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●ミラー・シアターでのザッパ曲の録音、その1
し遅れたが、以前まとめて書いたミラー・シアターについての内容の補足だ。まさか大西さんがまた録音していたとは知らなかった。そのCD-Rがつい先日届いた。



2枚組で、音は予想以上によい。これはロック・コンサートではなく、みんなが静かに聴いているからでもある。大阪のIさんが作った紙ジャケのデザインもなかなかよいが、曲目表示にいくつかのミスがあるのは惜しい。その画像を示すのは著作権上まずいので、音楽だけの感想を書く。まずディスク1は40分の収録で、10曲入っている。プログラムどおり、ゼフィロス・アンサンブルとストリング・クァルテットの演奏だ。最初の「Number6」は1981年作曲で、ごく短く、1分半ほどの演奏だ。てっきりザッパのロック曲で馴染みのメロディの編曲かと予想していたが、初めて聴くものと思う。まだ2、3回しか聴いていないので何とも言えないが、『ロンドン交響楽団』に収録される曲の一部を小アンサンブルにアレンジしたものか、あるいは同時期に作曲したものの、長大な曲には含めなかった断片だ。同じく80年代初頭に作曲されたものとして4曲目に演奏される「Wind Quintet」があるが、こっちは50秒ほどとさらに短く、しかもすべての楽器がユニゾンで終始素早い旋律を奏でる。おそらくロック曲の中間部に活用する目的で書かれたものだろう。この2曲の間に『ザ・イエロー・シャーク』で初演された「タイム・ビーチ」のパート2と3が挟まれるが、『イエロー…』に比べてどちらも1分ほど長い。これは正確に演奏するために若干速度を落としたためであろう。また、メンバーの発声部分がカットされているので、『イエロー…』の演奏時と販売用楽譜とでは記述が若干異なることも考えられる。それはさておき、これら冒頭の4曲は違和感がなく、元々組曲として構成されていたかのように思えるところが面白い。そして、予想外にこの冒頭の4曲がいい演奏であることに驚かされる。それはザッパの作品の構成力に大半を負うのだが、ザッパのロックだけに耳馴れている人はもっとこうしたザッパの別の側面を真剣に聴くべきであろう。ここにはロックではついに表現され得なかったザッパのもうひとつの大きな世界が立ち現われている。そこに流れる密やかな空気は、ザッパの内面にあったものが外界に反応したものであり、紛れもなく現代の文明社会の一断面を表現している。次にストリング・クァルテットが演奏する5、6、7曲目は『イエロー…』収録の3曲だが、いずれも若干速度は落ちている。同じことは、この後チェインバー・オーケストラが演奏する「マグネシウム・ドレスの女」ではさらに極端化し、『イエロー…』の4分33秒に対し、5分50秒と長い。『イエロー…』と大西さんの録音の音質を比較するのは無茶だが、後者は冒頭を初め、随所に鐘(チャイム)の音が入るが、前者はそうではない。前者はより忠実にザッパのシンクラヴィア・ヴァージョンの管弦楽曲化にしたがった演奏で、後者はそことは断絶し、最初から楽譜に忠実にしたがった演奏に聞こえる。だが、それでいいのだと思う。作品がひとり歩きするとはそういうことだ。楽譜の解釈によってさまざまな演奏が生まれることは一概に悪いとは言えない。8曲目「ビバップ・タンゴ」、9「芸術における海軍飛行?」は『イエロー…』とほぼ同じ時間と演奏だ。明日はディスク2を。

●2002年4月9日(火)午前 その1
●ミラー・シアターでのザッパ曲の録音、その1_d0053294_15135829.jpg雨が降って肌寒い。桜も終わってしまったも同然。おとといの日曜日は妻と一緒に琵琶湖北岸の海津大崎という桜の名所に出かけた。安い日帰り旅行の広告を新聞で見つけてすぐに申し込んでおいた。海津大崎の桜は戦後に山の迫った湖岸道路沿いに並木として植えられたものがようやくしっかりした並木に成長したもので、歴史は浅い。その桜の下を歩きながら琵琶湖を眺めるとよい景色だろうし、TVニュースにおける紹介でももそんな光景を映していた。しかし筆者らのツアーは、対岸の長浜港からイタリアの国旗の配色を使用したビアンカという琵琶湖では有名な船に乗って1時間ほどかけてのんびりと海津大崎まで行って、接岸せずにぎりぎり間近を20分ほどかけてゆっくりと進み、桜並木が終わる辺りで180度方向転換した後また岸辺を今度は全力で逆走、長浜に戻るというものだ。別の会社のツアーでは上陸させて岸辺を散策させるものもあるが、初めて乗るビアンカで配られた花見弁当を食べ、ビールを買って飲んだりする見知らぬ人々に混じっての2時間はそれなりに楽しく、上陸しての散策はまたの機会でよいという気になる。さて、ハード・カヴァーのハガキ大の白ページ本を10数年前に若宮テイ子さんからもらったことがある。97年2月に10枚ほど絵を描いた後、そのまま放っておいたが、今年2月になってまたそれを見つけたので、毎日1ページずつスケッチを始めた。7、80枚しか綴じられていないので2ヵ月少々で全部描いてしまう計算だ。毎日欠かさずに何か目に止まったものを描くというのは、自己の脳内の興味地図を少しずつ自己確認する作業にも役立つ。色鉛筆やフェルト・ペン、インクなど手当たり次第のものを使用するが、普段の本職における植物写生のためのスケッチとは違って何を対象にしてもよい。身辺の物であれば無数にあるので、それだけを描いても何年も続けられるだろう。しかしそれでは偏質的であるし、風景や人物も描きたいし、実際そうしている。若宮さんからもらった1冊を描き切る直前、うまい具合にまた別の一冊が押し入れの本棚から出て来たので、途切れることなしに1日1枚を続行することができた。新しい1冊はザッパに会うために92年にヨーロッパへ行った時、大英博物館で買ったものだ。10年ぶりに役立つことになった。同じハガキ・サイズを選んだのは若宮さんにもらったものが念頭にあったためだ。しかし紙質がつるっとしており、色鉛筆があまり乗らないのが難点だ。表紙はモネの絵で霧に霞むテムズ川とビッグ・ベンが描かれている。この小型写生本を携えて海津大崎日帰りツアーに出かけ、ビアンカ内からの風景を3枚描いた。船はゆっくりと進むとはいえ、次々と岸や水面、空が変わるから、同じ風景を数枚のキャンバスで連作したモネの心境がよくわかった。次々と変化するものを数分で1枚の絵にまとめるのは一発勝負であり、ある意味では即興演奏と共通する。そのスリルがよい。もちろん筆者の写生の場合は純然たる楽しみで、誰に見せるのでもなく、また他からの評価を期待するものではないから、いわばメモに過ぎない。それならば写真で充分ではないかという意見もある。もちろんカメラも持参して写真も撮っているのだが、やはり写生は写真とは全然別のものだ。写真は必要のないものまで写ってしまうが、写生は真っ白な紙に自分で選んだものを自分の頭と手の連動で瞬時を積み重ねて構成して行く。それはスナップ写真とは違ってもっと重い思いがこもる。
 船が長浜に着いてからは2時間ほど町を散策する自由時間があった。長浜は6年前にも息子を連れて歩いたことがある。その時はNHKの大河ドラマで秀吉が採り上げられ、それに便乗したのか秀吉博覧会が開催されていた。港から徒歩10数分の町の中心部に建つかつての明治銀行は、今はガラス品を置く市随一の観光名所になっているが、その建物の壁が黒いところから『黒壁』の名前で呼ばれ、長浜イコール黒壁が定着している。観光都市として売り出すには何か即座に人々に訴えるネーミングを持つ名所が欠かせないと考えるのはしごく当然な発想で、その点『黒壁』は大いに成功している。それにこの『黒壁』はザッパの「ブラック・ナプキン」や「ブラック・ページ」をぶらっと連想もさせてなかなかよい。人と商品が混雑する『黒壁』では鞄がガラス品に触れないかとひやひやしたが、階上でイタリアのヴェネチアのガラス作家コーナーがあって、かわいい動物シリーズの中に気に入った小品がふたつあった。ペンギンと小鳥で、どちらも1個限り。それで小鳥の方を選んだ。当然伏見人形とは全く違う色合いと造形だが、微笑ましさは共通している。長浜は3時間あれば主要なところは全部見て回れると言われるが、今回は2時間しかない。それで6年前の春に訪れた堂々たる大通寺は境内だけ見て、小堀遠州が造った庭などは見なかった。その代わりに近くの鮮魚店で主に話しかけたり、すぐ近くの大山何とかの神を祭る小さな日吉神社に咲く一本の満開の桜を楽しみ写真を撮ったりした。黒壁近辺に商店街が南北に2本あるが、そのうちのひとつはアーケードがあって観光客で大賑わいしている。そこでは今回鮒ずしや丁字麸、信長が染めさせたという真っ赤なこんにゃくなどの名産物を買ったが、もうひとつの北の通りはさほど人が見えず、かなりさびれていたのを思い出し、大通寺から黒壁へ戻る時にはあえてその道を通った。すると6年前にはなかった洒落た喫茶店などがあったりして、それはそれでよいのだが、何となく以前の記憶が修正されてさびしかった。昭和30年代のデザインの建物が点々と並ぶひっそりとした商店街はそれなりに得難い文化遺産で、そういうものを見るのは楽しい。それがみなピカピカの建物に変わってしまうのは、それだけ豊かになっている証ではあるにしても何か違和感がある。6年前の記憶は幻だったかと心にかすかな動揺を感じているが、それでも少しはまだ以前と同じ建物があってほっとした。

by uuuzen | 2007-06-27 15:14 | 〇嵐山だより+ザッパ新譜
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