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●クバリブレ
れるまで酒を飲んだことがあるのは30になる前までであった気がするが、それは気が滅入ったことがあってではなく、楽しさのあまり飲み過ぎたことによる。筆者はむしゃくしゃする時に酒で紛らわせることはしない。



●クバリブレ_d0053294_15195980.jpgそう言えばどの韓国ドラマでも絶対にさびしさや腹立ちを大酒で酔って忘れようとする場面が出て来る。そういうところが韓国ドラマの安っぽさで、紋切り型の人物が登場し過ぎる。韓国民に直情型が多いからかもしれないが、韓国でも酒を飲めない人はいるし、酒によって孤独から逃避するとは限らないはずで、ドラマとはいえ、見事なまでにどのドラマでも同じような場面を見せつけられるのは辟易する。人間はみな個性がある。それを無視して「こういう場面ではきっとこういう行動をするはず」という思い込みが、脚本家や監督にあるのだろう。現実はドラマの何万倍も複雑だ。それを承知のうえでドラマ作りしているはずだが、ならばそういうことを少しでも匂わせるドラマであってほしいのに、量産すれば粗製濫造になるのはやむを得ない。その粗が韓国ドラマには目立つ。だが、韓国民からすれば、悲しさに打ちひしがれそうな時は酒を飲んで少しでも辛さを忘れようとするのが人間の本性であり、日本のようにぐっとこらえて心の乱れを外に出さない態度は、何を考えているのかわらない不気味さということになるのだろう。酒ひとつとっても国民性がわかる。さて今日は最近見たファスビンダーの映画『聖なるパン助に注意』に登場するカクテルについて書く。この映画についてはあまり好ましい意見を書かなかった。だが、後で利いて来ると言おうか、いろんな場面をフラッシュバックさせられる。ではもう一度見ようという気になるかと言えばそうでもない。同作はファスビンダーの映画作りの実態を描いたもので、彼は自分の代役を俳優に演じさせ、そこに自分の姿を客観視しながら撮影した。またファスビンダーも役者として登場しているので、彼にとっては客観視の度合いは幾分減って現実と虚構が混ざった感じを味わったであろう。それは酒を飲んで半ば酩酊半ば覚醒しているのと似た状態とも言える。そしてこの映画では今日の題名のカクテルを飲む場面が頻繁に登場し、監督役がバーテンダーに10杯も作って来いと命じる場面もある。それはファスビンダーの体験に基づくだろう。同じカクテルを10杯も作って持って来いとは、漫画的な行動で、映画を見ながら笑ってしまうが、それはファスビンダーの余裕であって、酩酊状態でこの映画を撮っていないことを示す。彼はむしゃくしゃして思いどおりに事が運ばない時は、つい度が過ぎて同じカクテルをがぶ飲みし、1杯ずつではもどかしいので10杯も寄越せと無茶を言う。その果てに彼が酒と麻薬で若死にしたのは理に適っている。そのことの片鱗がクバリブレを10杯作れと命じることに現われている。筆者はそこまで無茶は言わないが、ファスビンダーのその激しさは理解出来る。筆者にも似たところがあるからだ。だが、そういう度が過ぎた態度を他の役者に演じさせ、しかも笑いを誘う戯画として見せる態度は誰にもで真似が出来ることではない。前にも書いたが、そういう態度はまさにザッパと同じで、自分を含めて冷静に見つめる客観的な態度を忘れない。にもかかわらず酒や麻薬で横死したところにファスビンダーがぎりぎりのところで生きて製作していたことがわかる。
●クバリブレ_d0053294_1520883.jpg それはさておき、映画ではクバリブレを監督役以外の人物も飲み、70年代初頭に大いに流行していたことがうかがえる。ファスビンダーが本当にそのカクテルを好んだのかどうか知らないが、「クバリブレ」すなわち「キューバの自由」という名前の「自由」の部分に意識を払っていたのではないか。『聖なるパン助に注意』の登場人物はみな気ままで自由に生きているふうであり、しかもファスビンダーの指示を待っていて、自由な人間の集団にも支配される者と支配する者とがいる状態を暴き出している。話をクバリブレに戻すと、バー・テンダーはホテルに滞在するファスビンダーの映画仲間たちが頻繁にそれを注文するので、ついには「もうない」と答える。すると暴力を振るわれてのびてしまう。本当になかったのか、作るのがいやになったのかわからないが、たぶん前者であろう。材料がなければ作ることは出来ず、正直にないと答えたのに、暴力を振るわれる。そこに若者たち、特に自由気ままに生きている映画人たちの傍若無人ぶりが見えるが、この映画では監督役以外にも殺気立った様子を見せる者がいて、映画作りの現場の緊張感はそれなりに伝わる。またそれは映画全般ではなく、ファスビンダーの映画ではというただし書きをしておく必要があるだろう。それはともかく、「クバリブレ」というカクテルによって筆者はこの映画を今後も思い出すに違いなく、そのカクテルを味わってみたくなった。カクテルはNと昔よく飲み歩いて一通り飲んだと思うが、「クバリブレ」は記憶がない。調べると、簡単に言えばサトウキビから造るラム酒をコーラで割ったもので、コーラ割りのカクテルは飲んだことがある。それが「クバリブレ」という名前であったかどうかは知らない。カクテルはショートとロングに大別され、前者はシェイカーを用い、量は少ないがアルコール分は多い。後者は名前のとおり、縦長のコップに並々と作り、ショートのように短時間で飲まなくてもよい。だが、アルコール分が少ない分、ジュース感覚でがぶ飲みしやすく、それで先の映画では監督役が両手の指を広げながら10杯寄越せと詰め寄っていた。ショート・カクテルは家では作りにくいし、またムードが出ない。その点、後者は手軽なイメージがある。わが家の裏庭向こう、距離にして50メートルほどのところに隠れ家的なバーがあり、そこへ行けばいつでもクバリブレは飲めるはずだが、ロング・カクテルなので自分で作ることにした。ラム酒とコーラとキューバ産のライムを買えばよい。ラム酒はいろいろあるが、ケーキ作りに使う琥珀色のを1瓶買った。スーパーで700円ほどで、計算するとそれで5杯分はある。もっとも、ラム酒の量は好みで増減できるから、このカクテルはかなりいい加減な作り方でよさそうだ。透明なラム酒を使うのがいいようだが、ラムはラムで、好みの問題だろう。ライムは絞ったエキスが小瓶に詰めて売られている。それでもいいかと思ったが、本物志向ならば、緑の皮で包まれた、しかもキューバ産がいいに決まっている。幸いそれをスーパーで見つけた。直径5センチほどのものが1個200円ほどする。えらく高いなと思いながらも、ラベルには「キューバ産」と印字されているから納得するしかない。ライムではなく、レモンでもいいようだが、香りが違う。クバリブレ1杯にどれほどのライムが必要かだが、買った1個を5等分した。そうして8月下旬から10日ほどかけて5杯を作って飲んだ。筆者の思うところ、夏向きのカクテルで、秋風が吹く前に5杯を飲んでしまいたかった。コーラは2リットル入りを計3回買った。カクテルに使うのはそのうちのごくわずかだ。今年はコーラをたくさん飲んだ。さて作るとなると、映画で見たのと同じようなロング・グラスが家にはない。そこで肉厚だが、細長いコップを最初は使った。それが今日の最初の写真だ。それではムードが出ない。というのは、映画では登場人物たちがそのコップを次々と後ろに放り投げて大理石の床の上で割ってしまう場面がある。肉厚のコップではそれは無理だ。それで薄手のコップをどうにか探したが、それが2枚目の写真だ。味はほとんどライムとコーラで、どこにラム酒があるのかという感じだが、最初の一飲みで頭の後ろがガツンと来て重くなり始める。早速酔いが始まっているのだ。ロング・カクテルであるからといって馬鹿に出来ない。筆者は5分から10分ほどで飲み干したが、それはアルコールの分量からすればビールより多く、また早いだろう。清涼飲料水を飲んでいる感覚なのに、知らぬ間に酔っていると言えばよく、ファスビンダーがついに10杯まとめて持って来いと命じたのはわかる。そういうアルコール漬けに麻薬を試し続けると、いくら若い頑健な肉体でも潰れてしまう。半ば酩酊、半ば覚醒の中でファスビンダーはどんな自由を空想していたのだろう。それはそうと、筆者が好きなロング・カクテルは「ブラック・ルシアン」で、その甘味がよい。
by uuuzen | 2014-09-10 23:59 | ●新・嵐山だより
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