●波動スピーカー、その3
でる人はPLAYERで、この言葉はレコード盤を鳴らす機器に用いられている。スピーカーはSPEAKする人で、音楽が鳴り出る機器としては、本当はふさわしくない名称の気がするが、そういうことになっている。



これは、スピーカーが本来は拡声器として発明されたからであろう。そう思えばSPEAKERの名称に合点が行く。ところで、波動スピーカーを販売するエムズ・システムという会社は東京にあり、またこのスピーカーを聴かせてくれる場所も東京にある。それがくろ谷で演奏会を開くには理由がある。芦田さんによると、くろ谷には僧侶による声明が詠じられるが、その声や、また僧侶が御影堂で話す言葉を隅々にまで届かせるには、波動スピーカーが理想的らしい。御影堂は、ぎしぎしに詰め込めば1000人ほどが入ることの出来る木造建築で、昭和19年だったかに再建され、音の響きのよい建物として評価がある。そこでは今までにさまざまスピーカーを設置して来たが、どれも満足の行くものではなく、それが初めては堂スピーカーによって建物のどこにいても満遍なく聞こえるようになったらしい。今回の演奏会は、そういうこともあって実現したもので、今後エムズ・システムは京都の各寺に売り込んで行くようだ。このことは示唆的だ。19日の演奏会のことを書くと、中央に法然の肖像画をかけた大きな御堂の中で、このスピーカーはまるで供物のように、その肖像画の正面下に置かれていたが、それがとてもスピーカーとは思えず、色合いも形も溶け込んでいた。これが通常の箱型であればどうか。そこに音が鳴る機器がありますと自己主張し、仏のありがたさも減退して現実に引き戻されるのではないだろうか。昨日はこのスピーカーが日本的と書いたが、京都の寺院で歓迎を受けて使用されることはまさにそう言える。金戒光明寺では、このスピーカーを拡声器代わりに使用するが、声明の声や、また僧の講話などが、室内のあらゆる場所で、自然な音で同じように聞こえるというのは理想だ。通常のスピーカーでは音の指向性があるが、それは当然で、2個のスピーカーの中央前面に聞き手は座って音楽を楽しむというステレオの設計上、そうなっている。だが、昨日書いたように、それはあくまでも建前で、そのように音楽を聴いている人は少ないだろう。今はiPODが盛んで、イヤフォンでステレオ録音をひとり占めして簡便に聴く人が多いが、それは耳だけの楽しみで、体感ということにはほど遠い。実際の演奏がそのように耳だけに届くはずがないからだ。耳で聞くのは確かでも、その耳は体、頭にくっついている。つまり、全身で聴くというのが本当の楽しみ方であって、それにはそれにふさわしいスピーカーを用いる必要がある。完璧なステレオ状態の音楽を聞くことが可能としても、それが理想であって、普段はたいていそれがいささかずれた形で音楽を楽しみ、しかもそのことにほとんど違和感を感じないのは、写真を見てそれが実物とほとんど同じと思えることに似ている。写真はひとつ目のカメラが見た映像であって、人間のようにふたつの目で見たものではない。にもかかわらず、写真に違和感を覚えないのは、人間がかなり曖昧、融通無碍に出来ているからだ。そう思えば、完璧なステレオを聴くことにこだわる必要を思わないのではないか。
 とはいえ、ステレオ具合がでたらめでいいと言うのではない。ちゃんとステレオに分離し、しかも各楽器の位置もわかるのでなければ、ステレオ・スピーカーの意味はない。そのことが波動スピーカーではどうかと言えば、当然ステレオの左右チャンネルに相当するスピーカーを用意したものであるから、音の立体感はある。ただし、スピーカーが聞き手の前に向かっているのではなく、通常の設置とは90度外向きであるから、音が直接耳に飛び込んで来ないとまず予想される。ところがそういう違和感は全くない。昨日書いたように、このスピーカーはもはや楽器とあるが、それはアコースティックなヴァイオリンやチェロを念頭に置いた言葉だ。そうした楽器は共鳴体としての箱を持っている。波動スピーカーは、背中合わせに2個のスピーカーを筒の中に収めたもので、その筒がアコースティックな楽器の共鳴体の役割を果たすのだろう。話は変わる。Rさんからこのスピーカーのことを聞いて、すぐにネット・オークションで調べると、1点出品があった。98000円ほどのタイプが、6万円強で落札された。中古にしては落札価格が高い。それはこのスピーカーがあまり中古市場に出ないことを意味するだろう。もっとも、スピーカーというのは、CDデッキのように壊れやすいものではなく、置いたまま動かない限り、数十年は持つ。また、このスピーカーの売れ行きがまだ芳しくないので、中古市場に出る割合が少ないとも言えるかもしれないが、買った人が気に入って手放さないのかもしれない。それはいいとして、中古で6万円強の価格というのは、このスピーカーが高価であることを暗に示し、もう少し安価で販売されればと思わないでもない。というのは、使用しているスピーカーはおそらく1個数千円から1万円までで、それを2個使って独自の筒状の物に作る手間が価格の大半を占めている。それは、それだけ商品に自信があることと、また機械で量産出来ず、手作りする部分が多いからだろう。何が一番高くつくかと言えば、人間の手作業だ。その意味で、このスピーカーの価格はまずは妥当なものだろう。今日は試しにネットで手作りのスピーカーについて調べた。すると、スピーカーとそれを収める躯体がキットになって売られているものがある。その形が独特で、オブジェとして部屋に置きたい感じがあるのはいいが、通常のステレオ・スピーカーのように左右同じものを2個並べる。しかも価格が1個数万円する。自分で作る手間を楽しむというのはいいが、半完成品でそれだけするのであれば、波動スピーカーは安い。また、そのスピーカー・キットは、購入した人の評価はよくない。スピーカーを包む躯体は合板だが、それがいかにも工業製品の印象が強く、それなら最初から完成した箱型スピーカーを買う方がいいように思う。
 さて、波動スピーカーをネット・オークションで調べると、箱型の変わったものがいくつか売られている。寺垣スピーカーと言うが、これはエムズ・システムの波動スピーカーとは思想が根本的に違うもので、コーン紙を使わず、波型の板で音を増幅する。音は振動ではなく波動という考えから創造されたものだが、波動スピーカーの名前はエムズ・システムが先に使っていたため、寺垣とうそのスピーカーを発明した人の名前がつけられた。このスピーカーはアナログ録音盤を鳴らすのによいようで、デジタルの音に慣れた人は物足りないという評価をブログに書いている。ついでに書くと、ネット・オークションではエムズ・システムの波動スピーカーと同じ筒型を作って販売している人がある。価格は2万円ほどで、エムズ・システムの5分の1ほどだが、原価はその程度なのかもしれない。その出品者はエムズ・システムの波動スピーカーを参考に自作を始めたのだろうが、画像で見る限り、デザインはエムズ・システムにはるかに及ばない。手作り感があっていいという人はあろうが、どうも高級感にはほど遠い。それは音質とは関係ないと言う人があろうが、何度も書くように外観の威力は侮れない。また、エムズ・システムの波動スピーカーを模して作ったとして、音質が優れるためにはかなりの研究年月と資金も必要ではないだろうか。そう思う一方で、エムズ・システムはこのスピーカーをどのように開発したかが気になる。誰か最初に試作品を作り、それを試行錯誤しながら改良を重ねて商品に仕立てたはずで、その過程で着想なり技術が外部に洩れ、それがたとえばネット・オークションに出品する自作者のような人物ではあり得るだろう。それはともかく、オーディオにそうとう詳しい人が開発に深く関与したのは間違いのないところで、そこには企業秘密が当然あろう。その秘密の部分が、音の差となって現われているはずで、単純に手持ちの2個の箱型スピーカーを背中合わせに置いて聴けば、同じ音質が得られるというものではないはずだ。やはり筒型の構造に楽器の共鳴体と同じような効果があるのだろう。筆者は部屋の端に2個のスピーカーを1メートル半ほど離して置き、部屋のもうひとつの端、つまりスピーカーからはおよそ6メートル離れた位置で、しかもスピーカーに面してではなく、90度向きで聴いている。そのようにして聴くと、入って来る音は右耳がより大きい。それが気持ち悪いと言えばそうだが、スピーカーにまともに面すると、階下の音が聞こえなくなる。それが不安でもあって、いわば仕方なしにそういう位置関係で聴いているが、たまにスピーカーにまともに対峙して、ザッパのライヴ録音を楽しむ。ザッパのライヴ・ステージはそのように、観客の前から音が飛び出ていたはずで、その意味から2個のスピーカーを並べてその前に座って聴く態度は正しい。だが、音楽はそんな場合のみとは限らない。ホールの中央にオーケストラが陣取り、ぐるりと周囲の観客に聴かせるという形もあるし、またロックのライヴ演奏にしても、ホール内で音が反響して、自宅の部屋のスピーカーの前で聴くのとはかなり聞こえ方が違うと感じることもある。こうなれば、箱型の指向性スピーカーで聴くことのみが正しいとは言えない。むしろ指向性のない方が音楽に体ごと包まれていいとも言えるのではないか。ああ、また長くなりそうなので、予定をさらに延長して演奏会のことは明日に回す。明日は早朝に起きて出かけねばならないことも理由だ。
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by uuuzen | 2011-11-23 23:59 | ●新・嵐山だより | Comments(0)


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