●城南宮、その2
睨と言えばいいか、伏見で最も目立つ建物は京セラ本社で、石峰寺の若冲の墓の前に立つとそれが2キロほど前方によく見える。せっかくの眺めがぶち壊されると言えばおおげさかもしれないが、それほどにその建物だけが飛び抜けて高い。



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法律を守って建てたのは当然だが、もっと低いものに出来なかったのだろうか。どこからもよく見えるので、方角を確認する場合には役立つだろうが、その周辺を散歩することのない筆者にはその機会もない。ビルの最上階に社長室があるのではないかと思っているが、その部屋からの眺めは天下を睥睨する思いを伴うだろう。実際同社は京都を代表する企業で、戦国時代で言えば大将と同じで、その思いもあってどこからでも目立つ高さにしたのだろう。だが、それは本来の京都人の趣味ではない。以前書いたように、京都の町屋では鍾馗像を1階の屋根に飾るが、大きなものを買おうとするのは成金だ。金持ちはそんなもので目立とうとは思わない。京セラに怨みがあるのでは全くないが、遠目にその茶色のビルを見るにつけ、半分の高さがよかったのにと思う。その次に思い浮かべることは、100年や200年先で、その頃まで同社があるのかどうか知らないが、建物は寿命が来て建て替える。その機会に現在の半分の高さにするように京都市が指導するか、条例を作ればよい。京都の景観を守るために、小さな店に対しても目立つ看板をそうではない上品なものにしろという指導が行なわれている。それはそれでいいことだが、京セラのようなビルを目立たなくすることも大事ではないか。法律や条例を守って制限いっぱいに建てたと同社は言うだろうが、それは成金的な考えだ。商売は金儲けではあるが、奥ゆかしさもほしい。実るほどに何とかの言い回しもあるではないか。さて今日は「その1」の続きを書くとして、「その1」に書かなかった写真の説明からする。最初の写真は鳥居を遠くに見ながら西を向いて一直線に歩いて行く途中でわたる東高瀬川だ。この川は子どもの頃から知っている。従兄の家が割合近くにあって、この川の土手を筵を体に巻いて下まで転がり落ちる遊びを筆者と同じ歳のいとこがよくしていた。筆者は恐がりで、とてもそんな真似は出来なかったが、昭和30年代のことで、そのような自然を利用した遊びしかなく、また子どもは外で遊ぶものとみなされていた。それはさておき、写真で見ると、川と呼べないような小規模な水の流れだが、筆者が小学生の頃には大きく見えたのかもしれない。この写真を撮ったのは昔を思い出したことのほかに、写真右端に見える京セラのビルが目立ったからだ。撮影場所から直線距離で500メートルほどだろう。目立つのは無理もない距離だが、このビルを中心に半径3キロ以内なら、どこからでも目立つはずだ。同じように背の高い建物が周囲に林立すれば気にならなくなるが、現在の日本の経済を見ていると、そういうことは数百年経ってもないような気がする。そして、前述したように、1,2世紀後には半分以下の高さになっているだろう。2枚目の写真は鳥居がよく見え始めた頃に撮ったが、収めたかったのは写真左の城南宮の看板だ。最近新しくされたようで、その様子が錆が目立つ最初の写真の橋の欄干とは対照的だ。「城南宮道」というバス停を下りてこの東西を走る一直線の道に入ろうとする時、大きな石燈籠があった。そこに2枚目の看板と同じ、「日月星」の紋章を見たが、石であるから色はついていない。その写真を撮ろうと一瞬思いながら見送り、そしてこの看板に遭遇し、また紋章は3原色で描かれていたので撮影することに決めた。日月はよく見かけるが、それに星を加えているのは面白い。そしてその星は5つの尖りのある星形ではなく、太陽と同じ円形で、小さな青というのが夜空を連想させてよい。「方除の大社」とあるが、筆者は転居には縁がなく、大きな旅行もほとんどしないので、方除は気にしない。だが、東北の鬼門に相当する場所はあまりごちゃごちゃと物を置かないようにすべきという程度の気配りはある。城南宮そのものが、風水をよく考えて現在の場所に設置されたはずだが、京セラ・ビルの睥睨によって方除の効果が薄れたのではないかと思わせられる。
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 さて、「その1」の3枚目の写真を撮って鳥居をくぐって奥すなわち西に進むと、すぐ左手に比較的新しい社務所があった。それでも昭和時代の雰囲気で、4,50年は経っているだろうか。道に面して小さなテーブルがあって、そこにチラシ類が置いてあり、また入園券を売る窓口に付近には絵はがきなども目立った。巫女さんが窓口にいたので、招待券を手わたすと、茶室で抹茶を飲める券と交換してくれた。筆者らが入るのと交代で2,3人が出て来た。大晦日の午後で、人影が少ないのは当然だろう。順路にしたがって庭の小径を進むと、すぐに茶室が見えたが、周囲を見わたしても誰もいない。ところが、げんなりしたのは京セラ・ビルだ。それがせっかくきれいに手入れされた庭から丸見えで、そのことを知ってあえて背の高い建物にしたのかと怒りのようなものが湧いた。茶室に上がると、すぐにまた20代前半の巫女が奥の部屋から姿を見せ、床の間を背に座るように言ってくれた。つまり客扱いだ。毛氈は紺色で、座った場所から左右に庭が見える。右を向くと、奥に大きな蘇鉄が林立していて、全体を菰で覆っていた。巫女が菓子と茶を運んで来たので蘇鉄ですかと訊ねると、そうだとの返事であった。伏見区は雪が少ないはずだが、せっかくの樹齢何百年かの見事な蘇鉄を枯らしてはならない。葉も幹もすっぽりと覆い、強制的に冬眠させようということだ。部屋から蘇鉄まで3,40メートルほどか。蘇鉄以外にほとんど植物はなく、枯れた芝生が続いている。そして、蘇鉄の上には「京セラ」の白いロゴが目立つビルが聳えていて、歯ぎしりしながらその庭の眺めを撮影したのに、帰宅すると写っていないことがわかった。それで坐った場所から左向きの写真しかない。それを今日の2枚目に載せるが、芝生と蘇鉄の右手とは対照的で、立派な松などの植木が見える。茶室は「楽水軒」の額がかかっていて、堂本印象の揮毫だが、となるとさほど古いものではないのだろうか。あるいは以前の茶室を建て替えたのかもしれない。菓子と茶を出すと巫女はすぐにまた隣りの部屋に姿を消したが、襖は開けたままなので、筆者らの気配は感じていたはずだ。菓子は鶴屋吉信製で、三階の松の家紋に描かれるのと同形の緑色、内部の葉模様な線ではなく、逆さ雫型が3つ並び、その内部は赤であった。このように書いても何のことやらわからない人がいるかもしれないが、部屋の外の赤松を眺めながら、松を象った小さな菓子を口に含むのは印象深かった。だが、日によって菓子の形や種類が違うのかもしれない。茶室でゆっくりする時間が惜しく、10分もいなかったと思う。茶室を利用するのに600円であったか、庭を見るのとは別に料金を払わねばならないが、招待券は茶券つきだ。有効期限の最終日である年末に訪れてよかった。これが自分でお金を払うのであれば、庭は見ても茶室には入らなかったと思う。城南宮は、「その1」の2枚目に見える一直線の東西を走る道によって境内が南北に分離されている。茶室やそれを囲む庭はその道の南にある。京セラはさらに南にあるから、茶室の床の間を背に坐して首を右に向けない限り、そのビルは視界に入らない。厳密に言えばそうではないが、茶室を出ると庭の見事さに気を取られ、借景は気にならなくなる。庭の外のことを言えば、国道に面しているので車の往来の音が響く。そういう幻滅はあるが、それはないものと思えばよい。茶室を出ると、どこも絵になるような眺めで、どこをどう写真に撮っていいのか迷う。鯉がたくさん泳ぐ池が茶室に沿って広がっていて、これは瓢箪型をしている。そのくびれのところに小橋があり、それをわたって北西に進んだところで撮ったのが今日の3枚目で、クリックで拡大画像が現われる。左右に続けて撮ったつもりが、間がほんの少し途切れてしまった。道が2本見え、順路の立て札はあるが、どちらを進めばいいかわからない。写真の左手に向かった後、たぶん帰りは写真中央の道を奥から手前に出て来るのだろうと思ったが、こうして書いていてその想像が間違っていたことに気づく。つまり、庭の内部にあるすべての道を歩かなかった。写真の右端に少し見えるのは茶室よりもっと大きな建物で、何のためのものか知らない。さらなる庭の写真は次回に。

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by uuuzen | 2015-02-02 23:59 | ●新・嵐山だより | Comments(0)


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