●BRUCE BICKFORD‘S『CAS‘L’』その3
んでいるところを粘土アニメで表現することは不可能ではないにしろ、技術的に難しい。それでブルース・ビックフォードの作品はどれも地上での出来事を表現している。



また煙のような気体の表現も粘土では不可能に近いので、綿を使っているが、水の表現は粘土で行なっていて、またそれがなかなかリアルに見えるのは水の流れや波をよく観察しているからだろう。本作のリーフレットには、川べりの岩に座る白髪のブルースが写っていて、川の流れを眺めているが、その流れの中に樹木のイラストや粘土細工の人物などが浮かび上がっている。このコラージュはブルースが作ったものだろうが、自然の中にたたずみながら、作品の想念を練っている様子がよく伝わる。この川はブルースの家の西を南北に流れるグリーン川のはずだが、ブルースが自然豊かな丘に住むところはザッパに共通するが、シアトルはロサンゼルスよりもっと田舎だろう。モンスター・ロードを見ればそれがわかる。この道を筆者はグーグルのストリート・ヴューで何度か見たが、ドキュメンタリー作品『モンスター・ロード』に映る様子とは少し違っていて、10数年の間に多少開発が進んだ。ブルースは生まれ育った家を出ないわけではないが、やはり落ち着くのだろう。家はひとりで住むには広すぎるが、アトリエには粘土細工の小さな人物などが整然と保管されていて、アニメ制作には広すぎることがないようだ。ブルースは70年代初頭に知り合いからザッパへのつてを得たようで、ザッパは73年にアニメの制作をさせるが、それはサンタ・モニカに借りた家で、そこでザッパがツアーに出ている間も制作を進めることにしたが、ザッパが物語を作ってそれに沿った作品を指示したのではなく、大半は勝手に制作させたようだ。ツアーから戻ったザッパがさぞ制作がはかどったかとアトリエを訪れると、まだ全然アニメは撮影されていなかったが、粘土で登場人物などをたくさん作る下準備は終えていた。用意に時間がかかることはザッパの仕事と同じだ。ともかく、そうして70年代の半ばを中心にザッパのもとで仕事をするが、それが一段落した後、故郷に戻る。ザッパとの最後の仕事はザッパのビデオ会社ホンカー・ホームビデオから発売された『アメイジング・ミスター・ビックフォード』で、このパッケージはカル・シェンケルが描いているが、ブルースはカルの後釜としてザッパの奇妙な視覚世界を担当したことになる。
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 『アメイジング・ミスター・ビックフォード』はザッパのオーケストラ曲をBGMにし、また男たちの諍いがテーマで、殺し殺される場面が続出するので、アニメの言葉から連想する愉快さからは遠い。だが、映像も音楽も多大の才能と時間を費やしたものであることは誰の目、耳にも明らかで、そこに狂気じみた驚きがいやがうえにも増す。この作品を10年ほど前か、アメリカの田舎の高校の教師が授業中に生徒に見せたところ、生徒の誰から親にそのことを伝え、PTAが問題視する事件があった。粘土アニメとは言え、ナイフで刺したり銃を撃ったりするなど、凄惨な流血場面が多い点をいかがなものかと詰め寄ったのだが、教師は芸術作品を教えることが目的で、そういう機会がなければ子どもたちは卒業後に一生そういう作品とは無縁になることを心配したのだ。同じようなことはザッパも言ったことがある。アメリカでは一生オーケストラ曲を聴かない、聴く機会のない子どもがいて、そういう子が親になるとまた同じ連鎖が続く。日本でも同じようなもので、勉強の成績が優秀な子でも芸術となると途端にほとんど関心も知識もなかったりする。そういう人物を筆者は今までたくさん見て来たが、収入が多くていい暮らしをし、社会的には尊敬されるような職業だ。そして、そういう人物が芸術など必要ないと思っているが、筆者から見れば何が楽しくて生きているのかと思える。ま、これは世界中共通していて、ブルースのアニメを芸術と思って生徒たちに見せた先生は学校を辞めさせられ、そしてしばらくして自宅で死んでいるところを発見された。たぶん自殺だろう。その小さな新聞記事をゲイルはザッパ・ファミリーのホームページに載せたが、その時のBGMがザッパの「DUMB ALL OVER」だ。つまり、芸術など関心のない連中だらけで、彼らを馬鹿だと罵っているわけだ。芸術家はならず者とほとんど同じで、世間では尊敬されない。芸術家の中でも商売のうまい連中は金持ちになり、また有名にもなって尊敬されるが、生きている間はちやほやされても死後はわからない。芸術家は自分の仕事、作品に忠実でありさえすればいいが、どうして食べて行くかという問題がたちはだかる。その点をブルースはまずザッパと出会って名声が得られたところが幸運であった。そしてそのことを思うとザッパは若い芸術家をひとり助けたとも言え、そのことをゲイルは倣ってザッパの新譜のジャケットを新しい画家をよく起用したのだろう。『モンスター・ロード』な数年かそれ以上にわたって撮影されたものらしく、まだ精悍なブルースがふんだんに見られるが、時にめっきり老けて白髪頭になった姿も映る。そして本作『城』では完全に老人だ。今月の高松の催しのポスターにはまるでレオナルド・ダ・ヴィンチのような風貌の写真が使われているが、堂々とした老人となったのが頼もしい。そして、そのように老いても創作意欲が衰えない。今はライン・アニメに携わっているが、その完成には年月を要し、アシスタントを何名か募っている。ブルースのような線が引けなくてもかまわないらしいが、手助けを得ても完成させたいストーリーのようで、その作品化が待たれる。全然『城』について書いていないが、明日に回す。
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by uuuzen | 2015-12-09 23:59 | ●新・嵐山だより(特別編) | Comments(0)


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