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●『少林サッカー』
●『少林サッカー』_d0053294_245253.gifッカーのワールド・カップがドイツで始まった。それに合わせてであろうが、一昨日TVで香港映画『少林サッカー』が放送された。



●『少林サッカー』_d0053294_261440.jpg韓国映画以外はほとんど録画しないが、朝刊の番組欄で知り、すぐにあまったテープを探して夜の録画に備えた。2年ほど前にも放送されたがその時は録画するのを忘れ、見ることが出来なかった。レンタル・ビデオ店で借りればいつでも見られるが、カードの更新をやめてからもう3年経つ。あまり映画を見ないので、それでも不自由は感じない。それになるべくなら映画は映画館で見たい。さて、この『少林サッカー』を初めて見たのは、3年前の3月27日の夜、旅行会社のバス・ツアーで前日に津和野や萩を訪れて一泊し、その帰りのバスの中でのことだ。バス・ガイドの女性がもう話すこともなくなったので、後は大阪に着くまでの間映画でも楽しんでほしいと言ってこのビデオを流してくれた。見るともなく見ていたが、面白かったのは映画の内容もだが、画面を見ながらずっとけらけらと笑っていた男の子がいたからだ。その子は筆者のひとつ後ろの列、斜め横にいた。小学3年生ほどで、人のよさそうな母親が連れて来ていた。パック旅行で小学生の姿は珍しい。そのためによけいに目についた。その子の笑いは本当に心から楽しんでいるのがよく伝わるもので、画面のちょうど面白いところでうまく笑ってくれるので、映画の面白味が倍増した。もしひとりで家の中で見ていたならば絶対にそのような温かい気持ちにはならなかった。喜劇は、みんなが一緒に笑うことによって楽しさが何倍にも膨れ上がる。それでもう少し早めにビデオを流し始めてくれればよかったのに、大阪に着く頃になってまたバス・ガイドが喋り始めたため、残念ながらビデオは切られてしまった。そのため最後まで見ることが出来ず、男の子の笑いも消えて、バスの中は祭りの後のような何となく白けたムードになった。映画の結末が気になりつつ、3年経って一昨日やっとそれがわかった。ワールド・カップがなければこれはさらに延びていたろう。サッカーにはほとんど関心がないので、ワールド・カップの始まりにも感激はないが、3年経って心残りであった結末がわかったことは特筆したい出来事だ。
 特筆すべきことはもうひとつある。今朝ネット・ニュースで、フランクフルトのマイン川に大型TV画面が設置され、両岸からワールド・カップの放送が見られることになっているのを知った。写真は1枚だけ掲げられていた。同じサイズの巨大画面が背中合わせに貼り合わせられた状態で川の流れの中央に置かれ、それを岸辺に設けられた特設ステージに座る人々が眺めている様子を写したものだ。この写真を見て即座に14年前の9月に同じ川畔のそのあたりを歩いたことを思い出した。フランクフルトはマイン川を挟んで南北に街区が広がるが、歴史地区も含めてほとんどの重要な施設はみな川の北にある。だが、川の南の畔には美術館や博物館などがずらりと並ぶ。そのあたりから川向こうの歴史地区や銀行などの高層ビル群を眺めると、フランクフルトの全市を手中にした気分になれる。この方向とは逆に川をわたって南部側を見ると、美術館や博物館が見えるだけで、高層ビルはその背後にはない。そのため、その眺めを写真に撮っても即座にヨーロッパのどの都市かはわからないだろう。大型TV画面が設置されたのは、市立のシュテーデル美術館から東に1キロほど行ったところで、川のちょうど北側には歴史博物館がある。その館内に入って展示室の古い窓からマイン川と南部の景色を眺めたことをよく記憶するが、今はその視界に大型画面がでんと置かれているわけだ。その後フランクフルトの街は、フィレンツェに行った時のトランシットで空港内に留まった時に遠くに眺めたことがあるだけだが、街のあちこちを3日間歩いてからもう14年も経ったとはとても思えない。何と年月の経つのが早いことか。ネットで調べると、街中には近年ラーメン屋や寿司屋などが出来て、いろいろと変化していることがわかる。ボンに住むドイツ人と長く文通していたことがあるが、彼はフランクフルトは荒々しい雰囲気の街で二度と訪れたいとは思わないと言っていた。そうだろうと思う。ならず者がたむろする危険な感じが漂う地区が少なからずあり、あちこち工事中で殺風景な印象も強かった。今大阪の街が世界から同じように見られて雑誌などで紹介されているが、大阪人の筆者はフランクフルトは大阪にちょっと似たところがあるように思う。そのため、危険な感じもまたいいではないかと肩を持ちたい。ベートーヴェンの生まれたボンは確かにきれいな街だと想像するが、そういうところはきっと下町育ちの筆者には住みにくいだろう。
●『少林サッカー』_d0053294_14332182.jpg さて、『少林サッカー』は香港映画のカンフーの伝統をそのまま受け継いだ娯楽大作だ。小学生だけではなく、大人が見ても充分面白い。簡単に言えば実写版漫画で、全編現実にはあり得ない誇張だらけだ。そんな映画もたまにはよい。この映画を漫画にたとえると何になるかと今ふと思った。筆者は漫画を小学生卒業と同時にきっぱり卒業し、週刊漫画雑誌も一切買わず、また見ることもなくなったから、1960年代半ば以降の様子はほとんど知らない。それでも周りの騒ぎから、どういう漫画がはやっていたかぐらいはよく知っている。だが、たとえばちばてつやの『明日のジョー』で力石が死んだと言って騒いでいることにも何の関心も抱けなかった。というよりもむしろ軽蔑していた。60年代後半あたりから漫画は一部の活動的ないし知的大学生の愛玩物になって行ったが、筆者はそのことには冷淡であった。なぜいい大人が漫画の内容にあれほど入れ込んで騒いでいたのか今もわからない。あの頃の事情がその後大学生でも電車の中で堂々と漫画本を広げる風潮にそのままつながって行ったが、今ではそんな光景ももうほとんど誰も眉をしかめて見ない。それは漫画すら読まない学生が多くなったことも理由にあるだろう。筆者は今でも漫画は単にワハハと笑っておしまいの存在であるだけで充分と思っているが、漫画が文学や哲学に比肩すべきものであるかのように言う批評家や評論家は今なお腹立たしい。漫画は漫画であって、なぜ文学や哲学なのかその理由が筆者にはさっぱりわからない。漫画家が偉大な文学者や哲学者と同等と言うのであれば、漫画家は文学者や哲学者よりも凄い存在だ。なぜなら絵も文字も使用して1コマずつこつこつ描くような職人仕事をしていながら、漫画内容が文学や哲学の内在する思想と同じほど高邁であるとするならば、ひたすら思考して文字だけを連ねる文学者や哲学者は立つ瀬がない。それにノーベル賞をもう1部門増やして漫画家に毎年授与すべきであろう。話が少し変わるが、『ウルトラマン』に関しても筆者は何ら興味を抱いたことがない。そうしたヒーローの登場する漫画は小学生の頃に盛んに読んだ『鉄人28号』や『鉄腕アトム』ですっかり終わっていたからだ。今なお『ウルトラマン』人気は絶大なものがあって、永遠のものとみなす人があるが、筆者はその考えには反対だ。むしろもっと先に出た『鉄人』や『アトム』をこそ表彰したい。『鉄人』や『アトム』、あるいは『エイトマン』といった作品がなければ『ウマトラマン』はまず出現しなかった。
 以上のように筆者の漫画体験ははなはだ限られている。そのためこの映画がたとえば日本のどんな漫画に近いかを正確に考えることは出来ない。だが、現実を異常に誇張したギャクの点はたとえば赤塚不二夫の漫画に近い質のものと言えるし、スポーツをベースにした根性もの的側面となると、『巨人の星』に代表されるものがある。そして復讐劇に分類される内容に至っては漫画に限らず、どんな映画にも存在する。つまり、60年代に入ってからの日本の漫画において開発されたあらゆるジャンルの中から、ギャグものとスポ根ものの要素を特に選んでミックスし、それを実際の俳優に演技させる一方、コンピュータ・グラフィックスによってそれこそ漫画的な視覚効果をふんだんに使用したものが、この映画の中心を成している。だが、日本の漫画だけに重要なヒントがあったとは言えない。日本の漫画自体がその世界のみで純粋培養されて作られたものではないからだ。60年代の週刊漫画雑誌に登場した多くの漫画は日本だけで独自に作ったものではなく、戦前のアメリカの漫画やアニメなどから大きな影響を受けているし、日本の昔の絵巻物にルーツがあるような意見には筆者は賛成したくない。また、この映画は笑いの点はたとえば日本の漫画でかつて盛んに使われたことの焼き直しに見えるとしても、その根本の柱には中国の伝統の少林寺拳法や太極拳の身のこなしを据えていて、そこだけを見れば日本的要素の片鱗もない。そしてその点においてこの映画は日本では作り得ないものと言える。同じような伝統武術や護身術が日本にないではなく、たとえば世界に通用するものとして忍者や空手がある。だが、それをどうサッカーと結びつけてスポ根ものの娯楽映画が作れるかどうかとなると、まず不可能と思える。出来たとしても飛び切り面白いものには仕上がらない。それは、香港のカンフー映画が70年代にすでにアメリカを制覇しており、この30年間、ジャッキー・チェンが頑張ってその伝統を支えて来たことにもよる。日本映画はカンフーどころではなく、もっと昔に世界を騒がせはしたが、アクションを主体とする漫画的娯楽映画の開発はされて来なかった。そしてその点は現在韓国映画にもそうとう遅れを取っている。
 アニメーターが1コマずつ描く漫画映画、つまりアニメとは違って、俳優を使った実写版は、大人がまず見ようという気になる点において、最初から世界的大ヒットはアニメよりも約束されている。これは筆者個人の思いだが、宮崎アニメがいくら大ヒットして騒がれても見る気になれない。確かに感動させられるとは思うが、その感動すべき箇所が俳優の演技ではなく、絵によって予め計算され尽くしているところが何となくいやなのだ。それにコマの描き方が60年代のアニメとは違ってどんどん細かくなり、時には実写映像と変わらぬところまで来ているが、それも気に入らない。そんなアニメを見るくらいなら、ごく簡単な線描による素人アニメの方がまだ面白い。実写映像に近いのであれば、いっそのこと実写を見る方がいいし、そのうち実写した映像を元にそれを簡略化して、つまりデータを加工してアニメが作られる時代が来るだろう。実際それに近いものはアメリカがよく作っている。たとえば『トイ・ストーリー』のようなコンピュータ・アニメだ。これは筆者は好きで、よく映画館に見に行く。手描きのアニメの古臭さがなくていいのだ。『少林サッカー』はあくまでも実写を基本としながら、近年のアメリカ映画に顕著なワイヤー・アクションや画像加工によって、現実にあり得ない「漫画的」画面を一部にふんだんに持ち込んでいる。そして日本のかつての漫画で開発されたストーリー性よりはむしろ、そのアメリカ映画的な映像効果に特徴があって、たとえばクウェンティン・タランティーノが絶賛したのもよく理解出来る。日本の漫画が完成させたギャグや根性劇の内容を、アメリカが開発した最先端の画面作りで見せ、そして表向きは香港の伝統を踏襲したカンフー・アクションであるという複合体に、この映画の大ヒットの理由がある。それにもうひとつ卓抜な点は、アジアのサッカー・ブームにうまく便乗したことだ。20年前の日本ではまだサッカーはごく一部の人の楽しみでしかなかった。香港も同じはずだ。2002年の日韓ワールド・カップの開催から事情が格段に変化したが、それをよく見据えてこの作品をものにしたと思う。大ヒットさせるつぼをよく押さえ、計画どおりにワン・カットずつていねいに作った感じが全編にみなぎっている。
 香港では2001年7月、日本ではワールド・カップ直前の2002年6月に公開された。ビデオは11月発売であったから、筆者がバスの中で見たのはその4か月後だ。今回調べて知ったが、主演のチャウ・シンチーが監督と脚本も担当している。大変な才能だ。90年代半ばから映像作家の活動を始めたそうだが、他の作品も見たい気がする。さて、この映画を録画して最後まで見たかった理由はもうひとつある。韓国映画『ラブ・レター~パイランより』を見た時、主演女優である香港のセシリア・チャンがこの映画にも登場していると知ったからだ。だが、記憶を辿ればどう考えてもこの映画の主演女優とは違う顔をしている。ほかには若い女性は登場していなかったはずで、一体どこにどういう形でセシリア・チャンが出演しているのか気になった。実は録画を見ていてもわからなかった。ネットで調べると、彼女は友情出演で、髭を生やした男の格好をしているとある。それでわからなかったのだ。そう思ってもう一度見直すとすぐにわかった。友情出演とはいえ、あれでは誰にもわからない。3年間わからなかった最後あたりの部分は、ちょうど主演女優のヴィッキー・チャオが坊主頭になってサッカー場に姿を現わす直前あたりからだ。そこから最後まで10数分ほどだろうか、予想はしていたはいたものの、最後まで痛快に見た。現実には全くあり得ない物語だが、悪は暴かれて敗退し、貧しくとも根性のある者はやがてドン底から浮上するという、いかにも庶民が安心して楽しめる筋立てで、それは決して悪くはない。韓国のドラマや映画にも共通するそうした使い古された筋立ても、時代に則して面白く見せる独自の工夫があれば、いつでも名作となって世界中で歓迎されるという現実をこの作品は示す。そういう単純な映画を今の日本はもう作らないが、底抜けに面白い喜劇を生めない時代は、みんなが白け切っていて不幸なことではないだろうか。あるいはこの映画の向こうには、絶望的なまでに貧しい人々が人生に浮上出来ない現実が露になっていると見ることも出来るから、どっちがいいのかわかりはしないが。
by uuuzen | 2006-06-10 23:59 | ●その他の映画など
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