●『UNDERSTANDING AMERICA』その2
料理がいい寒い季節になって来た。肉や魚、どんな野菜でも放り込んで煮ればよいかと言えば、味つけは各人によってこだわりや好みがある。本作の三つ折りの副ジャケットの文章の最後にはこうある。



「Put some in your cauldron and please, don‘t forget to VOTE!(いくらかを大鍋の中に放り込んで、そしてどうか投票を忘れないように)」とあって、本作を鍋料理の素材のように表現している。これは大鍋を各人の思考にたとえてのことだが、すでにさまざまな音楽を聴いている人を想定していると考えてよく、また本作の各曲のどれかが美味しいと感じられることを期待しているようなところがある。だが、この後者は本作がベスト・アルバム的な部分が多く、曲の配置はさして重要でないことを意味しているように受け取られかねない。そうであるならば、ザッパが選曲した意味がない。昨夜の3枚目の写真に見えるが、CDケース裏面には「CONCEIVED,COMPOSED & PRODUCED BY FRANK ZAPPA」と大きな文字で記してあって、本作がザッパの「編集」ではなく、「考えられたもの」であることがわかる。これは正直だが、もう少し正直になってもらって、どこまでがザッパの選曲や曲配置であるかが明らかにされればよかった。だが、それをすると興醒めさせることになるという親切心があったのだろう。あるいはそれは売り上げに響くからだ。ただし、アルバムの題名の「アメリカを理解すること」はザッパの命名であるから、それにしたがえば他者が曲を多少選んで追加してもそう当たり外れはないだろう。昨夜書いたように大半はザッパが曲を選んで並べていたからだ。先の大鍋でたとえると、本作そのものがザッパの大鍋料理のようになっていて、しかも味はよく調えられている。そこが本作の存在価値で、素材はほとんどよく知っているものでありながら、別の素材が加わり、また新たな味つけによって今までに誰も味わったことのない鍋料理となっている。別の素材とはディスク2の11「PORN WARS DELUXE」で、これだけのために本作を買うファンが大半であろう。この曲は期待したのとはかなり形が違い、多少拍子抜けしたが、ザッパの頭の大鍋さ加減を垣間見るにはとてもいい曲で、しかも本作に含まれることで本作全体が特異な作として際立つ。それは、この曲そのものがひとつの鍋料理であり、その味が本作のさらなる大きな鍋の中で煮立っているからだ。二重の鍋料理となっているこの複雑さと面白さこそがザッパの頭の大鍋具合で、実にうまく調理されたアルバムと言ってよい。
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 ザッパのベスト・アルバムは初期の『MOTHERMANIA』以外では没後96年の『STRICTLY COMMERCIAL』、97年の『HAVE I OFFENDED SOMEONE?』がある。これに同じ97年の『STRICTLR GENTEEL』を加えてもいいが、これはロック系の曲以外をまとめたもので、ひとまず除外出来る。今月1日に書いたが、生前のザッパは3種のベスト・アルバムを想定していたそうで、本作はその第3弾と考えていいのかもしれない。『STRICTLY …』や『HAVE I OFFENDED…』はライコディスクが旧作の発売権を得た時、ザッパとの交渉で実現したアルバムに思えるが、ユニヴァーサル・ミュージックからも発売されるのだろうか。『HAVE I OFFENDED…』はアマゾンが下旬に発売するようだが、『STRICTLY …』は今のところわからない。それはさておき、本作をライコディスクが発売しなかったのはなぜか。契約では上記2作でよかったからかもしれず、また本作はザッパが完全な形、つまり今回発売されるような形ではまとめていなかったからであろう。となると、ザッパがまとめた形は上記2作よりも面白味が少ないと判断されたことも考えられる。その欠点を補うことがようやく10年経った2008年になされた。昨夜書いたように、本作はボブ・ラドウィッグ(Bob Ludwig)のマスタリングで、ユニヴァーサル盤の大半は彼が新たにマスタリングを行なった。この「大半」というのが謎で、なぜ全アルバムを同一人物に依頼しなかったのだろう。また、ライコディスク時代のまま再発されたアルバムもある。生前のアルバムがこのようにさまざまな音質の混合であることは、本作のようなベスト・アルバムを構成する際のひとつの問題を生じさせる。それを知ってか、本作はボブが手がけた新たな音による曲のみが収録されている。たとえば『UNCLE MEAT』はライコディスク時代の音のままでユニヴァーサル盤は発売されたが、本作は同アルバムの曲を含まない。このボブの手がけた新たな音の曲ばかりを切れ目なしに収録する本作は、全体に圧倒的な音の厚みの点で統一感がある。つまり、再発となったユニヴァーサル盤のその新たな部分のサンプル盤としての機能を担っている。これこそがライコディスク時代とは違って、ザッパの遺族とユニヴァーサル・ミュージックとの双方が納得出来る新たな、そして自信を持ったベスト・アルバムである点だ。ザッパの遺族の納得とは当然ザッパの遺志を冒していないという絶対条件を守ることだ。それはアルバムの題名にしたがって数曲を追加し、またそれによって生じかねない各曲の音質の差を極力解消することで、この後者の実現のために10年かかった。ただし、曲はおおむね時代順に配置されるが、たとえばディスク1では10「You‘re Probaly Wondering Why I’m Here」と11「We‘re Turnig Again」の間があまりに年月が離れ過ぎる。11をもっと後に位置させてもよかったのではないだろうか。この点については歌詞の問題が関係しているかもしれない。本作はすべて歌詞つきの曲で、しかもフェイドアウトはなく、またギター・ソロもカットされて次の曲につながる。より多くの歌詞を聴かせるための処理で、ザッパの頭の大鍋具合を端的に知るには、本作の素材である各曲の歌詞をよく吟味すればよい。本作について明日も書く。
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by uuuzen | 2012-11-20 23:59 | ●新・嵐山だより(特別編) | Comments(0)


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