●BRUCE BICKFORD‘S『CAS‘L’』その2
便かほかの業者であったのかわからないが、注文して2週間ほどでアメリカから届いた。決済はPAY-PALで、たまにこれを使うがとても便利だ。



暗証番号を入力してクリックするだけで届く。こちらの住所氏名はPAY-PALに登録されているので、ザッパのCDをバーキング・パンプキンから買うよりはるかに便利だ。そう言えばバーキング・パンプキンでもPAY-PALが使えるのではなかったか。最初に買ったのがクレジット・カードであったので、それが習慣になっているが、住所を毎回記入する必要があり、アメリカでは日本とは反対に番地から書いて行くが、そこで少しでも間違うと届かないようだ。たとえば番地と町名を逆にするといったことだが、それを記入する欄がひとつの場合、日本式に町名の次に番地を書いてしまいやすい。PAY-PALではそんな心配はない。またPAY-PALだからといってクレジット・カードより高くなることはない。以前E-BAYでドイツの出品者から落札したことがあったが、その時にPAY-PALを使うと、2週間後に商品が届いた。いっさいメールなどのやり取りをせずに済み、ただ落札する際のクリックと、PAY-PAL支払のクリックの2回だけだ。それで手元に品物が届くのであるから手品に思えた。それはさておき、ブルース・ビックフォードのDVDはなかなか入手が困難なようだ。すぐに廃盤になるようで、『CAS‘L’』もアマゾンではなく、ブルースのサイトで買う必要がある。アマゾンに委ねていないのは、あまり売れないと思っているのか、アマゾンが扱う際に請求する取り分が大きいのだろう。それで廃盤になった作品は割合高値でオークションで出ている。ザッパが発売したビデオはまだDVD化がなされず、これも廃盤同然の扱いだが、いずれDVDになるだろう。廃盤という呼び方はふさわしくなく、重版待ちと言う方がよいか。それはともかく、買えないそうしたDVDはYOUTUBEで紹介されていて、画質などは劣るがどういう作品かはわかる。そうしたYOUTUBEへのアップはブルースの経済を圧迫すると思うし、違法であろうが、野放しになっている。ブルースとしては映像作品を売ることが収入であるので、DVDが売れなくなるYOUTUBEへの投稿はブルースを絞め殺すことになる。ザッパのようにアルバム数が100といった数があれば別だが、ブルースは長年費やして数十分の作品を作る。それが無料で誰でも見られるとなると、どうして収入が得られるか。
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 それはさておき、筆者も入手出来ない作品はYOUTUBEを参考にするので偉そうなことは言えない。ただし、それは品切れで買えないからだ。そんな作品として、『モンスター・ロード』と『プロメテウス・ガーデン』がある。前者はドキュメンタリーで、後者は『城』の前の作品だ。後者は冒頭に『城』で使われるいわゆる城のきわめて小さなものが画面左下に登場し、それを登場人物が気づいて蹴飛ばす場面がある。つまり、今は『城』が登場する場ではないとの意思表示で、言い換えれば『プロメテウス…』の後は『城』が公にされるとの予告とも言え、これがとても面白い。ブルースの作品はナイフで人を刺す場面が多く、凄惨な印象をよく与えるが、ユーモアも持っていることがそうした場面からもわかる。『プロメテウス…』はとても印象深い場面がある。それは緑の大地から蒔かれた種子が発芽するように裸の人間が大量に次々に湧き出て来る様子で、人間も植物のように大地から生まれて土に還って行く真実をわずか数秒で見せる。また、粘土アニメでなければならない必然性もそこにある。同じ様子を手描きのアニメやあるいはコンピュータ・グラフィックスで作った映像では感動はないはずだ。生物が土に戻るという事実を表現するには粘土であることが最も適切だ。つまり、粘土に戻る人間が粘土アニメを作るというのは、たとえば人間の骨で笛を作って音楽を奏でるのと似た凄味を感じさせるが、人間は大昔から粘土を使って埴輪や器などの焼物を作って来ていて、粘土こそは造形に最も適した材料と言える。これはブルースの作品は突然変異的なものではなく、古代からつながっている最も伝統的な表現素材を使ったものと言えるし、また手仕事の最たるもので、アナログ的だ。ディズニー映画のピクサー作品は筆者は嫌いではないが、あまりにつるつるに磨かれたような表面で、その無菌さに本当の温かみを感じない。それだけ筆者はアナログ時代の人間なのだろうが、アナログがデジタルにすべての面において負けたかと言えばそんなことは全くない。芸術は個性であり、アナログに頼る限り、それはより保証される。
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 『モンスター・ロード』はざっと一度しか見ていないが、半分はブルースの父親のドキュメントだ。ブルースを語るのに、まず家族のことを知らねばならないとの監督の思いだ。それと生まれ育ったシアトルの丘やすぐ近くにある実在するモンスター・ロードなどの思い出だ。ブルースは4人兄弟であったが、3人が死んでしまった。末っ子は歳が離れ、かわいがられたのに、若くして自殺した。父親はボーイングの技師で、母はなかなか理知的な美人だが、離婚した。また高齢の父は認知症気味で、現在生きているのだろうか。ブルースとは別の家に住むが、時々ブルースは車を運転して父親の家を訪ね、ふたりでスーパーで食糧をまとめ買いする。父の家はどの壁も写真やポスターだらけで、「人生にはふたつの恐ろしいことがある。そのひとつは本当に恐ろしいことであり、もうひとつはきわめて短いことだ」といった教訓を手書きした紙が貼ってある。ブルースはその父の影響をかなり受けた。父が建てた家に現在住んでいるが、先日筆者はその家をグーグル・マップで突き止めた。それが今日の2枚目の写真だ。ドキュメンタリーが撮影されたのは10数年前だったと思うが、その頃は家の周りの樹木がさほど大きくなかったのに、今では家の屋根などを隠す勢いだ。ブルースも年齢を重ねて木を切る体力を失っているのではないか。家は西が玄関で、東がすぐに崖が迫る。その崖際の部屋がアトリエで、窓ガラスを通じてブルースは崖下向こうの街の灯を見つめる。ブルースが子どもの頃に開発された地域で昔は殺風景で何もなかったのに、今では家が建て込んでいる。その様子を60年以上も見続けて来たブルースだが、あっと言う間の人生であり、また開発の波で、それはそのままブルースの粘土アニメの世界に似ている。そのようにブルースのアニメは哲学的と言ってよい趣を湛えるが、一方で悲しみも混じっている。モンスター・ロードを刈れがひとりで歩く場面があるが、そこは今でも田舎の並木道で、家もとても少ないが、ブルースが10代の頃は浮浪者が何人か住んでいる箱型の家がいくつかあった。それに関心を抱いたブルースはその写真を何枚も撮って保管しているが、そこに小さく年配、おそらく60代の男のホームレスが小さく写っている。ところが開発があって工場が建ったようで、もうその廃墟のような家は跡形もない。それと同時に浮浪者も消えたが、ブルースはその見慣れたホームレスの家をそっくりそのまま粘土で再現して作品に登場させる。モンスター・ロードとは変な名前で、その由来は筆者が思うところ、ホームレスが住んでいた家にあるのではないか。70年代初め頃まではまだ廃墟が放置され、そこに浮浪者は住みついていたのだ。モンスター・ロードはブルースの家から北に歩いて数キロで、ドキュメンタリーではそのほかの場所も散策する場面があるが、ブルースの表情は何もかも変わってしまって以前あったものがどこで消えたのかといった様子だ。そういうことも作品に反映されているだろう。人生は確かに短い。しかしじっくり腰を据えて作品に取り組めば、多少は表現したいものをものにすることが出来る。そのことをブルースは証明している。
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by uuuzen | 2015-12-08 23:59 | ●新・嵐山だより(特別編) | Comments(0)


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