湛然と悠然は漢字が違うので意味も違うが、前者のようにありたいと思いながら、実際は後者にも遠い生活を送っているのかもしれない。そう言えば湛然として動かない様子を間近に見たことを書きたいと思いながら、今日は昨日書いたように「大船鉾に乗る」の「その2」ではなく、駅前の変化シリーズに投稿する番であることを思い出し、なかなか気がかりになっていることを書く機会が訪れない。
焦っているのではないが、湛然とはまるで違い、ともかく毎日雑事をこなすことだけで手いっぱいの状態で、調子を言えばよくないことが続いている。昨日と今日はうんと涼しくなったので、まるで秋の訪れのように感じるが、夏本番はこれからで、ますます湛然とはほど遠い状態で過ごさねばならない。とはいえ、本当に今夜は涼しく、これを書く部屋の気温は31度で、窓からは嵐山からの風が入って来る。それで多少は心を湛然とした状態に近づけることが出来るかなどと、調子のいいことを思ってしまう。ついでに書いていけば、「湛然」という言葉を最初に書いたのは、前述のようにまさにその状態にある者を最近見かけたためだが、それとは違う別のもっと大きな理由がある。それを書けば脱線があまりに過ぎるのでやめておくが、このブログの投稿はそのように筆者が関心のあることから派生したことを書き、肝心のその関心事については書かないことが多い。それで投稿した翌日やその次の日に思い出すことがある。何をかと言えば、投稿した内容ではなく、書かなかったことだ。そしてその書かなかったことは書いていないのであるから誰にもわからないが、筆者はわかっている。そしてそのことは書いたことと深いところでつながっている。何を言いたいかと言えば、こうして書いていることは書きたいこと言えるが、一番書きたいこととは限らないということだ。だが、一番書きたいことは全く書かずにおくのは難しいから、筆者だけにわかる仄めかしとしてわずかに書く。そのわずかは一語である場合もあるし、一行程度であることもある。そしてそれがわかっているのは筆者だけで、そのことが何か価値あるものを抱えている気がして楽しい。で、「湛然」に関係することは後日書くが、その言葉に一番関係することはたぶん書くことはない。出し惜しみするというのではないが、ブログ向きのこととそうでないことを筆者は分けている。さて、今日はまた駅前の変化や自治会のことについて書くとして、何がいいだろう。そうそう昨日のTVで、関東のどこだったか、定年退職した人が地域に溶け込む方法を紹介する番組があった。企業戦士として働いて来た男性は定年になれば自分が地域から孤立していることを知るという話は昔から言われて来た。近所づき合いは奥さんに任せ切りにして来たので、隣り近所に顔見知りがいない。それに企業でそこそこ地位が高くなって定年を迎えると、そのことが頭にあって、地域の活動など、程度の低い人が中心になってやっていて、それに参加するのは馬鹿らしいといった思いも何となくある。そういう男性は女性からは人気がない。定年になればもう働いていた時のことを自慢したりするのは格好悪いことなのに、それに納得出来ない。先のTVの番組でもそれに類する人を取り上げていたが、今はすっかり思いが変わって、今こそ自分の本当の人生だと思っている。そしてその男性のやっていることは、たとえば地元小学校の児童を安全に道路を横断させるための旗持ちといったことだ。それはいわば誰でも出来る、あるいは学歴のないような人がやる作業と言ってよいが、一流企業で部下を大勢抱えて華々しい業績を上げた人が今はそんなボランティアをし、しかもそのことが楽しくて仕方がないと言っている。
これはその人が目覚めたからだ。そして一方ではそうではない人がいる。それはそうした地域ボランティアを侮っているか、あるいは関心のない人だが、そうした人を目覚めていないと謗るのはよくない。ボランティア活動は本人が楽しいと思わなければ長続きしないし、また周囲の人に迷惑をかける。それでボランティアを試しにしてみはしたが、自分には向かないと思い、別の何かに目覚める人もある。それはそれでよいことで、定年を迎えて暇を持てあましている人がみな地域のボランティア活動に参加すべきという考えはおかしい。筆者はいわばずるずると自治会のことに関わっていて、またやるなら積極性を出さねばと思っているが、実際は自分の仕事に精を出したい。その機会は来年か再来年には訪れるので、そうなれば自治会のもろもろのことから手を引こうと思っている。筆者が会長になる前でも自治会はそれなりに動いていたから、筆者が抜けてもまた滞りなく動いて行く。どんなことでもそうだ。本人は自分がいなければとんでもないことになりかねないと自惚れているが、現実はそうではない。誰にでも代わりの人がある。特に団体はそうだ。その代表が会社で、定年があるのは、別の人が代わって仕事を完遂することが出来るからだ。筆者の仕事は完全に筆者個人が携わるもので、筆者の代わりをしてくれる者がない。そう考えると、自治会の仕事などにかかずり合っている暇はない。定年退職した人は会社という団体と縁が切れたので、新たな団体を欲する。その最も身近なものが自治会や地元の各種団体だ。新たな団体に入ることは新たな人間関係が出来ることで、以前の会社勤めの自分の地位は役に立たない。会社勤めしながらしっかりと自分の趣味を確立していれば定年後もそれに没頭出来るし、そういう人は地域のボランティアに時間を費やすことはもったいないと思うだろう。筆者はどちらかと言えばそのタイプだが、地域の見知らぬ人とでもどちらかと言えばすぐに顔見知りになってよく話をするので、中途半端、優柔不断な性格かもしれない。もっと自分のやりたいことを優先しなければ、手遅れになってしまう。前述のTV番組で地域のボランティア活動に新たな生き甲斐を見出している男性は、会社勤めした時と立場に共通点がある。それは統率と言えばいいか、人の輪の中で存在感を大きく示していることだ。その点では会社にいた頃と同じく、人の上に立つといった一種の優越感を満たすことが出来る。そしてそのことが楽しいのでボランティアを長く続けることが出来る。筆者の自治会の仕事は6年目に入っているが、「長」ではないが、それとほとんど変わらない立場にあって、自分の思うように事を運ぶことが出来、それが楽しいのでずるずると続けているというところがある。そして男でも女でもそのように考える人は少なくないが、では誰でも「長」やそれに類する立場にふさわしいか言えばそうではない。自分からなりたがる人はだいたいその役割にふさわしくない。
一昨日は地元小学校で夏祭りがあって、その準備や後片づけ、それに4時間の祭りそのものも見たが、隣りの自治会の副会長Hと2,3時間話をした。Hの顔を見るのは初めてだが、筆者が準備作業に慣れているのを見て声をかけて来た。お互い年齢を言わなかったが、Hは70歳ほどではないだろうか。会社ではエンジニアをしていて、CADの開発に携わったりしたそうだ。面白かった話は定年後の経験だ。会社にいる頃から田舎暮らしに憧れていたらしく、そうしたTV番組をよく見ていたという。それで定年を迎えて瀬戸内海のとある島に単身で住み、農業に従事した。それを数年で切り上げて嵐山に戻って来たというが、予想とは違うことがいろいろとあったらしい。その島は日本全国から農業をするために人がやって来るがほとんどの人は1年未満で島を去る。島の農園は会社組織で、育てる作物によって県から助成金が出る。そうした作物を農園の社長はよそからやって来た者に育てさせるが、最初の一番手間のかかる作業が終わって収穫の時期が近づくと、いわゆる「いじめ」のような態度を取って辟易させ、島を出るように仕向ける。そして社長はいわばただで収穫を得るのだが、それがよそ者の偏見としても、とにかくせっかく島に定住しようと夢を抱いてやって来た人たちのほぼすべてに等しい割合が1年未満で去るとは、詐欺を思うのがまともだろう。それはともかく、Hは当初奥さんを呼んで生活するつもりが、ついに農作業の厳しさに耐えられなくなった。その理由はいくつか聞いた。そのひとつは殺虫剤の散布だ。それを撒かねばハウスの中でも虫が発生するし、またハウスの中への散布は自分がそれをわずかでも吸ってしまうので健康にはよくないとのことだ。そして残留農薬を考えると、洗わずに食べることは考えられないとのことだ。先頃中国のチキン加工工場で腐った肉を混ぜた事件があったが、それに似たようなことはどの食品工場でもやっているであろうとも聞いた。とにかく、裏事情を知るといやになるし、また雑草の除去なども含めて農作業は大変らしい。それで定年後の夢も醒めてしまい、もう農作業をしたくないと言う。ではHはこれからどう楽しく過ごすかだが、娘さんが孫をふたり産み、その顔を見るために月の半分は関東で暮らす。サラリーマン時代から北海道から九州まで出張したので、それで瀬戸内海の島に単身で住むことも苦にならず、また月の半分を関東で暮らすことも平気だ。また月の半分を他の場所で暮らすのであるから、地元のボランティアに精出すことは無理だ。70代になって毎月500キロ離れたところを行き交いして暮らすことは筆者には想像出来ないが、そうなればなったで楽しいかもしれない。京都市内を市バスで動き回ることですら多忙と考えている筆者は行動範囲が著しく狭く、全く井の中の蛙だ。このカテゴリーに投稿する定点観測の写真からしてもそう言える。だが、「湛然」や「悠然」の状態でありたいのであれば、なるべくじっとして動かないことに限る。また、動き回ると疲れやすくなって来ている世代であればなおさらだ。さて今日は去年7月29日の「風風の湯」の写真を載せるが、同じ日にマンション建設現場も撮影した。それは明日の29日に投稿する。