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●「BLUE SKIES」
雨入りしたのがいつなのか、何だか年々季節がおかしくなって来ているような気がするが、人間はきっと蛙並みにゆっくりとした変化には鈍感な動物なのだろう。



●「BLUE SKIES」_d0053294_1834482.jpg急にやって来る地震や火事には前もって用意をしていても、地球的規模で環境がおかしくなって来ているとマスコミが騒いだところで、どこ吹く風と気にしない人もあれば国もある。そんなアホらしい人間世界でも、どうにか時間を潰して生きて行かねばならない。先日のTVで115歳だったろうか、世界最年長のお爺さんがギネスかどこかから認定を受けて賞状をもらっていた。自宅で子や孫に囲まれたそのお爺さんは、若い頃はそれなりに血気盛んであった雰囲気があったが、5、6歳の少年と言えばいいか、そんな感じがして今はとにかくとてもかわいらしい。そして笑ってしまったのは、「もっと長生きしたい」という言葉だ。なかなか正直だ。それもまた少年っぽくて感心した。「どうすればそんなに長生き出来ますか」。そんな質問をしてほしかったが、寿命というものがあって、誰でもが健康で115の年令になれるとは限らない。筆者は長命の筋だが、筆者自身は運動不足がはなはだしく、家の中から一歩も出ない日が毎週5日ほどある。何だか年々体調がおかしくなって来ているような気がするが、筆者はきっと蛙並みにゆっくりとした変化には鈍感なのだろう。急にやって来る地震や火事には日々気にしていても、自分の体がおかしくなって来ているといったところで、どこ吹く風と気にしない。体調がおかしくなりやすいのは、今の梅雨時だ。湿度が高く、むっとした空気は吸うのにも重苦しく感じる。だが、筆者はそんな梅雨時が嫌いではない。むしろ、とても艶めかしい感じがしてよい。青春に戻ったように、体内から活気が湧いて来る気さえする。そのため、除湿器はなく、ほとんどクーラーもかけない。季節に沿って生活をすればいいと思っているからだ。暑い暑いと嘆いても、せいぜい数十日のことで、そう考えれば湿度の高い夏もいとおしく、どうにかやり過ごす日々が楽しい。とはいえ、日本の夏は江戸時代に比べれば、道路はみんな舗装され、緑も減って、確実に数度は気温が上昇している。我慢も限界があるというべきだが、何でも過去がいいとは限らない。もし江戸時代の人々が今の生活を体験すれば、もう江戸時代には戻りたいとは思わないだろう。工夫を続けてどうにか人間はここまで来た。それはそれなりにあるべくしてなった形だ。ここでまた「とはいえ」を使うならば、便利な世の中になった分、何かを失っていることもあり、その喪失部分に懐かしさを感じ、人間はそこにいつでも瞬時に戻ることが出来るという不思議な動物だ。
 失った何かとは、もう会えない人や失った物などさまざまだが、そうしたものが他人には見てもらえない自分の記憶の中にあることも言う。つまり、人間は記憶にいつでも立ち戻って何かを思う。いや、何も思わない、感じない記憶もたくさんあるが、そういう記憶でも何かの拍子に電気が入ったように生き生きとした形で認識され直す場合はよくある。人間の記憶が面白いのはそこだ。それは自分で意識したとおりにやって来るものではなく、いつも不意を突いて来る。それもまた楽しいというべきで、筆者はそんな経験を常に求めてアンテナを張っている。だが、最先端の新しいものを求めているというのではない。むしろ逆で、古いものの再発見により関心がある。このカテゴリーもまさにそういう体験を綴るものとして設けたものだ。で、今日取り上げる曲は1年前の梅雨時に体験したものだ。ブログに書くために、同じような夏のむっとする重い空気の日がやって来るのを待っていたのだ。あまり外出しない筆者だが、展覧会や図書館や古書店には頻繁に出かける。それがせめてのもの運動になっている。去年6月、天神橋筋商店街を歩いていて天牛書店に入った。年に何度か訪れる店だ。この本店は昔は道頓堀にあった。十代の頃から筆者はよく通った。眼鏡をかけた主人の顔や声を今でもはっきりと思い出せる。その後アメリカ村に移転し、さらに江坂に移ったが、天神橋筋商店街にも店が出来た。今はネットで珍しい古本が買えるので、古書店は何かのついでに訪れる程度だが、ネットでは決して探せないような珍しい本は古書店によくあって、今後も古書店はなくならない。それはいいとして、天牛書店で本棚を見ていた時、ビッグ・バンドをしたがえたジャズ・ヴォーカルがBGMに流れているのに気づいていた。1曲ずつ歌手が違っていて、しかも曲のつながりが唐突であったりするし、音質も異なっていたので、アルバムを丸ごと流しているではないことはわかった。歌手は男性と女性が混じっていた。4、50年代の演奏であることは音から推定出来たが、そのこもったような古ぼけた音質が、梅雨時の暑苦しい空気と古書店の雰囲気に実にぴったりで、自分が4、50年代に生きているのではないかと一瞬錯覚した。音に吸い寄せられながらも本の背に気を取られていたところ、急に浮き立つようなリズムで派手な前奏が始まった。それが思いのほか長く、そしてトランペットやクラリネットの絡みの一音ずつが筆者の脳細胞に矢のように突き刺さり続けた。その1年前の思い出をこうして書いていても身震いがして来るほどだが、前奏が終わって今度は女性歌手が歌い出した。「ブルー・スカイズ……」。
 帰宅して早速ネットで調べた。こういう場合、ネットの威力はすごい。わからないものが努力次第で思いのほか早くわかる。ある人の掲示板に書き込んで、何度か文章をやり取りし、また自分でも調べて、どうにかマーサ・レイというアメリカの女性歌手の歌う「Blue Skies」ではないかとわかった。さきほどネット検索でそのやり取りを調べると、すでに文章は削除されているようで、見つからなかった。どこかに文章を保存しておいたはずだと思ってフロッピーやMOを調べると、やはりあった。以下、そのkunnyさんとのやり取りを引用するが、字数が多いので一部を省く。
2006/6/1 (Thu) 11:05:51●UUUZEN
検索でこのホームページを見出しました。そこでお訊ねしたいことがあります。昨日ある場所で有線放送がかかっていました。シナトラやクロスビー、ビリー・ホリディなど50年代のジャズで、その中に白人女性ヴォーカルでビッグ・バンドをバックにテンポよく歌う曲があって、感動してしまいました。曲は聴いたことのあるメロディですがタイトルはわかりません。「ブルー・スカイ」という言葉がヴァースの最初にはっきりと歌われていましたからたぶんそれがタイトルに思えます。演奏は管楽器が全体に激しく動き回ってとても格好よく、足ですぐにリズムを刻みたくなります。音からして50年代以前です。女性ジャズ・ヴォーカルには詳しくないのでわかりませんが、ペギー・リーやヘレン・メリルといった有名どころであることは間違いないと思います。演奏が特定出来ればCDを購入したいと思いますが、上記の条件に当てはまるものを御存知ですか。
2006/6/1 (Thu) 23:09:39●kunny
UUUZEN様 初めまして、(ブルースカイ)と最初に出て来たとなると、やはりスタンダードの名曲(Blue Skies)だと思われます(複数形ですがブルースカイと読みます) 。あまりに名曲なのでいろいろな人が唄っていて、私も(これだ!)とは特定できませんが、ビッグバンドをバックに唄っていた50年代の白人女性は、多分ローズマリークルーニーだったと思います(他にもいるかも)。アップテンポでスイング感がとても気持ち良い曲で、私も大好きな曲です。あの綾戸智絵さんもLOVEというアルバムの1曲目でブルース調にして唄っています。ちなみに私が一番好きなブルースカイは、ビッグバンドではないし、もう10年近く前にガンで亡くなりましたが、エバ キャシディと言う女性のライブ盤がとても良いですよ、音質も良く胸にジーンと来ます(;_;)。録音したのはスタジオエンジニアで彼女の死期を知っていた旦那さんです。彼女の残した3枚のアルバムの中で最高の出来と言われています。勝手気ままにいろいろ書いてしまいましたが、私が知っているのはこれくらいです。参考になりましたでしょうか? これからもよろしくです。
2006/6/2 (Fri) 02:58:40●UUUZEN
どうも早速ありがとうございます。そうでしたか。予想とは違いました。昨夜、曲目「BLUE SKIES」でアマゾンで調べましたところ、2000以上もCDがヒットしましたが、これでは皆目見当がつかないので困っておりました。CDを探して聴きます。たぶん間違いないと思います。もし正解でしたらBLOGに書きますが、その時はまたお伝えします。
2006/6/2 (Fri) 07:13:46●kunny
そうでしたか。もうAMAZONで検索されているのですね。一番早い方法はお聞きになった有線会社に電話して、放送された時間などを言って尋ねられたら良いかと思います。必ず答えてくれると思いますよ。早く解ると良いですね。解ったらまた教えて下さい。楽しみにしています。
2006/6/3 (Sat) 13:44:35●UUUZEN
有線が流れていた場所に電話しましたところ、ネット有線に接続設定してくれたのが不定期でやってくるアルバイトらしく、すぐにはわからないとのことでした。アメリカのヤフーで、rosemary clooney discography blue skies で検索しましたところ、Rosie Sings Bing 1978 (CCD-4060) というCDに同曲が収録されているのみで、これはぼくが聴いたのとは年代が合わず、他のアルバムのはずですが、お持ちのアルバム名をお聞かせいただけませんか。
2006/6/3 (Sat) 20:25:12●kunny
こんばんは。それでは40年代~50年代の白人女性ボーカルの(Blue Skies)をAmazonでご案内します、
ダイナ ショア、アニタ オデイ、ローズマリークルーニー、マーサ レイ、ドリス デイ、ジョー スタッフォード
残念ながらジョースタッフォードだけ試聴できません。私も聴いてみたかったです。(^_^;)
2006/6/4 (Sun) 02:28:22●UUUZEN
早速ありがとうございます。有線を聴いた店によりますと、同じ時間帯に同じ曲がたぶんかかっているとのことです。聴いた時間は記憶していますから、また出かければいいのですが、電車で1時間以上のところにあってままなりません。放送中な歌手と曲名の表示が出るそうですが、店が忙しく、またレジ近くにないため、放送中に確認してもらうのはちょっと無理です。それで、教えていただいたものをしらみつぶし的に順に聴いて行くしかないような気配ですが、どうにかやってみます。ぼくには割とこういうことがあって、20年近く解明出来ていないバンド名があったりします。ネット社会ですから昔と違って手立ては増えているとは思いますが、音楽となると演奏を聴いてもらう必要もあったりで、相変わらず面倒です。
2006/6/4 (Sun) 12:50:00●UUUZEN
ただいま別のパソコンで視聴しました。演奏が最も近いのはマーサ・レイです。ところが声が違うように感じます。ほかはみなすぐに違うとわかりました。ぼくが聴いたのは、歌もいいのですが、演奏がとても厚みがあって派手なもので、それでいていかにも往年のジャズといったまったりとした味があります。ピアノはたぶん聞こえませんでした。これはなかなか探しずらいかもしれませんが、まずはマーサ・レイを買ってきちんと聴いてみるつもりです。
2006/6/4 (Sun) 17:26:59●kunny
そーですか。どれも違う感じですか。マーサレイは割とマイナーなボーカリストなので、有線で流れたとするとかなりマニアックなアルバイトの方ですね。あの後もう少し調べましたら、ペギーリーも唄っていました。3枚組でお高いですが、1枚目の14曲目にあります。でも一体誰だったんでしょうね。何か人ごとながら私も気になってきました。このBBSにはUUUZEN様と同じ様な曲名やアーティストの名前が解らず尋ねて来る方が時々います。私が知っている限りの事はお手伝いしていますので、遠慮なく遊びに来て下さい。
2006/6/5 (Mon) 02:30:59●UUUZEN
マーサ・レイは声質がどうも違う感じですが、安かったので早速注文しました。またアマゾンではマーサの同曲は途中からのようで、アドリブっぽく歌うところはぼくが聴いたものとは全く違います。ペギー・リーのはまだ試聴していませんが、声は多分近いと思います。興味が持てたのはバックの演奏がスリリングで、そこに平然かつ堂々たる声が被さっていたところです。古きよき(あるいは暗黒か)アメリカの神髄を初めて聴いた気になりました。白人であることは間違いないと思いますが、ひょっとすれば白人っぽい声質の黒人も考えられ、これは難問の気がしています。
2006/6/5 (Mon) 07:18:09●kunny
黒人の可能性もあるとなると、大変な人数になりますね。でもUUUZEN様のキーワードの(演奏は管楽器が全体に激しく動き回ってとても格好よく、足ですぐにリズムを刻みたくなります)をヒントに探したところ、デラ リースが一番近い様な気がするのですが、この人黒人なんですよね(^^;)。激しいアップテンポとブルース調なのと2曲唄っています。試聴も出来るので試しに行ってみて下さい。
2006/6/6 (Tue) 11:07:15●UUUZEN
デラ・リース、聴きました。さらに違いますね。音が新しくて尖っています。声も黒人特有の厚みがあります。ペギー・リーはぼくの知る限り、クールな印象が強く、違う気がしています。昨日家の中で昔出たジャズ・ヴォーカル本を見つけ、そこに出ている別の白人女性のBLUE SKIESを片っ端から検索しました。めぼしい情報は得られずでしたが、黒人の部に入ってエラ・フィッツジェラルドから当たり始めたところ、彼女の同曲は声がぼくの聴いたものとかなり近いです。ただし演奏は部分過ぎてわかりません。ひょっとすれば彼女の同曲にもいくつかあって、その中のひとつかもしれません。アマゾンではいくつかのアルバムに収録されていますが、みな同じテイクです。海外のエラのサイトでのサンプルも同じでした。彼女のCDは持っていますが、ファンではないので声質は覚えがありません。またぼくが聴いたものは、クラリネットがかなり目立ち、ベニーグッドマンかとも思いましたが、全体にバップ・サウンド的な激しさを感じました。スイングでも新しめのものかもしれません。店内の響きがよかったのでそう感じただけかも。店は歴史のある古本屋です。
2006/6/6 (Tue) 20:33:23●kunny
こんばんわ。そーですかデラリースはよけい違いましたか。たしかにエラの声は白人よりですよね。私もエラは3枚組をもっていますが、残念ながらBlue Skiesは入っていませんでした。なにせ原曲は1930年代の世界初のトーキー映画ジャズシンガーの中で唄われているらしいので、それ以降誰が唄っていてもおかしくありません。私的にはビッグバンド全盛時代の40年代にスポットを当ててみるとジョー スタッフォードかな?なんて思いますが。試聴出来ないのが歯がゆいですね。あとバップ的な演奏をするビックバンドって言うのもポイントですね。カウントベイシーかな? でもクラリネット演奏が前面に出るとなると、グッドマンかエリントンですよね。一体誰だろう? 有線で流れるくらいだからメジャーな人だとは思いますが。ホントに難問ですね。
2006/6/6 (Tue) 21:42:41●UUUZEN
クラリネットが前面に出る部分は少しです。全体に管が賑やかでした。ぼくが店にいた間10曲ほどは古いジャズが流れていましたが、どの曲も最後はきれいに終わらず、急に次の曲に変わっていました。ネットで受信しているためにそのようなことになるのかどううかわかりませんが、毎日同じ曲が同じ時間に鳴ると言っていましたから、もう一度前と同じ時間帯に出かけるのが一番いいみたいです。ただし、同じ曲がかかっている期間が終わってしまう可能性もあります。店員に2度電話して、同曲が鳴っている時に演奏者をチェックしてもらうように頼んでおきましたが、何せその店員が同曲を知らないので頼りない話です。また何かわかりましたら書き込みいたします。
2006/6/6 (Tue) 21:51:42●UUUZEN
書き忘れましたが、同店の有線は、曲が鳴っている間に曲名と演奏者が機器に表示されます。ところがぼくが聴いたのは夕方6時半の店がとても忙しい時で、店員にその機器の表示をずっと見ていてもらうわけには行きません。機器はレジのところにあるのではなく、離れたところにあるのも理由です。やはり出かけて事情を伝え、自ら機器をにらんでおく必要がありそうです。ジョー・スタッフォードのCDも探してみることにします。
2006/6/6 (Tue) 22:55:14●kunny
そーですか それはとても頼りになりますね。ちょっと根気が必要だとは思いますが、分かった時はきっと喜びもひとしおですね。私も普段何気なく聴いているBlue Skiesがこんなに沢山の方がいろいろなバージョンで唄っているとは思いませんでした。また何か分かりましたら教えて下さい。
2006/6/15 (Thu) 13:38:29●UUUZEN
注文していたMARTHA RAYEのCDがさきほど届きました。BLUE SKIESは演奏時間が2分42秒で、イントロのやや長めのバンド演奏はぼくが古本屋で聴いたものと9割以上は同じものに思えます。たぶんこの曲か、これにほとんど近い楽団演奏のものです。録音は1944年の軍向けの放送で、曲ごとにマーサの紹介が入ります。楽団はMURRAY McEACHERNですが、彼女はベニー・グッドマンのバンドでも歌っていたそうです。40年代半ばの音であることは確実で、これを参考にほかのも聴いてみます。

●「BLUE SKIES」_d0053294_1842789.gif その後天牛書店に何度か訪れたが、ジャズはかかっていなかった。また、去年6月以降すぐに訪れる時間はなく、2、3度電話して訊ねただけであった。BGMの担当者に聞いておきますという返事であったが、それっきりで、結局どういうソースからBGMにしているのかはわからなかった。永遠の謎と言えばおおげさだが、やるだけやってわからなかったので仕方がない。またマーサ・レイのヴァージョンは筆者はとても気に入っている。ほかにも同じようなバンド演奏と女性ヴォーカルでこの曲を演奏しているレコードがあるだろうが、あまりにも有名な曲であるし、廃盤になってもはや聴くことの出来ないレコードもたくさんあることだろう。このマーサ・レイのヴァージョンは、Collector’s Choice Musicというイリノイ州の会社から2002年に出たもので、1944年にアメリカ陸軍のラジオ局の「Swingtime」という、15分間の番組用に録音されたものだ。マーサはこの番組の最初の10回分を担当したが、筆者が入手したのは、それらで歌った曲から1枚のCDにしたものだ。「ハニーサックル・ローズ」「サマータイム」などよく知られた曲を中心に全12曲が収録されている。ジャケット写真はかなり貫祿のある熟女ぶりに写っているが、もっと若い22歳の頃の写真がトレイ底にモノクロで収まっていて、茶目っ気があって喜劇俳優に見える。CDについている解説によれば、マーサは実際コミック・パーソナリティとシリアスなシンガーという対照的な才能を兼ね持って有名であったことがわかる。1916年生まれで、両親はヴォードヴィリアンであったが、もうそれだけでマーサがどういう歌手かわかりそうな気がする。30年代初頭はニューヨークのさまざまなクラブで歌い、34年にはブロードウェイでちとょっとした役ももらった。そしてラジオに進出し、「アル・ジョンソン・ショー」といった有名どころに出演する一方、ビング・クロスビー主演の映画にも登場し始める。同じ時期、ベニー・グッドマンのバンドの歌手となって活動し、歌手兼女優として多くの映画に出演して多忙をきわめる。そして戦争になってからは、先に書いたようにラジオ番組で歌うが、ジャケット裏面の短い紹介ではその後の生涯については触れていない。
●「BLUE SKIES」_d0053294_1874871.jpg

 演奏はわずか2分42秒で物足りないが、それがまたよい。音楽は長さではない。ふっと思い出した時にいかに気分がよくなるかだ。この曲は有名であるので、筆者はおそらく幼少の頃からラジオで耳にしていたはずだが、ジャズ・ヴォーカルに強い関心があるわけではないので、ことさら気に留めないで来た。それが古書店のBGMで耳にして突如体内に染み込んだ。今年もまた6月がやって来て、いつこの曲について書こうかと思いながら、今日はまた曇天はなはだしく、むっとする空気が汗を滲ませるため、急にさきほど思い立った。だが、本当の理由は一昨日の出来事にある。その日はひどい雨だった。普段なら絶対に出かけないのだが、その前日に古書店で見た本が気になって仕方がなかった。その本はどういうわけか京都のどの図書館にも置いていない。ネットの古書店ではどこも2万円以上し、ネット・オークションでも同様の価格で現在2冊出品されている。その本が6500円で売られていたのだ。その日、残念ながらポケットには6400円ほどしかなく、買わずに帰った。そして翌日は大雨になった。それでもその本のために出かけた。電車に乗って、さらに徒歩30分、下半身はずぶ濡れになったが、幸い売れずに残っていた。それはいいとして、傘をさして古書店に向かう途中、雨宿りをしている若い人が何人かビルの1階に固まっていた。そちらを向いた途端、彼らの背後の頭上に大きな青い看板が見えた。白抜きの字で「ブルー・スカイ」と書いてある。しばらく行ったところで、引き返して看板の写真を撮ろうかと思ったが、若い人々は自分たちにカメラが向けられるのを不信に思うだろう。それで諦めてそのまま先に進み、大雨で増水した川をわたる時、ふと来た方向を振り返った。すると、「ブルー・スカイ」という文字がそのビルのあちこちに記されているが見えた。大雨に「ブルー・スカイ」はないだろうと思いつつも、去年の今頃、盛んにマーサ・レイの「ブルー・スカイ」を聴いたことを思い出し、そして今日はそれについて書こうと思ったのだった。幸いと言うべきか、今日も最高に蒸し蒸しした天候だ。
●「BLUE SKIES」_d0053294_1884175.jpg

 「青い空」と言えば、タンゴで「碧空」だったか、やはり名曲があった。「空」は、大きくて広いのはいいが、「からっぽ」の意味でもあるから、名前にはふさわしくないと思うが、最近の若い親は子どもに「空」をつける人がよくある。単純な脳細胞人間に育たねばいいと思う。この曲においてもこの「空」は「からっぽ」の意味で使用されている。「からっぽ」であるから、そこに何でも詰め込めるという「希望」が湧くのだが、「空虚」の「空しい」という意味があることは忘れはならない。名曲なので多くの人が歌っているが、歌手によっては若干違う歌詞で歌う場合もあるようだ。作詞作曲はアーヴィング・バーリンで、1927年の曲だ。この2年後にアメリカでは株が大暴落するが、そうした時代背景を考えるのも面白い。それにしてもさすがバーリンというべきで、こういう古典的名曲を書く才能はもう出現しないように思える。歌詞を訳す。「青い空、わたしに微笑んでる。わたしが見るのは青い空だけ。青い鳥が歌ってる。歌い続けるのは青い鳥だけ。明るい太陽なんて見たことないわ。うまく事が運ぶなんて言わないわ。毎日忙しく過ぎ去っていくだけよ。あなたが恋している時にはね。あらあら、あなたたち、なんて舞い上がってるのよ! 青い日、みんな過ぎちゃった。これからもずっと青い空だけよ!」 ちょっとわかりにくい部分「Noticin’ the days hurryin’ by/When you’re love,my,my how they fly!」があるが、これは自分が密かに恋している相手が、実はほかの人を好きになっている図を思い描けばよい。つまり、片思いというわけで、自分は青い空のようにからっぽだが、清々している状態を歌う。ここで鍵になるのは「青い」の意味だ。これが「鳥」になれば希望であるし、「日」になればその反対の憂鬱であるから、歌詞は憂鬱の状態を脱して希望が溢れている心境を歌う。だが、先の英文2行の「you」と「they」をどう訳すかで歌う主人公の立場も変化するので、歌詞は含みがある。筆者は片思いしていた相手があまりにも他の人物とラヴラヴ状態であることに呆れ、さっさと片思いを諦めたと受け取るが、「you」つまり片思いの相手が自分と恋仲になり、そのために自分は毎日が忙しく、「恋仲」すなわち「they」が有頂天に舞い上がっているというようにも受け取れる。「青い空」をどうイメージするかで、歌詞の受け取り方も差が出る。
by uuuzen | 2007-06-26 18:25 | ●思い出の曲、重いでっ♪
●ワープロとパソコンを使う >> << ●ミラー・シアターでのザッパ曲...

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