●嵐山駅前の変化、その312(桜の林、温泉)
ると痛む左肩がここ10日ほどは随分ましになった気がする。それを最初に実感したのは「風風の湯」に最初に行った晩だ。温泉を張った湯船をひとり占めして肩まで浸かりながら、両手を前方に押し出し、水泳のように今度は両側に広げ、後方に曲げた時、左右の感覚が同じで、左の曲がりが困難であることを全く感じなかった。



多少の痛みはまだ残っているが、以前の8割ほどに減った感じだ。何が理由で左肩が痛むようになったかの正確な記憶はないが、半年ほど前からだ。体が元どおりになるには月日を要する。また、元どおりになればいいが、そうでない場合もある。肩が痛むからといって筆者は医者に診てもらわず、日にちが薬と思っていた。もう少し積極的ならば、寝転んで家内にマッサージしてもらうかだが、そこまでするのは面倒で、そのうちましになると思っていた。予想どおり、そのようになりつつある。昔はもっと体は柔軟であったのに、加齢とともにそうも行かなくなる。最近は毎日のように老化のことを書いているが、身辺雑記ならばそうなるのもやむを得ない。さて、今日は嵐山の桜を見に行かず、ムーギョに徒歩で買い物に行くことにした。ここ2,3週間は自転車を使うか、あるいは数日は行かなかったので、徒歩での往復は久しぶりの気分だ。あえて運動のため、気分転換のために出かけた。いつも午後7時過ぎに出かけるが、今日は早めだ。5時半頃に家を出た。通い慣れた道でも、小川沿いの桜が満開でしかも人通りがほとんどなく、これまたひとり占めして楽しめる。ひとりで見上げる夕暮れの満開の桜は、春の生々しい内臓を見る気分だ。屠ったばかりの牛や豚の内臓を取り出すと湯気が出るが、その時のぎょっとさせる光景に近い。ムーギョまでの往復では歌を口ずさむことが多い。今日は先日からのレオン・ラッセルを思い浮かべ、「A SONG FOR YOU」を歌った。3月31日にこの曲を取り上げなかったのは、有名過ぎることと、他人がカヴァーして歌っているヴァージョンにいいのがあるからだ。とはいえ、その曲をいつか取り上げるかどうかはわからない。それはさておき、レオンの曲を口ずさみながら、思い出していたのはJ.J.ケイルのことで、彼の「HOMELESS」という曲の歌詞を反芻していた。ケイルの曲はどれも人柄をよく伝えるが、この曲は格別だろう。ボブ・ディランはホームレスになり下がったかつての成金を揶揄する内容の「LIKE AROLLING STONE」を60年代半ばに大ヒットさせたが、その歌詞は筆者はあまり好きではない。偉そうにする奴が落ちぶれた時にざまあみろという気持ちになるのは理解出来るが、そういう人はいつか同じように落ちぶれるのではないか。J.J.ケイルがホームレスに寄せる思いはディランとは違う。
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 ついでなので次に歌詞を直訳しておく。『女は金がないと言った。だが、男は疑った。「おれもそうだった」。しかし今やそうではない。「小銭を少しやるよ。御婦人。おれはもう行くからな」。女は男の目を覗き込み、そして心の奥深くを見た。おれは知っている。女は男が自制しているのかと不思議に思ったことを。女はひとり呟いた。「乞食はどこからやって来るんだろうね」。男は言った。「おれはホームレスではない。おれは商売するジプシーで国中を旅している。ホームレスではないからな」。男は鉢巻きを下げて通りを移って行った。もう絶対に会わないことを考えながら。その女はふたたび、御存じのように、男がいつもそうしていたように、出入り口や路地で眠る。年月が去り、とある日に、男は老いた女を目にする。まったくぼろぼろでやつれている。厳しい時が女を放さなかったのだ。衣服はくたびれ、古い。女は言った。「わたしはホームレスではないよ。わたしは商売するジプシーで国中を旅している。ホームレスではないからね」。昼間のある時刻、夜は時々、あなたはふたりが歩いているのを見るだろう。ふたりが視界に入って来る。荷車を押しながら、手を握っている。あなたが何か出来ることがあるかと訊くと、ふたりは走り去る。子どもが家の外に遊びに出る時のように。それであなたが「あんたたちは誰?」と訊くと、ふたりは決まってこう言う。「おれはホームレスではない。商売するジプシーで国中を旅している。彼女もホームレスではないぞ。おれはホームレスではない」。』 歌詞は簡単でも、内容はじっくり考えさせる。かつてホームレスであった男は金を得てホームレスの女に小銭を与える。何年も経って男は女が老いてなおホームレスになっている姿を見る。だが、歌詞の後半では、ホームレスは男女のカップルになっていて、手をつないで荷車を押している。助けの声をかけようものなら、彼らはホームレスではないと言う。それはかつてホームレスであった男から言われた言葉だ。ホームレスから脱した男もいるが、そうでない女も男もいるという話だ。歌詞の最初に登場する小銭を与える男は断固としてホームレスではなく、商売でジプシー生活をしているという一種の誇りがあった。そのことを女のホームレスは自制があるのかと不思議がったのだが、女は男の態度から何かを学んだ。それはホームレスではないという思いを持つことだ。それでも歳月は容赦せず、彼女はホームレスから脱し切れなかった。救いは男と一緒なことだ。幸い、彼は女を包み込み、助けを差し伸べようとする人の好意に対して、自分たちはホームレスではないと主張する。ここにはJ.J.ケイルの人を見る優しさがある。他人からはどんなに惨めな状態のホームレスに見えても、自分たちはホームレスではないと誇りがある。ケイルは最初ギタリストとして立とうとしたが、それでは飯が食えず、一時別の仕事に就いた。経済的な不如意はよくよく知っているのだろう。そういう彼にクリスティン・レイクランドというギタリストの内妻が出来たのは幸運であった。彼女はケイルの録音に参加し、ほのかな香りを添えている。この曲の後半のホームレスのカップルはケイル夫妻の眼差しの反映だろう。ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」のアンサー・ソングのようで、筆者は圧倒的にケイルのこの曲の歌詞の方が好きだ。
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 そんなことを考えながら、ムーギョまで100メートルというところに来た。気づくと目の前3メートルに見知らぬ女性がいて、筆者に声をかけて来た。よくあることなので驚かない。見ると60歳くらいか、家内ほどの背丈で、一見西洋人かインド人に見えた。英語が話されるかと思うと日本語だ。「あのお、トモイチに買い物に行かれますか」「はい」「商品券があるので使っていただけますか」「いいんですか?」「はい」。そしてハンドバッグから封筒をひとつ取り出して手わたしてくれた。後ろ姿を5秒ほど見送りながら、どこかの宗教団体に入っている人かと思った。そして筆者の身なりが貧乏臭かったかとも思った。1か月ほど前、家内とムーギョとトモイチに買い物に行った時も家内は見知らぬ女性からトモイチの商品券の入った封筒を手わたされた。それはムーギョの前で、筆者はすでにひとりでトモイチに向かって歩いていたので、その女性の姿を見ていない。トモイチで筆者に追い着いた家内が、見知らぬ人から商品券をもらったことを不思議そうに話した時はさほど気にしなかった。そんなこともあるだろうと思ったからだ。今日は帰宅して家内に出会った女性の身なりや顔つきを言うと、同じ人物であることがわかった。家内が受け取った時も午後6時頃であった。出会った場所も100メートルほどしか違わない。ごくありふれた身なりで、知的で個性的な顔立ち、美人だがどことなく悲しそうであった。まさか毎夕、同じ四条通り沿いの北側の歩道を西に向いて歩き、出会う人に商品券を手わたしているのではないだろう。今日と同じ午後5時半に家を出れば彼女にまた会えるかもしれない。その時はお礼を言い、また顔見知りになれば挨拶をする間柄にはなれるかもしれない。そういうことを相手が望んでいればの話だが、家内と筆者が1か月ほどの間を置いてともに同じ500円の商品券を手わたされるとは、よほどその女性にすれば筆者らが貧しく見えたのか、わずかでも助けたいと思ったのかもしれない。彼女はムーギョで買い物をしたくない理由があるのだろうか。それはないと思うが、真実は彼女の口から聞かねばわからない。家内に「もらっておいていいのかな」と言うと、筆者が見知らぬ人に今まで何度も展覧会のチケットを手わたしたことを思い出させ、別に気にするほどのことでもないと言った。それはそうかもしれないが、彼女が急に筆者の眼前に現われ、次の瞬間に声をかけて来て、筆者が商品券を受け取った5秒後には視界から消えたので、何とも不思議な気分だ。それに筆者は人に商品券を与えることはしないし、ホームレスではない。さて、今日もちょうど1年前の桜満開の写真になる。去年4月5日はいつになく朝早くに家を出て家内と天橋立に日帰り旅行をした。そのことはこのブログに書いた。最初と3枚目の写真左端に家内の姿が小さく写っている。3枚目のパノラマはいつものようにクリックで拡大する。夜桜もいいが、朝日を浴びる桜も晴れやかでよい。ただし、天気がよい場合だけで、今日は駄目であったろう。明日もそのようだ。先ほどのニュースで東京は皇居の桜に万単位の人が出かけたとあった。差悪実のTVでは日本で一番有名な桜は京都八幡の背割り桜と言っていた。その桜を家内と見に出かけたのは3年前のことだ。そのことも書いた。あまり過去を振り返ると、また肩が捩れておかしくなりそうな気もする。今後書くことに思いを馳せる方がよい。

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by uuuzen | 2014-04-05 23:59 | ●駅前の変化 | Comments(0)


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