●ムーンゴッタ・2014年5月
厳な音楽が鳴り響くかのように雲の奥から満月が顔を覗かせた。その瞬間を撮って家に引き返した。近くの駐車場の出入り口に立ちながら40分ほど粘った。夕方から東の地平線近くに横向きの分厚い雲が覆っていて、そのどこに突きが隠れているかと思っていると、ぼんやり明るい箇所がある。



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てっきりそこだと思って凝視していると、それは雲の塊で、ほかの場所と同じ灰色になって行く。そんなことが3,4回あったが、今度こそ間違いないと思えるほどに急速に白っぽくなって行く箇所がそれより右手にあった。今度はそこに狙いを定め続けると、やはり間違いがなく、月が見え始めた。それからでも10分ほど待った。すっかり全体を見せた時にシャッターを押した。今日は午後も小雨であったので、今月こそはもう満月の写真が撮影出来ず、3日前の夕方に駅前で撮った写真1枚を使うしかないと思っていたが、夕方7時には空の大半には雲がなく、それから急速に晴れた。駐車場の前で待っている時、電車を降りた人がこちらに向かって歩いて来るのが見え、邪魔にならないように駐車場に少し入る形に立った。数メートル下がれば家の壁の際で、その方が道行く人や車にはいいが、数メートルでも月に近い方がいいと本能的に思った。そしてそれが馬鹿な考えであることを笑った。月までの距離と比べると、地上の数メートルが写真を撮る時にどれほど差があるというのだろう。そう思いながらも月を少しでも大きく撮りたいのではなく、月以外に何を写し込むかが問題であると理由づけ、駐車場であることがわかるように縦の写真にしてその下の方に車を収めることにした。そうして撮ったのが今日の3枚目だが、車か何かわからないように写っている。この写真を撮る時に思い出したのは、数年前の創画展での受賞作だ。それは満月の下のどこかの駐車場を描き、とても好感が持てた。そのことを書くと、画家本人から書き込みがあった。そして翌年、翌々年と創画展でその人の作品を探したが、見当たらなかった。そう言えば今年の4月中旬から下旬にかけての創画展は案内状をもらっておきながら見に行かなかった。家内が3月末で定年退職し、定期券を買わなくなった。そのため、以前のように仕事帰りに四条河原町で待ち合わせすることがなくなり、出かける機会が減った。夫婦とも毎日家にいるのでいつでも出かけられるが、そうなるとかえって出かけないものだ。昨日は家内の姉と妹と四条で会ってしばし談笑したが、家内の血色がよく、少し顔がふっくらしたと言われた。勤務している時のようには体力の消耗とストレスがないからだ。だがあまり家にいると運動不足になるから、たまにはたくさん歩かねばならない。家内が定年になったのでたちまち無収入夫婦で困ったことになっているが、蓄えを取り崩しながらの生活は慣れている。それで始末して生活せねばならないと思っているかと言えば、案外そうでもなく、筆者は相変わらず散財が激しい。昔家内の兄が言ったことがある。このことは以前に書いた。「まだ大丈夫」と「もうあかん」という言い回しの本当の意味だ。前者の方が後者より余裕があると誰しも受け取るが、実際はその反対で、人は家計が火の車であるのに「まだ大丈夫」と他人に語り、まだ余裕がある時に「もうあかん」と言う。これはそのとおりで、金欠で顔が青ざめている人ほど、それを見破られたくないから、「まだ大丈夫」と言う。だが、その言葉の裏には悲壮感が張りついている。「もうあかん」と言う人はたいてい笑いながらであり、まだどうにか持ちこたえられるだけの経済的余裕がある。筆者はと言えば、商売人ではないので、そのような言葉を他者に語ったことはない。それで改めて現況がどうかと考えると、「まだ大丈夫」と「もうあかん」の中間のような気がする。あるいはそんなことはどうでもよい。金の話は面白くない。
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 家内の顔の艶がよくなったとして、それは精神的な安定の影響だろう。先日67歳の認知症の女性が7年ぶりに身内に見出されたニュースがあった。7年間施設で世話になったので、1000万ほど支払わねばならなくなりそうだが、今後同様の事件は増えるだろう。万単位の人が認知症で行方不明になっていると聞いてびっくりしたが、認知症になる人が知能指数には関係がない。筆者は大丈夫と高をくくっているが、こればかりはどうなるかわからない。そう思うと家内も筆者もとりあえず健康で、今が一番いい時かと感謝せねばならない。話は変わるが、最近ある男性の老化ぶりに愕然としたことがある。名前は知らないが、お互い顔を知っていて、道で会えば会釈を交わす。その男性は筆者より5,6歳上と思う。そこそこ男前で、またいなせなところがあって、歩いていても目立つ。その人の変化に気づいたのは2,3か月前だ。髪が真っ白になったのはいいとして、背中が曲がり、口元が皺だらけで、全くの老人で、80代に見える。最近までかくしゃくとしていたのに、なぜそんなに急に老けたのか。それがとても信じられない。背中が曲がり、歯が抜けると途端に老人らしくなる。その男性を先日の子ども神輿のお祭りで見かけた。自分の自治会の神輿に沿って歩きながら上機嫌で、酒屋の前に来た時にはプラ・カップ一杯のビールを買い、今度はそれを飲みながら歩いたが、疲れたのか道端で立ち止まり、やがて筆者らの神輿がその脇を通過した。その時にその男性の顔を間近で見つめると、歯がほとんどないようで、皺の多い口元は全くの老人であった。最近まで壮年の雰囲気を漂わせていたのに、何と老いるのが早いことか。そのことを家内に言うと、「わたしらも同じやで」と言われた。確かにそうなのだろう。少しくらい若く見えても、60は60、62は62だ。それでも心の持ちようが肝心だ。たとえば好きな音楽を聴き、好きな絵を眺め、また散歩しながら鳥のさえずりに親しみ、花を愛でる。そんな生活を送っていても、いつ病が忍び寄るかわからず、また知己の悲しい出来事を知る。それに筆者が嫌なことに遭遇していないかと言えば全くそうではない。その嫌なことに夢でうなされるほどだ。そういうことがあるのでなおさら美しいことに触れていたいと思う。毎月満月を見つめることもそのうちのひとつと言ってよい。月が雲の合間から顔を覗かせる時、静かで厳かな、それでいてきらきらした音楽が聞こえることを想像すればよい。満月が筆者の部屋の窓を照らしている今夜、いいことがあった。よくないこともあると言えばあるが、欲を出さずにいいことのみ見つめればよい。さて、今日の最初の写真は13日に撮った。満月に2日早い。2枚目は3枚目の2、3分ほど前で、まだ雲の向こうに月は隠れている。
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by uuuzen | 2014-05-15 23:59 | ●新・嵐山だより(特別編) | Comments(0)


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