●『DWEEZIL ZAPPA F.O.H.』 その2
関前と言っていいのだろう。アルバム・タイトルの「F.O.H.」は「FRONT OF HOUSE」の略だ。なぜこんな題名にしたのか。



どこかでドゥイージルは書いているのかもしれないが、想像すると、この限定1000部の新譜は通販でしか買えず、商品が直接家の前まで届くからではないか。ダウンロードすれば、それは「IN THE HOUSE」で、「I.T.H.」ということになるが、『F.O.H.』と同時に発売され始めたギター・アルバム『I.T.M.』は「IN THE MOMENT」の略だ。これは「即座に、ただちに」の意味で、ギター・ソロは次の音をどう奏でるか瞬時ごとに決めて行くことを意味していると捉えてもいいし、また注文があればすぐに発送しますと考えることも出来る。それはいいとして、ドゥイージルにとっては、歌がふんだんに入っている『F.O.H.』の方がより売れる、また自信作なのだろう。それは5ポンド高い値段を設定していることからも言えそうだ。また自身のサイトでは『F.O.H.』の各曲の一部を無料で聴かせるのに対し、『I.T.M.』は説明もほとんどない。それを筆者が『I.T.M.』を買おうと決めたのは、昨日書いたように、ギター・ソロを聴くのが好きで、ドゥイージルのそれは父フランクとはまた違った味を出していると思うからだ。『F.O.H.』は2枚のディスクとも3回ほど聴いた。そこにはギター・ソロも含まれていて、それが『I.T.M.』の内容を彷彿とさせる。そのギター・ソロの全部が手放しで素晴らしいとは言わない。ある曲では、単純なフレーズの繰り返しが耳障りで、父フランクの完璧主義には遠い印象がある。だが、その一事で全体を推し量るのは間違っている。それは一種の玉に傷であって、大半の演奏は父と聴き間違うほどの熱がこもっている。父の曲をステージでライヴ演奏する場合、ふたつの方法がある。父が発表した録音に忠実にしたがうことと、多少アレンジを加え、現代風にすることだ。前者に徹すると、そこには無理が生ずる。父はスタジオで多重録音をよくしたし、またライヴであってもスタジオでの録音を重ねた。おまけにメンバーを何度も大幅に変えた。それを全部同じ限られたメンバーがライヴ演奏として再現するとなると、父であっても不可能に近い。その難題にドゥイージルは挑戦しており、結果が完璧にはならないのはいわば当然だ。たとえて言えば、すっきりと仕上がったギリシア彫刻と、それをどこか歪に複製したローマ時代の二流品といった差がそこにはある。つまり、完璧な球体が、あちこち微妙に凹んだり飛び出したりしてでこぼこしている。だが、それはそれを眺める面白さがある。また、そのデコボコ感をつぶさに吟味する楽しさは、いかにフランク・ザッパの仕事が空前絶後のものであったかを再確認することとセットになっている。もちろんそのことを最初から息子はよく自覚しながら、ZAPPA PLAYS ZAPPAというバンドを結成し、父の音楽をライヴで世界中に伝えることを決心した。そこが偉い。恥をかいて当然なところを、あえて挑戦する。その素直でしかも勇気に喝采を送りたい。また、『F.O.H.』には確かにデコボコ感はあるが、全体としては父の音楽をこれ以上にうまくコピー出来る才能はなく、またコピーの方法に興味深い点が多々ある。
d0053294_13423866.jpg

 それは、忠実にコピーしようとしても、図らずも出てしまう不可能な状態と、先に書いたように、積極的なアレンジで、このふたつは分ち難く結びついている。だが、積極的なアレンジはかなり少ない。それが最も多いのはドゥイージルのギター・ソロだ。これを当初から想像していただけに、筆者は『I.T.M.』を注文した。それは父の曲を演奏する際に必然的に付随するパートでありながら、コピーするのは各音符ではなく、気迫だ。技術的な課題はもちろんあるが、まずは内面に保持する気迫が父に負けていれば、最初から勝負は決まっている。こうして書いていて、今ディスク2の「EASY MEAT」のギター・ソロが鳴り響いている。途中にあるシーラ・ゴンザレスのサックスのソロといった、父の録音にはない工夫があるのはよいとして、それ以外の肝心のドゥイージルのソロは、贅沢を言えば最後が多少尻切れトンボ気味で感興を削ぐ。また、このギター・ソロは前後に分かれて、その中間にサックス・ソロが入るが、最初のソロが始まる前に、「ホイ!」という掛け声がある。この声は初のザッパのギター・アルバム『SHUT UP‘N PLAY YER GUITAR』に収録される「VARIATIONS ON THE CARLOS SANTANA SECRET CHORD PROGRESSION」と同じもので、ドゥイージルは「VARIATIONS ON THE CARLOS ……」のソロを含む元の「EASY MEAT」のマスター・テープを聴いてツアーに臨んでいることが想像される。もちろんザッパは「VARIATIONS ON THE CARLOS ……」を含むその元の「EASY MEAT」全体をアルバムに発表したことはないから、『F.O.H.』の「EASY MEAT」はそうした隠れた演奏を想像させる楽しみを含んでいて、それはドゥイージルの戦略だろう。このあたりの微妙なことは、ザッパの全アルバムをよく知っている人には即座にわかるし、またとても面白い。ドゥイージルがそのような父の大ファンが知るような微細な事柄を全部よく知り、またそうした人々を満足させるように努力していることは『F.O.H.』から痛いほどにわかる。
d0053294_1343894.jpg

 そうした細部の構成の巧みさは、カル・シェンケルが描くジャケットにもよく表われている。カルはドゥイージルから連絡があってこの仕事を引き受けた際、かつて60年代にザッパと組んでやった仕事をどのように思い出したであろう。半世紀も前の仕事のその延長が、まさか息子のアルバムで実現するとは思いもよらなかったはずで、人間長生きすると、予想外の面白いことに出会うものだと感じ入ったのではないか。昨日写真を載せたように、『F.O.H.』は再発売の『DOES HUMORS BELONG IN MUSIC?』のCDジャケットの「息子版」となっているが、中身はザッパの再出発となったBARKING PUMPKIN RECORDS最初のアルバムとなった『TINSELLTOWN REBELIION』の漫画版だ。さて、筆者はここ2,3週間、毎日大音量で『DOES HUMORS BELONG……』に収録される「LET‘S MOVE TO CLEVELAND」と、その次に切れ目なしに始まる最後の曲「WIPPIN’ POST」を聴くが、その「WIPPIN’ POST」の中間部のギター・ソロは父とドゥイージルの共演で、1986年の『DOES HUMORS BELONG……』はいわば父は息子を世に出し、後継者の自覚を植えつけたアルバムであった。一方、筆者は春になると毎年『HOT RATS』の「SON OF MR.GREEN GENES」を聴くことを40年ほど続けているが、同アルバムは1969年、生まれたばかりのドゥイージルに捧げられた。そのことを知るドゥイージルは同アルバムを何度聴いたことか。その中で飛び切りの名作の「SON OF MR.GREEN GENES」が『F.O.H.』のディスク2の最後に入っていることを知ったのは、シュリンクを破ってすぐであった。収録曲を眺めて初めて『I.T.M.』ではないことを知ったが、最後に「SON OF MR.GREEN GENES」があることを見て、ほとんど飛び上がらんまでの気分になった。毎日聴いている『HOT RATS』収録のスタジオ録音が、息子のバンドのライヴ演奏で聴くことが出来る。そのことは、全く予想もしなかった贈り物で、今春もまた「SON OF MR.GREEN GENES」を聴き倒していたことは、何らかの予感があったためかとも思う始末だ。ともかく、ファントム・レコードに間違った商品が届いたとのメールを出しながら、『F.O.H.』は、それはそれで買うことにし、新たにまた『I.T.M.』を注文しようかと考えた。メールを出した後、真っ先に聴いた曲はもちろん「SON OF MR.GREEN GENES」であった。その感想については明日書くが、これもまた何というか、もどかしい体験でそのことに思い悩んでしばし何も手がつかなかった。
d0053294_13433196.jpg

[PR]
by uuuzen | 2012-04-26 13:43 | ●新・嵐山だより(特別編) | Comments(0)


●『DWEEZIL ZAPPA... >> << ●『DWEEZIL ZAPPA...
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31
以前の記事/カテゴリー/リンク
記事ランキング
画像一覧
ブログジャンル
ブログパーツ
最新のコメント
ご指摘どうもありがとうご..
by uuuzen at 12:22
Frank zappa ..
by ザッパ at 08:30
何年も前に書いた文章に感..
by uuuzen at 16:20
はじめまして。興味を引く..
by 文学座支持会元会員 at 11:15
最近あまりに多忙で録画は..
by uuuzen at 15:31
唐突に失礼いたします。ど..
by タイタン at 14:59
暴力事件は訴えても警察が..
by uuuzen at 15:11
地下鉄の件事件になります..
by ネイル at 19:07
上から目線で頭が悪い人
by 名無し at 08:13
上から目線で頭が悪い人
by 名無し at 08:13
最新のトラックバック
http://venus..
from http://venusha..
ファン
         ブログトップ
  UUUZEN ― FLOGGING BLOGGING GO-GOING  © Copyright 2017 Kohjitsu Ohyama. All Rights Reserved.