち寄り、数時間話をした。10年前から数えると10人目のザッパ・ファンの訪問になる。ちょうど振袖の彩色中の時期で、そんな工程の途中を人に見せるのはほとんど初めてのことであった。Fさんにはたまに筆者の好きな音楽をカセットに録音して送るが、それがそれなりにFさんには刺激となって、新しい音楽の世界に魅せられ始めているようだ。これはとてもいいことだ。
by uuuzen | 2008-08-25 10:38 | 〇嵐山だより+ザッパ新譜
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