●『ZAPPAtite』その1
定盤的なベスト・アルバムが出たと言っていいだろう。生前のザッパはライコ・ディスクと契約してベスト・アルバムを何種類か出したが、それらはみな正式なアルバム番号が振られていない。



それはライコ側がザッパとの交渉で勝ち取った契約であった雰囲気が強かった。ザッパ最晩年のことで、ザッパが多少面倒臭くなって譲歩したと想像したくなるが、それらのアルバムはそれなりによく編集されていた。ゲイルはそのライコとの契約が終わり、新たな会社を見つけることにし、結果的にユニヴァーサル・ミュージックが権利を買った。その結果、また去年ゲイルが亡くなったこともあって、ザッパの新譜の発売が平均すると2、3か月に1枚程度の割合で出るという、ザッパ・ファンが狂気する時代となっている。今日はアルバム番号106の『ザッパタイト』が届いたが、これは『ストリクトリー・コマーシャル』のいわばユニヴァーサル盤だ。『ストリクトリー・…』と同じような有名な曲が並ぶが、アルバムの題名が示すように、遊び心があって、その題名に合わせて曲順も構成されている。このタイトルはもちろん「食欲」を意味する「appetite」をもじったものだが、それはザッパをあまり知らない人向けのベスト・アルバムを意味していると同時に、まずはこのアルバムをアパタイト的に聴いてから、各アルバムにどっぷり浸ればよいとの意味もある。『ストリクトリー・…』を持っている人は買わなくてもいいようだが、曲順がよく計算されていて、また意外性もあり、たっぷりと76分収録されているが、あまり長く感じさせない。また、ヴォーカル曲からインスト曲、ギター曲、管弦楽曲と、そして大ヒット曲と、バランスよくザッパの広範囲で捉えところのない仕事を概観するのにはとてもよい。マザーズのヴォーカル曲に関しては、まず最初はザッパが歌ったが、その代表曲は本作にも収められる「トラブル・エヴリデイ」で、これは食前酒としては理想と言える。ザッパは後年は自分がリード・ヴォーカルを歌いことが多くなるが、一方では数年ごとに好みの声の持ち主を雇った。それらの中から貢献度の大きな者を選ぶとなると、一番最初はタートルズのメンバーであったハワード・ケイランとマーク・ヴォルマンだが、彼らは2年在籍し、他のリード・ヴォーカルでは考えられない歌唱力を発揮した。これはザッパが彼らの才能を可能な限り引き出すために難しい作品を書き下ろしたためだが、そういう凝った曲はベスト・アルバムである本作にはふさわしくない。それで馴染みやすい「テル・ミー・ラヴ・ミー」が収録された。これはザッパがハワードとマークの加入によって大きな変革を遂げた時期の曲で、本作では中央部分の「アントレー」に含まれている。アントレーはもちろんメイン・ディッシュの料理で、肉か魚に相当する。「テル・ミー・ラヴ・ミー」は第2期のマザーズの曲で、この時期のザッパはデビュー当時よりもはるかに肉や魚で栄養を取ったような、最も多彩な活動期であったと言える。だが、それを言えば誤解を与える。本作の収録曲が年代順に「食前酒」、「アントレー」「デザート」と3分割されているのではないからだ。
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 それはともかく、「アントレー」には9曲が含まれ、その中のひとつが「テル・ミー・ラヴ・ミー」であるのは大きな意味を感じさせる。さてザッパが彼らに次いで迎えたリード・ヴォーカリストはナポレオン・マーフィ・ブロックだが、本作には収録されない。その代わりに、彼の後釜として参加するアイク・ウィリスの曲が選ばれた。アルバム『ジョーのガレージ』からそのタイトル曲で、これはアイクの声が無視出来ないという理由のほかに、同アルバムの存在が大きいためだ。また娘のムーンを語りで参加させた「ヴァリー・ガール」も「アントレー」に含まれるのは、同曲が大きな話題になったためと、本作のヴォーカル色を豊かにするためとも言える。リード・ヴォーカルに関しては身落としがあった。「デザート」の5曲中にテリー・ボジオが歌う「おっぱいとビール」がある。テリーがマザーズで歌ったのはこれともう2曲だが、ドラマーとして多大な貢献をしたために無視出来ないとの編集者の考えだろう。その編集者は、アーメットとジョー・トラヴァースで、アーメットの早速の仕事としてはなかなかいい。ただし、それは名前だけのクレジットかもしれず、実際はジョーが選曲し、アーメットの許可をもらったというのが正しいのではないか。テリーのマザーズへの貢献を言えば、断然「ブラック・ページ」がいいと思うが、同曲は初心者向きではない。本作のゲテモノ料理盤を用意するならば絶対に含まれると思うが、そんな売れそうもないアルバムをユニヴァーサルは許可しないだろう。ゲテモノかどうかは判断が分かれるが、「デザート」には「G・スポットの竜巻」が入っている。これはコンピュータ楽器による自動演奏で、演奏困難な点では「ブラック・ページ」と同類で、本作に入ったのは意外な気にさせられるが、ザッパの幅広い作品の世界の一端を垣間見させるには必要でもある。ベスト・アルバムであるので、書くことはそんなにないが、今日1日ではしんどいので、続きは明日。
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by uuuzen | 2016-09-19 19:59 | ●新・嵐山だより(特別編)


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