●『200 MOTELS THE SUITES』その5
ウィーツ(組曲)という題名はザッパがつけたものだろうか。またザッパは映画やアルバムのためだけにオーケストラ曲を当時書きためていたのだろうか。どちらも違うだろう。



だが、映画を撮る契約が結べた段階で、書きためていたオーケストラ曲はせっかくなので全部演奏させたいと思ったはずで、またそうなると映画のストーリーとしてそれらをどう嵌め込む、あるいは組み合わせるか、試行錯誤したに違いない。これは300何ページだったか、楽譜のコピーでもいいので見なければわからないが、その楽譜帳の全部が13の組曲であるのかどうか、そこがよくわからない。ザッパは『ザ・イエロー・シャーク』の公演の際、またその後もアリ・アスキンという人物を雇って楽譜を整理させていた。これはザッパの書いた旋律のオーケストレーションから、またザッパが書いた総譜を元に小規模の楽団用に編曲するなど、オーケストラ曲全般の手助けになることを任せた。彼以前にはデイヴィッド・オッカーがその役割をしていたが、ザッパが亡くなってからはアリ・アスキンがしばらくはゲイルの指示のもとで作業を続けたようだ。その仕事のひとつに『200モーテルズ組曲』の改作があった。ゲイルはザッパの楽譜どおりの演奏を録音することがザッパの遺志でもあると考えたが、実際問題としてその楽譜どおりに演奏することは不可能でもあったのだろう。現実的でないと言い代えてもよい。たとえば、ザッパは一か所のみボーイ・ソプラノで歌わせるように楽譜で指示している箇所があり、それは実際の舞台で演奏する場合、あまりに不経済であり、またメンバーの占める場所の余裕もない。それで女性のソプラノで代用したが、そのほかにも経済的な理由で妥協しなければならない箇所はあったろう。そうしたことは楽譜と録音を逐一聴き比べることでしかわかりようがなく、普通のファンでは無理な話だ。それでザッパが書いた楽譜のままでは無理でそこをアリ・アスキンが改作した楽譜を使っての演奏と思った方がよい。ただし、実際はどうであるかは闇の中で、2000年にオランダのオーケストラが演奏した時はアリ・アスキンの改作した楽譜を使ったが、今回は彼の名前が記されない。しかもザッパのオリジナルの楽譜ということも書かれない。そこでひとつのヒントというか、ゲイルの主張が想像される箇所がある。それはディスク1の「序曲」の最初でナレーターのランス役を担当したマイケル・デ・バレスが、1971年の『200モーテルズ』とは違って、「The true story of 200 motels」と語ることだ。「true」はザッパの楽譜にないはずで、これはゲイルがぜひとも加えたかった言葉だろう。他のオーケストラが続々と演奏することに対し、本作こそが本物との思いだ。またそれほどに貫禄のあるエサ・ペッカ・サロネンとロス・フィルによる演奏であるとの自信だ。だが、今後本作がいろんなオーケストラが取り上げ、またアルバム化するならば、どの演奏が最も優れているかは自ずと決まって行くだろう。そのため「true」の言葉はよけいと筆者は思うが、ブックレットに黄色のドレス姿で歌う写真があるように、本作には末娘のディーヴァが歌手としても登場しており、ザッパ・ファミリーお墨つきという意味合いを音として記しておきたかったのだろう。というのは、流通する楽譜には「true」の言葉は記されていないはずで、今後どのオーケストラも本作とはその点で差別化される。
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 さて話を戻すと、ザッパは想念が湧くとそれを楽譜に書くという作業を5年続けて本作の材料を得たが、組曲として考えていたかどうかはわからない。昨日書いた「プリーティド・ガゼル」はツアーは誰でも狂気に陥れるという『200モーテルズ』のテーマとは関係がない。だが、ザッパはムソグルスキーの『展覧会の絵』のように、それぞれが違う印象をもたらす曲をいくつか揃えて組曲に出来ることは当然知っていたので、各曲の想念が相互に何のつながりもなくても、あるいはないからこそそれらを併置した時に異様な力を発揮すると睨んでいたであろう。実際そのとおりの効果が『200モーテルズ』に発揮されたと言えるが、それは見方を変えればまとまりのなさであり、あまりに雑然として受け手はただただ戸惑う。映画『200モーテルズ』を見てそのように感じる人は多いだろう。それにザッパ自身が映画とアルバムは曲目やその順序が違うことをよしとしたが、これは組曲の個々があまり関連がないことを意味している。つまり、どの曲から聴いてもかまわないとの考えだ。「プリーティド・ガゼル」自身がそのようになっていて、6つの曲はほとんど関連がない。いちおう物語はあるが、起承転結がない。これと同じことは『ランピー・グレイヴィ』でも行なわれたし、後のアルバムでも同じだ。ザッパは相互の関係に乏しい短い曲を無作為につなげてより大きな曲に仕上げることを常としたが、そのことは「プリーティド・ガゼル」の最後に後の「ボーガス・ポンプ」の一部が使われることからも言える。そして本作の曲順が『200モーテルズ』の映画やアルバムからロック曲を取り除いた順になっていないこともいかにもザッパらしいが、楽譜では本作の13曲が順に配置されているのだろう。だが、『200モーテルズ』のオーケストラ曲のすべてが本作に含まれるかと言えばそうでない。ではザッパが『200モーテルズ』の撮影時に書き終わっていた楽譜と、本作のそれは違うということになるが、それはアリ・アスキンが省いたためかと言えば、そんなことはあり得ず、ザッパは映画を撮った後に取捨選択などをして13の組曲として構成し直したと考えるほかない。そのことはひとつのアルバムを発表するまでにいくつかの試作を作ったことからして大いにあり得る。今日で終えるつもりが明日も書かねば話が終わらない。
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by uuuzen | 2015-12-05 23:59 | ●新・嵐山だより(特別編) | Comments(0)


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