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●『秘密』
者な役者ばかりだが、特に悪役のハ・ジウォンが他の3人を食っていた。このドラマは2000年の製作で当時彼女は21か2であった。筆者は『バリでの出来事』で初めてその演技を見たが、その前年に『チェオクの剣』を撮っている。



これは彼女らしい作品のようだが見ていない。彼女らしいというのは、まずキム・ハヌルには無理であるからだ。彼女はハ・ジウォンと同年生まれで、4か月ほどお姉さんだ。ところが数歳年長に見える。そのためか、このドラマでもハ・ジウォンの姉を演じた。清楚な雰囲気で男性が妻にしたいタイプだと思うが、このドラマでもふたりの男から言い寄られ、一方妹のハ・ジウォンはそのふたりの男を追いかけるがどちらからもさっぱり相手にされない。それは一見して性格が悪そうで、実際姉を騙してとんでもない態度に出る。そういう悪女役は誰でも出来るものではない。キム・ハヌルではまず無理だ。そのため、女優としてはハ・ジウォンの方が評価され、成長した。キム・ハヌルの作品はこの『秘密』の翌年に『ピアノ』を撮り、それ以降の作品を知らない。最近『紳士の品格』という新作ドラマの第1回のみ見たが、あまり感心しなかった。彼女の持ち味とは違う役柄で、どことなく痛々しいものを感じた。汚れ役でも平気なハ・ジウォンは老いてもどんな役でも出来そうで、その端緒になったのが『秘密』ではないかという気がする。12年前のドラマを今頃また放送するのは、たぶん放映権がとても安いのにかつて高視聴率を取ったからだろう。全19話を家内と欠かさず見た。いかにも古いと思わせられたが、それがよい。素朴な作りはかえってストレートに楽しめる。そのために韓国での最高視聴率が30数パーセントも記録したのだろう。その視聴率を稼いだのはハ・ジウォンの演技が一番の理由であろう。彼女が毎回見せる憎らしい態度や顔つきは視聴者を大いに憤慨させる。いつ彼女の真っ赤な嘘がばれて本当の泣き顔を見せるのかと、そればかりを期待しながら次を見るというありさまで、案の定彼女は最終回に近づくにつれてボロを曝け出すが、最終回までハラハラさせるために脚本は最終回の前半まで彼女の嘘が暴かれないように仕組んである。遅かれ早かれ悪は滅びるとするのが韓国ドラマの筋立てであるから、悪女のハ・ジウォンの破滅はほとんど最初の段階で視聴者にはわかっている。つまり、安心して悪が滅び去るのを待てばよい。そういう前提があるので、ハ・ジウォンは演技しにくかったはずだが、それをはね返すほどに憎らしい表情を見せる。またそれをさらに効果的にしているのが、さびしげな表情のキム・ハヌルだ。このふたりの女優の差がこのドラマを面白くしている。
 ではふたりの男優はどうか。今では考えられないような豪華キャストの競演とされるが、それはこのドラマを初め、その後主役級の男女2名ずつが成長し、韓国の代表的俳優になったからだ。筆者が楽しく見たのはキム・ミンジョンだ。いつの頃から筆者は彼の演技に目を留めるようになった。『恋するハイエナ』ではかなり目立っていたし、『ATHENA-アテナ 戦争の女神』では北朝鮮の秘密諜報員としてのチンピラ役が実にうまかった。その演技を念頭に置いてこの『秘密』を見るとえらくおとなしいので驚くが、ドラマの中でハ・ジウォン相手にかつての自分を見ているようだと話す場面があり、暗い過去を持った影のある役柄であることがわかる。そのように屈折したところを感じさせるのがキム・ミンジョンの持ち味で、筆者はそこに惹かれる。もうひとりの男優はリュ・シウォンだ。彼については説明は不要だろう。よい家柄の出で、その実際とはあまりかけ離れた役柄は似合わない。このドラマではかなり太っていて、どことなく鈍そうな印象があったが、キム・ミンジョンと殴り合いの喧嘩を二、三度する。その時のキム・ミンジョンの予想以上の迫力は、先に書いた暗い過去とはよく辻褄が合っていて、寡黙な役柄ながら、演技に深みがある。またリュ・シォンは大学生であったのに、洋服店を経営する母が亡くなり、急きょ留学先から帰国して店を立て直そうとする。そこからこのドラマは始まる。韓国ドラマは必ず特定の業種が舞台になるが、このドラマはアパレルだ。その頂点は有名なデザイナーズ・ブランドで、底辺にはソウルの南大門の露店や雑居ビルの片隅の小さな店だ。キム・ミンジョンは有名デザイナーの女性ユン・ミョンエが経営する会社で、その社長の片腕となって働いているチョ・ヨンミンを演じる。この女社長ユン・ミョンエはイ・フィヒャンが演じる。彼女しかこの役は似合わないだろう。ミョンエは野心家で、自分の才能が世界でどこまで通用するかを確認いたいために、かつての夫のもとを去った。夫はそれなりの洋服店を経営していたが、妻が子ども生みながら、その子を捨てて渡米したことを恨み、その子に孤児であると言って育てた。その子がキム・ハヌル演じるイ・ヒジョンだ。彼女がおとなしく、またどこか幸福が薄そうなのは、孤児として父に育てられ、遠慮があったからだ。またそういう育ちであるから大学には通えず、働きながら服飾の勉強をしている。その点は父や母に似たということだ。ヒジョンにはコーディネーターをしている妹イ・ジウンがいる。それをハ・ジウォンが演じる。彼女の母はミョンエではなく、ミョンエが去った後に父が再婚した女性だ。彼女はドラマには顔を出さない。最初の妻が去ってから荒れた父は二番目の妻に暴力を振るい。彼女はジウンを残して死んでしまった。そのことをジウンは知らないが、後に知る。姉妹ふたりは仲よく生活しているのに、その歯車が狂い始める。それはミョンエが帰国して有名になり、雑誌に登場するようになったからで、その雑誌を姉妹の父は買って来はするものの、かつて自分を捨て、子を捨てた女であるという憎しみが消えるはずがなく、部屋に投げ捨てる。
 リュ・シウォンはキム・ジュノという名前で登場する。彼は母の店を経営する過程でヒジョンと出会う。小さな店で、デザインを縫製会社に送って商品を作り、それを店に並べて売る。この店がミョンエの会社と関係して行くことでドラマが進展する。天地の開きがあるのに、どうして双方が関係して行くかだが、それは双方の人間に出会いがあるからだ。その最初の突破口をジウンが演じる。最初の回からジウンは姉とは違って積極的で調子のいい性格を見せる。彼女は父が投げ捨てておいた雑誌にミョンエの記事を見つける。そこには何と自分の父がかつて経営していた洋服店でミョンエが働いていたことが書かれていた。そのことを知ってジウンは図々しくも、彼女のデザインした洋服を扱いたいと考え、ミョンエに会いに行く。ところがヨンミンに冷たく追い帰される。ジウンは姉が先に出会ったジュノに出会ってたちまち自分のものにしたくなって画策をしてデートに漕ぎつけるが、そんな策略をジュノは知らずにジウンとの約束を破ってしまう。最初の回で以上まで進む。その後大きな展開はジウンがミョンエに会った時、ちょっとした言葉の行き違いからミョンエはジウンを自分が生んだ子と勘違いする。通常ならばそこでジウンは自分ではなく、姉がそうだと言うはずだが、貧乏暮らしから脱出出来るチャンス到来とばかり、黙り込む。その嘘がばれる機会がその後何度もやって来るが、そのたびにジウンは機転を利かせて切る抜ける。そのことがこのドラマの見どころで、いつジウンの秘密がみんなの知るところになるかと毎回ドラマを楽しみにするようになる。姉になり代わるのであるから、常識的に考えてあまりにも無理があるが、父はヒジョンを孤児として育て、ミョンエに面会してからもヒジョンが彼女の実の娘であることを告白しない。それほどに恨みが強いのだが。ヒジョンの立場になれば父の行為はあまりにも残酷で、自分がミョンエの娘であるとわかってもすんなりと喜べない。それは最終回で描かれるが、父の秘密をようやく知ってからの彼女の態度は、それまでの冷静さを保ちながらも迫真的な演技もあって、現実的な行動として納得させる。つまり、全体に抑えた演技ながら、キム・ハヌルもなかなか達者なところを見せる。
 このドラマの非現実的と思える部分はミョンエが呆気なく死んでしまうことだ。その死の病があればこそ、ジウンが実の娘ではないことがわかるが、それは脚本の甘さではないだろうか。ミョンエが急性白血病にならずにそのまま元気でいれば、相変わらずジウンが娘であることを通し、ヒジョンは貧しいまま、またヨンミンと結ばれることもないはずだ。おそらく現実としてはそっちの可能性が大きい。自分の娘を孤児と偽って育てる親がいるかどうかだが、このドラマの中ではそれは充分説得力を持っている。かつて自分は人を雇ってそれなりに洋服店を切り盛りしていた。それが妻が野望を抱き、生まれたばかりの娘を捨てて旅立ったのであるから、妻を許せないのはあたりまえだ。それに自分の洋服店は潰れ、今は長距離トラックの運転手をしている。これは現実的だろう。アパレル関係は栄枯盛衰がはなはだしい。流行遅れの感覚になれば、商売代えは珍しくない。ヒジョンの父はそういういわば負け犬で、かつての妻が成功し、今は世界的に有名なデザイナーになっていれば、口が裂けても彼女の実の娘がヒジョンであるとは言いたくないだろう。だが、人間であればそのことに罪悪感がある。その罰と言うわけではないが、父は病に倒れて口が利けず、手足が不自由になってしまう。そうなれば事態はますますジウンには好つごうに働く。そこがジウンの恐さだが、妹がどんどん変化して暴言を吐くようになって行くことがヒジョンには理解出来ない。そこには何か大きな秘密があるはずと気づいて行動を起こすべきなのだが、純真過ぎるヒジョンはジウンの悪事を疑わない。そこがドラマを見ていてあまりにもどかしく、ヒジョンのような女性がいるはずがないと思ってしまう。だが、虎児であった過去からそのような控えめな性質は説明出来るだろう。話を戻して、ミョンエが病に伏してから物語は急展開するのは、全19話では仕方がないかもしれない。ジウンの悪事をいつまで引き延ばすわけには行かず、いいかげんなところで視聴者のジウンに対する腹立ちを収めねばならない。そこであまりにつごうのよい、つまり安易な筋書きとなった。白血病であるからには骨髄移植、そして血液検査、そして遺伝子検査が行なわれる。そこでミョンエはジウンが自分の子ではないと知るが、それでもそれを責めない。ジウンもまた哀れな人生を送って来た。そのことを理解し、自分にはふたりの娘がいると思う。これはかつてヒジョンを捨てたことの罪悪感をなくすために大きな愛を奮い起こしたということだ。さんざん周囲を欺き、ついに悪事がばれたジウンは恥ずかしくてヒジョンや父、ヨンミンやジュノの前に姿を見せ続けることは出来ない。そこはさすがジウンも良心があったということで、自分を変えるためにひとりで旅立つという設定だ。だが、姉との間に入った亀裂は元には戻らないだろう。悪いことをすればそのようなバチが当たるということだ。教訓的な結末ではあるが、毎回ジウンの行為に立腹するところに醍醐味があって、このドラマ以上にそういう味わいを持つ作品はないのではないか。韓国ドラマの古典と言うべきで、途中で全くだれないのがよい。悪役をするとそのイメージによってその後ほかの役がしにくくなると思うが、ハ・ジウォンはこのドラマの役柄をすっかり脱皮してその後主役を演じている。そこに女優魂を見る。また彼女に似た女優は韓国には皆無だ。好き嫌いは別にして才能に溢れていると言わねばならない。
by uuuzen | 2012-12-29 23:59 | ●鑑賞した韓国ドラマ、映画
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