●ムーンゴッタ・2013年7月
取り線香を焚きながら外に出した床几に寝転んで厚い雲から満月が覗くのを待つ様子を想像した。この実現のためには床几をまず入手せねばならない。それが出来たとして、外に出て寝転ぶのにふさわしい場所がない。



d0053294_0432779.jpg近所の人や道行く人がびっくりするだろう。昔はそんなことはなかった。大人がよく床几を出して涼んでいて、そこに交えてもらって話をよく聞いた。今でもそんなことをしている人はいると思うが、人が人を避けるようになり、家にこもってクーラーで涼むことの方が多くなった。夜は特にあちこちからその室外機の音が聞こえて来る。それも風流と聞き流して、床几に寝転んで空を見上げて涼みたい。そうそう、ムーギョからの買い物帰りはいつもだいたい午後8時半頃になるが、わが家から200メートルほど離れたところでよく老婦人が涼んでいるのを見かける。その人が日常使っている手押し車のその小さな荷台に腰をかけ、道行く人を見つめている。団扇で煽いでいることも多い。ある日、雨が急に降って来て、傘を持っていない筆者は家路を急いだ。すると、暗闇の中でいつものその婦人が傘を差さずに荷台に座ったままであった。足腰が弱いのだろう。その人の家はおそらくその場所から20メートルといった短い距離のはずだが、傘を取りに帰るのが億劫なのか、あるいは家の人が迎えに来るのを待っていたのだろう。「雨がひどいですから、濡れますよ」などと声をかけてもよかったが、その辺りは街灯がなく、ほとんど真っ暗だ。そこに半ば下着姿のような小柄な老婦人がこちらを向いて座っている。相手はこっちを怪しい男と思うであろうし、こっちはそう思われたくないので、なるべく早足で通り過ぎる。もう10回ほどは同じ場所にいる同じようにしている姿を見たが、暗いので顔はよくわからない。その人にすれば暑苦しい家の中より、涼しい外の方がよいという考えで、また昔のように床几を出す場所がなく、愛用の手押し車を使うのだろう。その姿を見ると、筆者が家の前に床几を置いて寝転ぶのはさほど気にすることでもないかもしれない。その時の姿はステテコに半袖シャツの下着姿 で、腹が冷えないように腹巻もするか。植木等がそんな格好をよくしていた。夏場の筆者も家の中ではそうだ。また、そんな姿で寝転んでいる時に来客がある。慌ててズボンを履いて外に出ると、自治会の若い母親であったりする。上は下着姿なので、そのことを詫びるが、彼女にすれば父親世代であるからそれほど気にしていないだろう。ま、そんな姿も夜になれば目立たないから、外に出した床几で寝転ぶにはよい。人目を気にせずに済むには裏庭に出る方法があるが、蚊の大群の襲来は蚊取り線香では間に合わず、真夏の満月を待ちわびる心境にはなれないだろう。
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 今夜は月が上がった頃に二度外に出た。最初は8時半頃、次は11時で、8時半の方が雲は少なかった。もう少しで満月が見えそうなのに、風が弱く、雲は一向に移動しない。10分ほど待って諦めた。そして今度は11時に出たが、これを書く3階の温度計は33度まで上っているので、外はどうかとも思ったのだ。風があって涼しかった。それで床几を出して寝転びたいと思った。残念ながら、雲は少なくなるどころか、全空を覆っていた。厚みも増したようで、ぼんやり光っている場所も確認出来ない。どの辺りに上っているかは知っている。深夜2時や3時になると、筆者の寝室の窓から見える。なので、その頃まで待ってみる。それでも満月の写真が得られないならば、昨夜撮っておいたもので間に合わせる。昨夜も変な天気であった。雨が降り、曇天でしかも大きな青空も見えた。夜にはどっちに転ぶかと思っていると、早く流れる雲の隙間から満月が少しの間だけ見えた。家から徒歩100歩ほどのところで数分待ってその光景に出会い、写真を撮った。それはあくまでも予備で、満月の本番は今夜だ。床几に寝転びならが満月を待つとして、筆者はその間に何を考えるか。これを書きながら、そのことを先ほどから考え続けている。満月を待ちながら考えることは思い出の人だ。それは内山田洋とクールファイブの「あきらめワルツ」の歌詞のようなものではない。あの人は今頃どうしているか。それは考えても仕方のないことだ。どうにもならないことを思っても埒が明かない。それでも思い出はあるから、時にそれが強く思い出されるが、元気でいる姿を想像して次にそのイメージを意識してかき消す。そのようにして少しずつ歳を重ね、いつかムーギョからの帰りに見かける老女のように、暗がりの中で道行く人をぼんやり眺めながら涼むこともあるだろう。このように、さまざまなイメージが湧いては消え、また重なっては時に特定のものが鮮明に見える。それはどれも毎夜の月のように穏やかだ。あるいはそのように思い出すべきで、そのように努めたい。今、日づけが変わった。1時間くらいでは晴れないかと気になって、ベランダに出た。すると朧ながら満月が見えた。今月もどうにかその写真を掲げることが出来る。2枚目の写真は昨夜のもの。『蚊を叩き笑み偲ばせる月を待つ』
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by uuuzen | 2013-07-23 23:59 | ●新・嵐山だより(特別編) | Comments(0)


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