目標に向かって順調に事は運んでいるようで、今日はアレックス・ウィンターからメールが届いた。このメールは1ドルでも支援した人に送られるもので、アレックスの仕事の進捗具合が逐一報告される。
だが、多忙であれば頻繁にメールを書く暇がないはずで、今回は2週間ぶりとのことだが、月に2回あれば充分かもしれない。今日の報告はまず支援者から送られて来た映像の紹介だ。1971年6月30日はボストンで撮影された白黒もので、何分あるのかはわからないが、ファンが勝手に撮影したものでザッパは見なかった。演奏の内容はおおよそ想像出来る。3週間ほど前にマザーズはニューヨークのフィルモア・イーストでジョンとヨーコと一緒に演奏し、その様子は2階の観客席から撮影され、今ではYOUTUBEで見ることが出来る。またアルバム『フィルモア・イースト‘71』でライヴ演奏は堪能出来るが、ボストンのその会場での演奏をザッパは録音しているかもしれず、その音源とシンクロさせると、映像の質は多少悪くてもアレックスのドキュメンタリー映像として使えるのではないか。ともかく、アレックスは早速複写して送り主に返却すると書いている。アレックスの次の報告は作業の概略の説明で、キックスターターで集めた1億円以上の金をアレックスが製作する映画のために必要な映像は音源を保存するために使い、またドキュメンタリーを製作するのに必要となる他の作業のための財源を見つける必要があると書く。これはおおまかな記述で、実態がわかりにくい。特に「movie」と「doc」の言葉を使っているところがそうだが、これは同じドキュメンタリー映像を意味する。また、1億円の使い道がはっきりとしないが、当初は3億円あればアレックスの希望どおりのことが出来ると宣言していたので、その3分の1では出来ることは限られることは理解出来る。次に、映画製作を始める前に時間を無駄にしたくないので、今後の基礎となる予備的なプロダクションを始め、一方でザッパのテープ収蔵庫の調査に乗り出し、ドキュメンタリーに使うべき素材を選別するためのチーム作りを始めた。だが、目的とする映画はテープ収蔵庫にある素材だけを使うのではない。そして、ザッパの物語を構成するうえで重要な未公開の映像を用いるというが、これは世界中からどのようにして発見するかが問題だが、アレックスはそれなりの方法を持っているようだ。また、ザッパの人生に重要な意味を持った人物へのインタヴューを新たに行なうとのことで、それに1,2年費やすそうだ。そういう人物として代表的であるのは妻のゲイルだが、去年秋に亡くなる前に自宅でわずかに撮影出来たという。そのほかの重要人物にも接触中だが、この作業は始まったばかりだ。そして、そうしたインタヴューのすべてはドキュメンタリーには使えないから、残った分は支援者に公開するという。最後に、キックスターターのチームは支援者に供する特典についての作業を始めているので、近いうちにその詳細を伝えるとのことだ。さきほどアメリカの大西さんからメールがあり、今月24日からアメリカでザッパのドキュメンタリー映画「イート・ザット・クエスチョン」が公開されるとのことだ。この作品は去年から話題になっていたもので、ソニーが販売権を得たようで、日本盤が出るかもしれない。これはザッパがTVなどでインタヴューに応えた映像を元にし、ザッパの発言からザッパ像を浮かび上がらせるものだが、マザーズの元メンバーが語ったドキュメンタリー作品もあって、それは商品化されている。そのサンプル盤をヤマハから送付してもらったが、発売は見送られたのかもしれない。アレックスの作品はこのふたつのドキュメンタリーの中間的なものに位置づけられるだろう。ただし、未発表映像や音源をなるべく使うところが売り物で、ドキュメンタリー映像作品の決定版を狙っている。ザッパは多角的な仕事をしたので、ドキュメンタリー作品もいろんなものがあってよい。