●『THE CRUX OF THE BISCUIT』その5
の鳴き声を今年初めて耳にしたのは10日ほど前だったと思うが、今日は風風の湯の露天風呂で数匹が一緒に鳴いていた。梅雨明けはまだだが、暑さは本格的だ。



だが、夜はクーラーなしで寝られる。それほど夜は涼しいので、寝るのはいつも2時半頃になるが、今日もザッパの新譜について書く。新譜は2枚同時に発売され、もう1枚については本作の感想を書くのが終わった翌日からではなく、数日開けるつもりでいる。それはさておいて、サイモン・プレンティスさんの長文解説を全部読んでいないので、今日は何を書こうかと思っているが、順序で言えば「黄色い雪」の組曲に関してだ。その前にまず今日の写真について説明する。ディスクを収めるトレイ下にイラストがある。これは初めて見るが、ファントゥーンズというふたりで構成されるユニットによる。描かれた年度が記されないが、トレイ下に使うことを前提にして描かれたような感じがするので、本作のための描き下ろしではないか。とすれば、ゲイルが生前に依頼したもので、たぶん2,3年前のものだろう。このイラストをジャケットにしてもよかったと思うが、アルバム『アポストロフィ』と同じく、ザッパの顔写真が使われた。また、先日画像を載せたように、ブックレットにも若いザッパの顔写真が2点載る。そして『アポストロフィ』のジャケット顔はブックレットの裏表紙に使われるが、当時のポスターの版下だ。吹き出しが描き加えられるが、これはカル・シェンケルだろう。本作のジャケット表のザッパの顔は、『アポストロフィ』のそれと違ってかなり優しい。この写真は昔見たことがあるが、ザッパもいずれ何かに使うつもりがあったのかもしれない。本作のケース裏のザッパの上半身の写真は、『アポストロフィ』のLPジャケット裏面にも使われた。視覚的にひとつくらい『アポストロフィ』と共通点がある方がよいとの判断だろう。話をトレイ底のイラストに戻すと、これはビスケットの架空の箱を描いたもので、ビスケットの名前として本作の題名が使われている。つまり、ゲイルは本作を『アポストロフィ』発売40周年として2年前に発売するために、それ以前にイラストを用意したが、本作の題名を『THE CRUX OF THE BISCUIT』にすることも決めていたことになる。さて、この題名だが、先日書いたように本作には収録されない「STINK-FOOT」に歌詞として登場する。先日書いたことを訂正するが、トレイ底のイラストのビスケットの箱には、「BISCUIT」の最も大きな文字の下に帯が描かれ、その中に「IS THE APOSTOROPHE」と白抜きで書かれる。今日の写真からそれがわかるが、筆者はこのイラストをじっくりと眺めて気づいた。つまり、「STINK-FOOT」では主人のスリッパを持って来させられたプードルは、主人に語りかける。「昔、誰かが言いました。「お前の概念の継続とはどういうものだ」と。そして言ってやりました。「ビスケットの十字がアポストロフィであることを知るのは簡単だろう」って」。このプードルの発言がいまだによくわからないが、サイモンさんがザッパに訊ねたところは、アポストロフィは所有を意味するとのことで、「十字」は「要点」とも訳してよいが、「ビスケットの十字は持っている」とプードルが言ったことになる。つまり、プードルにとって、何につけても考え続けていることは、ドッグ・フードのビスケットということだ。そのことをプードルはストレートにではなく、相手を煙に巻くように答えた。当然主人は犬が人間の言葉を発することが信じられず、プードルの発言の後に、矢継ぎ早にアポストロフィ多用の、今度はアポストロフィのもうひとつの用法である省略形として多くの言葉を発する。これはアポストロフィのふたとおりの意味を犬と人間で使い分けながら、しかもお互い意志の疎通をしておらず、歌詞を聞く者は、どこでどう笑っていいかわからない。ザッパは飼い犬と暮らしながら、この歌詞を思いついたのだろうが、もちろんプードルはもっと以前にザッパの脳裏にあり、またザッパは犬に因む曲を以前から書いていて、ザッパの概念の継続のひとつとして、犬ないしプードルがあった。ただし、それらは継続しながらも同じ扱いを受けておらず、各曲は独立している。つまり、「STINK-FOOT」のプードルは他の曲のプードルと全く同じではない。こういうややこしさがザッパにあるが、概念の継続という手法はザッパの音楽の大きな基本であり、本曲のプードルの発言そのもの、また主人との対話をどう解釈するかという、哲学的で謎解きのような楽しみがある。それを楽しいと思うかどうかはファンの関心のありどころによるが、歌詞はザッパの考えを知るうえで無視出来ないので、無関心であることは本当は許されない。だが、この難解な歌詞を楽しもうとするかどうかで、ザッパ・ファンの一種の位が決まる。その位が10に分けられるとして、筆者はとうていその10に及ばす、ま、せいぜい7か8程度だろう。そして、大多数のザッパ・ファンもそうで、ザッパの名前と少しのアルバムを持っているという人は、1か2だ。つまり、それほどにザッパの音楽は難解ということだ。
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 さて、今日は「黄色の雪」組曲についてだが、5曲目が短いインタヴュー、続いて6曲目が「黄色の雪は食べるな/聖アルフォンゾのパンケーキの朝食」の1973年6の月ライヴで、20分近い。またややこしい話になるが、『アポストロフィ』のA面の最初の4曲が本作の6曲目に相当するが、本作は長さが倍ほどある。これはザッパが曲を膨らませたからで、そのヴァージョン、つまり本作の6曲目をなぜ『アポストロフィ』のA面に収めなかったのかという気がするが、それはLP1枚に少しでも多くの曲を収録するには、どの曲も部分をカット、つまりアポストロフィを適用するしかなかったからだろう。それで、スタジオ録音の『アポストロフィ』ヴァージョンと、本作のライヴとでは、様相が著しく違い、もはや全く別の曲という雰囲気すらある。その最大の部分は、エスキモーの少年によって黄色の雪を目の中に擦り込まれた男が、アラスカのツンドラを越えてコロンビア州まで旅をすることで、ザッパはそのように物語をとんでもなく遠いところに持って行くことを好んだ。その「遠い」とは、本来の文脈から外れたという意味だが、全く外れることはなく、概念の継続は仕組まれている。そして本作では、「MAR-JUH-RENE」がその役割を果たす。これは何を意味するのかよくわからず、筆者は「マーガリン」を一方で匂わせながら、「マジョラム(MARJORAM)」、和名では「マヨラナ」と呼ばれるハーブと思っていた。歌詞対訳を担当していた茂木さんは確か「マリファナ」と訳していたと思うが、視力を快復するには薬草で、それにはマリファナではないだろうと思う。だが、本作の5曲目のインタヴューから、ザッパはアメリカのマーガリンのTVコマーシャルから「パンケーキの朝食」の着想を得たことがわかる。これは当時のアメリカに住んでいた人か、あるいはこのザッパ・インタヴューを聞いた人にしかわからない。そのTVコマーシャルは、ベッドで寝ている若い男性に、彼女がマーガリンをたっぷり塗ったパンケーキを朝食として持って来るもので、それを食べて男はおいしいと言うのだが、ザッパはそのマーガリンの味を嫌ったのだろう。マーガリンは「MARGARINE」と綴るが、インタヴューではザッパは「マージュリン」と発音している。そして、それをそのままアルファベットで綴ると、「MAR-JUH-RENE」になるが、これではそれがマーガリンを指すとはわからない。またザッパは本作の6曲目ではその言葉を一文字ずつ他の単語を持ち出して説明するが、これは即興でしかも意味を理解しにくい。6曲目を最初に聞いて即座に思ったことは、以前のアルバムで発表された音源であることだ。だが、どこか違う。本作では男性のヴォーカルが付属するパートがある。その以前のアルバムというのは、『ONE SHOT DEAL』だが、そこに収録されたヴァージョンは昔から海賊盤では馴染みであった。本作はその演奏の翌日のヴァージョンで、ともにオーストラリアで演奏された。『ONE SHOT DEAL』ヴァージョンは一部がカットされているかもしれず、本作の6曲目と比較することは多少無理があるかもしれないが、それでも前述の「MAR-JUH-RENE」のスペリングを一文字ずつ他の単語を引用して説明する部分は差があって、ステージごとにその部分を変えていたことがわかる。これは、その部分がさして意味がないと考えることも出来るが、ザッパの脳裏を想像する手立てにはなる。だが、それは筆者の手にあまる。どこがどのように面白いのかは、ザッパの概念継続について深い関心のある人でなければ無理だ。たとえば、RはRATとザッパは語るが、そのことで『HOT RATS』が暗示される。AはASSHOLEで、これも後にザッパの曲名に使われるが、つまり、ザッパの言葉の好みがわかる。だが、そういう脈絡のない言葉を、しかも造語である「MAR-JUH-RENE」と結びつけることは、通常の曲の歌詞の世界からは逸脱し過ぎている。それは英語を理解する能力の程度とは関係のない、ザッパ独特の面白さの基準があるためで、そこを楽しむには、先のファンの位で言えば、10でなければ無理かもしれない。
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by uuuzen | 2016-07-25 23:59 | ●新・嵐山だより(特別編)


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