●広沢池、その1
照寺池とも言うことを先ほど知った。嵯峨の広沢池は少し西にあって大覚寺境内にある大沢池とは大小のセットになっている感があるが、後者は有料であり、また車道からすぐに見えることがないので何となく馴染みが薄い。




広沢池は筆者はこれまで何度車窓から眺めたであろう。京都に来てからたぶん20回ほどではないだろうか。わが家の近所に筆者らと同じ年齢の夫婦がいて、今は知らないが、毎朝広沢池まで徒歩で往復するらしい。渡月橋より北の嵯峨は、筆者にとっては同じく橋をわたるにもかかわらず、松尾橋から東方の梅津よりはるかに親しみが持てない。梅津には何年か住んだことがあるからとも言えるが、渡月橋北方は高級イメージがあって、梅津の下町とはそうとう違う。建蔽率にもそれはよく現われている。筆者はつんと澄ました地区よりどちらかと言えば危険なにおいが漂う雑然とした下町が好きで、嵯峨にはあまり住みたいとは思わない。それで嵯峨にはあまり行くことはないが、いつも車窓からちらりと眺める広沢池の景色はかなり気に入っていて、一度徒歩か自転車で訪れたいと思っていた。それをついに実行したのは5月の連休の最終日の8日だ。そのことは「嵐山駅前の変化、その359」に書いた。そう言えばその日は金曜日で「風風の湯」に行き、嵯峨に住むOさんとサウナ室で少しだけ話した。筆者らはいつもよりは早めの5時台に行ったので、もう出ようかという頃にOさんは入って来たからだ。それ以降Oさんとは会っていないが、夏はすぐに汗をかくので家で汗を流すので充分に感じ、「風風の湯」を訪れる頻度が少なくなる。今週は雨続きの予報で、客足はなおさら少なくなるだろう。Oさんは嵯峨の住民で、しかも地図でだいたいの住まいの場所はわかるが、その地域は軒数はとても少なく、どれも広い庭のある大きな家のようだ。そのことは「その359」に書いたかもしれないので話題を変えると、筆者が突如大沢池に行くことにしたのは、天気がよかったことのほかに、若冲関連で理由がいくつかある。それを全部書けば話が込み入るので省くが、ひとつは若冲の絵に最もよく賛をした無染浄善が一時直指庵に住んだことだ。筆者は浄善の書を何点か持っているが、彼の住んだ場所がだいたい洛西であったことになお親近感を抱いている。自分が普段よく歩いている場所を有名な先人も歩いたことを想像するのは楽しい。家並みはがらりと変わっているが、山は変化せず、道もほとんど変わらない。広沢池もそのはずで、近くにビルが全く見えないところが実によい。先に嵯峨にはあまり住みたくないと書いたが、自分が禅僧なら直指庵は理想的かもしれない。広沢池は西行や芭蕉も訪れ、句を詠んだが、月の名所として名高い。そのことは毎年仲秋の名月になると大沢池で舟を浮かべて観月の会が開かれることからもわかる。それに、筆者がいつの頃からか、車窓から見る広沢池がとてもいいと思ったのは、その手頃な大きさの池の上に満月が出ている様子を無意識に想像したからであるような気がする。毎月筆者は満月を勝手にムーンゴッタと称してその写真を撮っているが、一度広沢池に映える満月の写真を撮るのもいい。月が出る時間にそこに着けば、家には徒歩30分で充分戻って来られるのではないだろうか。夏場ならそう真っ暗にならない間に着くだろう。ただし、池の近くは民家がとても少ないので、少し覚悟がいる。自転車を使えばいいが、筆者のそれはライトがなく、夕方以降には乗らないようにしている。懐中電灯をかざして走ったことが何度かあるが、従妹からは笑われながら、「怪しい人っていう感じがする」と言われた。そのようでは広沢池のほとりで月の出を待っていると不審者に間違われる。ともかく、一度は広沢池と満月を一緒に撮るべきだろう。西行や芭蕉は満月の夜に広沢池を訪れたのではないだろう。月が似合う池と思ったのは古人に倣ってのことで、その思いが今も生きているところがよい。南側は車道に面しているが、池の向こうは山でその裾野に誰もが歩ける道があるのかどうかわからない。一周1.5キロとのことで、歩けるならば歩いてみたい気がするが、この池のよい眺めは南から北を向いた時が一番いいはずで、山側から南を向いても道路を走る自動車など、現代を実感させられて白けるのではないか。
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 今日の最初の写真は久しぶりにクリックで拡大するようにしている。車窓から見る景色で、広沢池の代表的な眺めであろう。撮影位置は池の南西角だ。もう少し東へ移動して撮れば、池の東端も入ったかもしれないが、それには3枚横つなぎにする必要がある。それに無精は筆者はなるべく労力を省くために自転車をさらに東まで漕ぐつもりはなかった。それは、車道際に自転車を停めると通行人があれば邪魔になると思ったからでもある。南西角であれば北に道が伸びていて、邪魔になればそこに入り込める。また、南西角に停める理由はほかにもあって、それについては次回に書く。写真右端に家が少し写っている。これは民家ではないだろう。池を管理している人たちの事務所のようなものではないか。あるいはすぐ隣りにある神社に関係するか。この家を少し収めたのは遠近を伝えたいためだ。この家の後方に白い車がこちらに向かって走って来ている。その道路を後に筆者らは自転車で走り、直指庵に向かった。同じ道を西行や芭蕉、それに浄善も歩いたことがあるだろう。車道にはなっているが、農道と呼ぶにふさわしい鄙びた道で、まためったに車は走らない。そのため、この最初の写真は1000年前とほとんど変わらないだろう。そういうことを思いながら満月を眺めるのは人生にそう何度もない機会で、また出来れば他の人がいない状態で味わいたい。背後の山は名前を知らないが、標高は300メートルはないだろう。山の東が鳴滝で、西が嵯峨の地名になっていて、案外鳴滝が嵯峨まで迫っていることを知る。鳴滝と言えば乾山窯で、一度その跡地を訪れたいと思いながら、法蔵寺は福王子の五叉路から北で、その地域は山手でもあり、また交通の便が悪い。広沢池から法蔵寺までは3キロほどだが、山越の道路をオンボロ自転車で走るのは無理で、足を延ばす気になれない。車に乗る人ならば明日にでもまた雨であってもすぐに行く気になるが、乾山や浄善の時代は歩くしかなく、彼らの時代の思いに少しでも同化したいのであれば、あえて不便な方法を選ぶのがよい。手軽に実現出来るものはそれ相応の価値しかもたらさない。今日の2枚目の写真は、最初のパノラマの2枚の写真のつなぎ目より少し右手、そして山の尖りの真下から少し左手に見える、池に突き出た護岸で囲まれた小さな島だ。観音島と呼ばれ、そこに弁財天を祀る祠がある。背後の松が半分褐色になって枯れているのが残念だが、ここは風当たりが強いはずで、祠は長持ちしないだろう。島はふたつあって、2枚目の写真は東側のより小さなものだが、ふたつは写真からわかるように道でつながっている。道とはいえ、ほとんど岩の塊のような歩きにくそうな狭さで、それをわたって祠のすぐ前まで行く人は少ないだろう。池の水深はどれほどか知らないが、毎年冬になると、池の水を空にして鯉をつかまえる様子がTVで放送される。鯉の養殖場になっていて、それほど深くはないはずだ。鯉はJR嵯峨駅近くで何軒は売る店があって、筆者も買ったことがある。嵯峨の住民が全員鯉を食べるとは限らず、冬にこの池から大量に漁獲する鯉はどこでどう捌くのだろう。3枚目の写真は島から北を向いて撮った。写し込みたかったのは、芦と石碑だ。石碑は「広沢池築造壱千年」とあり、その下はたぶん「記念」だ。築造したのは誰かは正確にはわかっていないようだが、秦氏と考える向きもある。その年代は不明なので、いちおう遍照寺の建立に合わせて989年に造られたものと考えているようだ。ということは1989年に石碑が建てられた。遍照寺は今はどこにあるかと言えば、地図を調べると、池の南に沿う道路を南に少し入ったところにあるようだ。またその西隣りは仏教大学の宗教文化ミュージアムがあるが、これは知らなかった。龍谷大学のそれよりも有名でないが、これは不便なところにあるからとも言える。これも今知ったが、少し東の池沿いに世界救世教平安郷研修センターがある。池から南は開発の規制がかなり緩やかなのであろう。池から丸太町通りまでは400メートルほどで、今後も開発が進むに違いない。なので、広沢池の眺めは南の道路際から北を見るに限る。筆者らが訪れた時、観音島の道路際で30代の女性がひとりでずっと居眠りしていた。不用心のようだが、観光客は筆者らのほかにおらず、のんびりとするには最適の場所だ。
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by uuuzen | 2015-06-08 22:30 | ●新・嵐山だより | Comments(0)


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