●嵐山駅前の変化、その340(マンション)
がなくなったのでまた鷹峰の醤油屋まで買いに行きたいと思いながら、四条河原町や京都駅に市バスで出るのがせいぜいだ。京阪三条駅から東へ100メートルほどのところに2,3年前まであった造り酒屋の出入り口に「もろみあります」という古ぼけた貼り紙があって、その店ではよく買った。



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10数年か20年か、とにかくそれほど長く買い続けた。その木造の古い店はついになくなって今は何になっているのだろう。街並みが変わるとすぐに気づくのに、古い家がどこにどうあったかはなかなか思い出せない。そう言えば昨日三条寺町辺りを歩いていると、60代夫婦が立ち止まって首をひねりながら話していた。奥さんは思い出したようで、昔はここにこういう建物がこういうようにあったといったことを大げさな身振りで説明するが、夫の方は合点が行かない様子であった。たぶん10年は来ていないのだろう。若い時に通った店がその近くにあったのかもしれない。すっかり様子が変わって記憶も曖昧になってしまう。さびしいことかもしれないが、今の若者は今の街並みに思い出を刻む。話を戻して、京阪三条駅近くで醪を入手することが出来なくなって、よその店を探したかと言えば、筆者はそこまで食通ではない。なければないで平気だ。だが、たまにスーパーの味噌コーナーを覗き、そこに食欲をそそるものがあれば買う。そういうものとしてムーギョで売っている金山寺味噌がある。100円ほどで、甘い醪と言ってよい。これはこれでいいが、少々飽きる。京阪三条駅近くの店で売っていたのはとても塩辛いもので、それとよく似た味ながら、香りが格段によいのが鷹峰の醤油屋の製品だ。ムーギョの100円の金山寺味噌とさして変わらない少量で500円だったと思うが、すぐに手に入らないという思いがなおさらおいしいと感じさせる。今はキュウリが安いので、毎日その醪をキュウリと一緒に食べたいが、それには鷹峰まで行かねばならない。それで今思ったが、息子が伏見に住んでいるので、醸造業が集まる伏見で醪が手軽に買えるのではないか。なぜ気づかなかったのだろう。ま、それも絶対に探してやろうというほどの執着はない。売っているところをたまたま見かければ買うという程度で、筆者は食通にはなれない。今日は駅前の変化シリーズへの投稿で、こんな話題から始めると話をどう継いでいいのかわからない。醪という漢字を最初に使ったのは、一昨日のTVで女優が京都の各地を訪れる番組を見たからと言っておこう。その各地の中に嵐山の渡月橋が少し写り、嵯峨に住む友禅職人の仕事場が映ったが、それより興味深かったのは鷹峰を訪れたことだ。御土居の前の和菓子屋が少し見え、その次に野菜を売る家が紹介された。その場所は筆者はよく覚えている。同番組ではその売り場とも言えないほどの小さな場所の奥を映してくれた。鷹峰の坂を上りながら、筆者はその奥をちらりと覗いたが、まさか勝手に入って行くことは出来ない。それをTVでは見せてくれた。驚いたことに、奥はうなぎの寝床のように長く、また大きな畑があった。そして京野菜を育てるその農家は400年続いているとのことで、京都の貫禄というものをさりげなく示している。その農家で栽培する野菜を使ったフランス料理店が京都駅近くにあって、それも紹介されたが、筆者も家内もまず行くことはないだろう。おいしいのはわかるが、高級な料理をわざわざ口にしたいと思う方ではない。ほんのわずかな醪とキュウリを頬張ることでも充分食の満足感を得られる。
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 今日の写真に写る弁当屋には三回入ったことがある。四半世紀の間にそれではその店がなくなってしまうのも無理はないかもしれない。最低2500円であったのが、廃業前は3000円近かった。庭を見ながら食べられるのはよいが、その美しさは印象がない。聞くところによると、弁当の中身をすべて店で作っていたのではないらしい。それでは味のこだわりも少なかったのではないか。広い敷地であるから固定資産税だけでも大変な額で、それに見合う売り上げがあって初めて営業が成り立つ。店主の奥さんが2年ほど前に筆者に「わたしのところのような零細企業は…」と言ったことがあるが、それは本音であったのだろう。嵐山にふさわしい店であったのに、それが別荘代わりに購入されるマンションになるのであるから、観光客にとっても嬉しい話ではないだろう。金の原理で世の中が変化して行く。京阪の三条駅に近い造り酒屋がなくなったのも同じ理由で、今思い出したが、そこはマンションを販売する不動産屋が入ったのではなかったか。だが筆者が思い浮かべるのは数百年先の京都だ。駅前ホテルがなくなり、今日の写真の場所に出来るマンションもなくなり、案外江戸時代と同じように家のない土地になっていないとも限らない。人口が減って来ているのであるから、それが数百年後は江戸時代並みになっているかもしれない。ともかく、種々の理由で今よりはるかに建物が減っている可能性は考えられる。そうなった時、誰が喜ぶかと言えば、それは今と同じで、歓迎する人はするし、関心のない人はどうでもよいと思う。また人が少なくなると小動物が増えるだろうが、彼らが喜ぶかと言えばそうでもないだろう。となれば、家が増えようが減ろうが、人間にとっても動物にとっても、自然にとってもどうでもいいことで、どのような状態でもそれはそれを受け留めるべきかもしれない。そう思いながら筆者が数百年後の嵐山が江戸時代並みに建物が少なくなっている様子を思い浮かべるのは、今の状況をよいとは思っていないからだろう。とはいえ、古い時代が何もかも今よりよかったのかどうかと言えば、今の便利さを知っている者は古い時代のいい部分のみを過大評価しているのであって、誰しも今という現実から逃れられないと意見する人もある。そこで生活が便利になり、また新しく生まれたもので目を引くものを遠ざけて、あるいはさして関心を寄せずに暮らすことは可能であるし、筆者はどちらかと言えばそのようになって来ていることを実感するが、それは年齢のせいも多少はあるし、また今まで知らなかった、また関心がなかったことに親しむことで少しずつそうなって来ているとも言える。そういう筆者が駅前の変化をどのような思いで定点撮影しているかと言えば、4階建ての鉄筋コンクリートのホテルやマンションが出来ることに反対というほどでもない。変化は仕方ない。今の姿はいつかまた大きく変わるはずで、どの時代でも人々は批判しながら受け入れもする。そう言いながら、駅前ホテルの建設の様子を定点観測したのとほとんど同じことがまたマンションの建設で繰り返されるのかと思うと、退屈を感じる。そして今日載せる更地の写真が記録性の点からも最も貴重と思う。マンションが建ってしまえば、この更地の様子を思い浮かべることは難しい。
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 醪の話からなかなかつながらない。醪は酒の肴として出す飲み屋はあるが、京料理店ではどうだろう。きれいに彩られた弁当の中にまさか「もろきゅう」を含ませることは出来ず、醪は料理のうちに含まれない。酒好きでしかもこだわり派が好む食べ物だ。醪という漢字は膠に似て、これは「固まったもの」を連想させるが、その意味で「こだわり派」を持ち出すのは正しい。こだわり派から見れば駅前ホテルも「風風の湯」も極限まで経費を切り詰め、美的余裕がほとんどない施設に見えるが、今はみなそうだろう。世知辛いことだ。TVで家の改築を紹介する番組があって、そこでは設計者が依頼者の思い出を大切にし、特製のちょっとしたこだわりを毎回示す。ホテルや温泉で言えば、そういう態度はもてなしの心として当然あって然るべきだが、それがほとんど無視されているのは文化の低級さ加減を示すだろう。だが、こだわりは金がかかり、そのことに切りがない。そして商売人は美的こだわりに関心がない。飲み屋で言えば、醪を用意していないか、店主が特別に好きなそれを持たないかだ。そう言う筆者もおいしいと思った醪がなくなればそれはそれで済ませることが出来るので、こだわりはない方だ。ただし、食に関してだ。今日の写真はちょうど1年前の撮影で、4枚目の写真がクリックで拡大する。これは敷地の北西角から撮った。中央やや右手奥が3枚目の写真に見える工事車両の出入り口だ。土地は手前が低く、奥に向かって上り坂になっている。またマンションは手前の低い場所に建ち、4枚目の写真で言えば奥の家並みを隠す形になる。つまり、この写真のように見通せるのは今の間だけだ。現在は建物を建てる前の地面の均し工事の最中で、この写真と異なるのは箱型の工事事務所や簡易トイレが車の出入り口付近に建っている。また、敷地の周囲は背丈以上の目隠しをされた塀が巡らされ、脚立がなければ4枚目のような敷地内を覗く写真は撮ることが出来ない。敷地の端には樹木がまだ見えるが、今は雑草すらない状態で、マンションが建った時に植樹されるかどうかも疑わしい。先日の説明会でもらった設計図によれば樹木は描かれていない。嵐山が間近に控えるので、敷地内に緑を植える必要はないとの考えかもしれないが、世知辛いことだ。

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by uuuzen | 2014-07-29 23:52 | ●駅前の変化 | Comments(0)


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