●近江八幡にて、その1
に遭うこともなく、思いどおりの時刻にボーダレス・アートミュージアムに着き、午後5時までの15分だけ鑑賞出来たが、1階の受付の若い女性と話していると、5時を5分過ぎていることに気づいて表に出た。



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女性は普通なら「もう5時ですので…」と退出を急かせるが、この美術館はなかなか親切だ。5時までいたのが筆者と家内だけであったし、また玄関を入ってすぐの部屋にいたので、館を出る間際だと思っていたのだろう。筆者はその受付の女性に、この美術館には何年も前から来たかったのが、今日は慌ただしいながらもようやく目的が果たせたと言い、ついでに、近江八幡にはよく映画のロケに登場する有名は濠があるが、ここからはどれくらいの距離があるのかと訊いた。筆者はたぶん4,5キロはあるのだろうと思っていたが、女性の答えは、「北へ通りを3つほど行ったところですよ。もう5時なので、店は閉まっているかもしれませんが、散策は充分出来ますよ」で、これには驚いた。というのは、その日の予定にそこまで見られるとはとても思っていなかったからだ。近江八幡駅に午前中に着くように、いつかまた出直そうと思っていたのに、その目的である濠がすぐ近くというのであるから、これは足を延ばさない手はない。真夏なのでまだ陽が沈むには早い。それに早く帰っても自宅は蒸し風呂状態だ。どうせ暑いなら初めて見物する場所をあちこち歩く方がよい。近江八幡には来ずにひとりで京都に帰ろうと思っていた家内も、筆者が目当ての美術館巡りを無事時間内に終えたこともあって、もうすっかり立腹はしていない。ボーダレス・アートミュージアムを出る時、棚に次回の企画展や他館のチラシが並べてあったので、関心のあるものを1枚ずつもらった。その中に、「近江八幡掘まつり」と題するものがあった。筆者が昔から訪れたいと思っている場所がたくさんの蝋燭でライトアップされている夕暮れの写真が使われている。「京の七夕」と同じように、夜をライトアップで涼もうというのだが、期間は9月17、18日なので、もう多少は涼しい頃だ。そのチラシの裏面は地図で、それを見ると、確かにボーダレス・アートミュージアムから北へ3本目の道が大通りで、それを越えてすぐに濠がある。それでその地図を見ながら歩き始めたが、ミュージアムからすぐ西の永原町通りを北上した。そこは大きな家ばかりで、人影が全くなく、江戸時代の京都といった落ち着いた雰囲気であったが、通りの左手すなわち西側に特に目立つ大きな建物があった。それはMIHO MUSEUMの母体の宗教団体の建物で、筆者は家内と顔を見合わせて驚きあった。最近京都の岡崎でもその団体のもっと大きな建物を見たばかりで、改めて新興宗教の威力を知った。その建物を通り過ぎた時、向こうから車が1台やって来て、筆者らとすれ違い、すぐ後方のその宗教団体の敷地内に入っていた。擦れ違った人影はそれくらいなもので、本当に寝静まったように人が少ない。それでも大きな屋敷を維持出来るというのは、どの家も資産をかなり持っているのだろう。
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 近江八幡がメンソレータムで有名な近江兄弟社の発祥の地であることは昔から知っているが、今はロート製薬がそれを販売して、近江兄弟社は別の商品名で売っている。この近江兄弟社は建築家のヴォリーズが設立したもので、近江八幡はヴォリーズによって有名になっている部分が大きい。ヴォリーズの建築は日本各地のキリスト教関連の学校や教会にたくさんあって、大阪で最も目につくのは心斎橋の大丸百貨店だが、各地の建物を設計する一方でメンソレータムを日本で販売するなど、多角的に活動したので、捉えどころがないような人物だが、すべては布教のため、またキリスト教の奉仕精神のためと思えばよい。そういう人物が京都や大阪ではなく、近江八幡を拠点としたのは英語の教師として赴任したからで、ネットで調べるとそれは1905年で、ヴォリーズは25歳であった。そして3年後には京都で建築事務所を開業するので、学校で教えたのは3年間であったことになる。その理由が知られているのかどうかだが、建築事務所を始めたことでヴォリーズの名は広く知られるようになり、また近江八幡の発展にも貢献したと言えるかもしれない。だが、そこは一概にはそうと言えないところもあるだろう。英語を教えたのは商業高校であったが、英語を覚えた地元の子どもが渡米して起業し、やがて地元に帰って産業の発展に貢献するという場合は充分あり得る。つまり、人を育てる方が自分が商売をして成功するより、貢献度が大きいこともあるだろう。ヴォリーズから英語を学んだ子どもの中から近江八幡の発展に尽力した著名人が出たかどうかも筆者は知らないが、ヴォリーズが3年で学校の教師をやめた理由が何であったかを知りたく思う。ともかく、アメリカで建築家を目指しながらその夢が果たせなかったヴォリーズが日本で次々と西洋建築を設計して行くのは、当時の日本の要請とうまく合致した結果で、明治のお雇い外国人の系譜に連なる人物で、またその中でも最もよく知られるひとりとなった。さて、今日の最初の写真は、ミュージアムから北へ3本目の大通りを西に100メートルほど行くと、南側に目についた洋風建築で、「白雲館」とあった。午後5時を過ぎていて、中に入ることは出来なかった。ヴォリーズに因む建物だと思っていたが、ネットで調べるとヴォリーズが生まれる3年前の1877年に、近江商人たちの寄付によって建てた学校だ。こういう前例があったので、ヴォリーズが招聘されたのかもしれない。また、近江商人が地元の子どもたちの教育の重要性を思い、しかもその校舎を洋風のデザインにしたことは、これからは欧米列強に伍して行くという気風を表わしている。
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 「白雲館」はとても目立つ建物で、しかもその真正面の北側に大きな鳥居があるが、これは意識してそういう場所に建てたはずで、地元の人たちが八幡宮の次に、街として誇れる建物を思っていたことがひしひしと伝わる。そういう街は日本でも珍しいのではないだろうか。日牟禮八幡宮の写真はいつか「神社の造形」のカテゴリーに使うが、予想以上に大きな境内、また社殿であった。境内の南に濠が巡らされ、その点は城と似ているが、城はもっと山手にあった。その山城の裾に八幡宮、そして濠を越えて南に街が広がっていた。その城下街の南、正確には南東の端にJRの近江八幡駅があり、駅からなだらかな上り坂沿いに古い街並みがある。話は少し戻るが、駅に午後4時半頃に着き、そこからミュージアム目指して北西に向けて歩き始め、地図上では大きな目印になる出町という場所までとにかく行けばどうにかなると予想した。そして、出町付近から急に上り坂になり、古い家並みが続いた。ちょうど市役所が新旧の家並みの境になっているようで、市役所から南は新しい店や家が並ぶが、北は歴史的な街並みとして保存傾向にあるように見えた。筆者らが歩いたのは「仲屋(すわい)町通り」だが、昭和30年代以前の雰囲気がそのまま保たれている。長浜にもそういう通りはあるが、ここ20年でかなり古い建物はなくなったと思う。古い建物を補修しながら、街の独特の風情を保つことはとにかく金がかかる。少子高齢化ではなおさらそれは困難で、古家を売却して新しい建物を造る方がはるかにてっとり早く、また安価で済むから、日本中が同じような家が並ぶ街と化しつつある。そうなれば観光客の減少につながって、逆効果だ。話を戻して、筆者は持参した地図に鉛筆で道路の筋を描き足し、おおよそのボーダレス・アートミュージアムの位置を記しておいたが、縮尺がでたらめなので、距離がわからない。出町からさほど遠くないはずだが、さてそこからどう行けばいいかわからない。1分を争う時刻であり、また上り坂で西日が強い。その陽射しを避けて家内は東側の歩道を、筆者より50メートルほど遅れて着いて来る。焦りながら仲屋町通りを歩いていると、ある店の玄関脇に街の地図が数枚収納された紙箱が吊り下げられているのを見た。店は閉まっていて、誰に断っていいかわからないが、無料の地元商店街の地図であるらしいので、1部を抜き取った。だが、それを広げて見ることもせず、とにかく西日が当たる東側の歩道を歩いたが、それはどこかで東に折れるとミュージアムがあるとわかっていたからだ。出町の交差点から500から800メートルほど先に、四辻の左手に特徴のあるミュージアムのチラシが貼られていて、迷わずにその辻を右に折れてミュージアムにたどり着けた。まとまりのない話になったが、「その3」まで続ける。
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by uuuzen | 2016-09-01 23:59 | ●新・嵐山だより


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