●嵐山駅前の変化、その131(駅舎から広場、脇道から広場)
臭の話があった。一昨日、家内の父親の命日の読経後に上人がした。上人というのは、去年そのような格に任命されたからで、50歳は珍しいようであった。この僧侶は25年前から知っている。



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とても話好きで、奈良の遠方から車で高槻の家内の実家まで毎月やって来る。読経後の話は、御巣鷹山の日本航空機事故の話題から始まったが、すぐに周囲の者が横槍を入れたので、その話題から遠ざかった。ひとしきり話が交わされた後、横槍の話題が途切れたので、筆者は上人になぜ御巣鷹山なのか質問した。すると、その事故で檀家さんが亡くなり、その縁で上人は何度も事故のあった今頃の季節になると、御巣鷹山の事故現場に登っているとのことであった。あまり詳しく書くとまずいが、興味深い話がそれから続いた。その話の関連で上人は思い出したのか、最近25歳で死んだある男性の葬儀の際、死体を冷やすドライアイスが少なく、また安物であったために、死臭が部屋に漂っていたことを語った。昔はそういうことはごくあたりまえで、遺体の死臭がもっとひどい状態の部屋で読経後に会食が開かれ、なかなか食事がのどを通らなかったこともあったそうだ。そこで筆者が言ったのは、江戸時代などはもっとそうだったのでしょうかという素朴な質問で、当時のことはよくわからないが、死臭がひどくなる前に土葬したのではないかという話になった。それから話は奈良の十津川村は村民全員が神道であるので、死体の弔いの方法が古くから同じ方法に頼っているということにつながった。これに関しては上人は即座に、それは歴史が古いことではなく、明治の廃仏棄釈以降のことだと切り替えした。それまでに寺はあったが、あまり大きくなかったこともあって、廃仏棄釈の嵐が収まった後、寺は戻って来なかったそうだ。であるので、十津川村が大昔から神道のみを守った地域ではなく、日本のどこでも同じように、寺がまずあって、そこに神社がくっついていたような状態であった。それはいいとして、土葬は今でも行なっている地域があるのではないか。30年ほど前、染色工房に勤務していた時、滋賀守山出身の営業の男性がいた。その人が何度か語ってくれたのは、死体の土葬についてであった。また野焼きも行なったとも聞いた。その臭いが鼻に今でもこびりついていると言っていたが、昭和30年代に入る直前の田舎はそういうものであったのだろう。そうして死を日常的に実感していた。そういう死の断面が、ドライアイス不足の真夏にはふっと葬儀に際して死臭として感じられるということだが、筆者はまだその臭いを知らない。だが、動物は必ず死んで、状態によってはそういう臭いを発散する。先に書いた25歳の男性はひとり暮らしをしていて、死体の発見が数日遅れたらしい。そのため、葬儀の際にいくらドライアイスで冷やしても、腐敗臭を消すことが出来なかった。同じようなことは、孤独死が増え続けるであろう今後の日本では珍しくないに違いない。
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 筆者がよく行くスーパーから500メートルほど離れたところに、昨年小さな葬儀会館が出来た。その建設に地元は反対運動を繰り広げ、とっくに経営している今でもまだ大きな赤い文字を連ねた看板が近くにある。それはほとんど営業妨害に思えるが、本人は聖なる戦いをやっている思いなのだろう。このように、死を遠ざけたい思いは、忌まわしいものを日常的に見たくないという心理から理解出来ないことはないが、法律で認められているのであれば何の問題もない。どのような商売をしようが、それは勝手であり、商売の好き嫌いを言い始めると、小さなコンビニが建つだけでも大きな反対運動が起こってしかるべきと思うが、そういう話は聞かない。さきほどTVで福島原発事故に関して評論家が語っていたことの中に、日本人は果実だけをほしがって、痛み分けをする精神が戦後は減少したというのがあった。同じようなことは誰でも思い当たるはずだが、街中の葬儀会館の問題も同じ根を持っている。誰でも一度は死ぬのであるから、近くに便利な葬儀会館があれば、それは役に立つ。それを反対するのは、どこか別の場所に持って行けという考えからで、よその場所に建てようとすると、またそこの人がよその場所へと言い、結局しわ寄せは辺鄙な場所ということになる。原発が福島の田舎に出来たことと全く同じだ。いやなものはよそに押しつけるという考えが戦後は明確に人々の意識の中に定着し、それを唱えることが正義となった。これは日本の職業でも言えるだろう。今でも革や肉を扱う職業は被差別部落の出身者などと色眼鏡で見る人は京都では少なくないし、そういう意識の根底には、江戸時代やもっと以前から脈々と伝わる賎民蔑視がある。この問題は天皇を頂点に置く、為政者による社会的地位の階層化に端を発していて、天皇性がある限りはなくならないが、それがなくなればなくなったで、人間という最も醜い動物はまた別の差別のネタを作り上げるに決まっている。以前TVの番組で、若い女優がドイツの田舎に滞在して、豚を殺してハムやソーセージを作る仕事に参加したことがある。豚を殺して、肉をさばき、腸にミンチ肉を詰める一連の作業は、日本では先に書いたように被差別部落の人が専門に携わる残酷な仕事とみなす向きが大勢を占めているであろうが、今ではスーパーで売られる肉や魚はプラスティックのトレイに入ったもので、生の魚一匹を買って来て包丁でさばくことの出来ない若い母親は多いのではないか。そして、子ども寿司のネタがそのようにして作られることを知らない。国が変われば全く事情は違い、ドイツの田舎では家畜の屠殺はごくあたりまえにどの家庭でも行なう。それは慣れない者の目からすれば残酷だが、豚のあらゆる部位を粗末に扱わず、きれいに食べ尽くすという行為は、日本の鯨漁と同じで、他の生き物の命をもらって人間が生きて行くことの現実と、またそのために犠牲になる動物への感謝もある。だが、その意識を現代は見失う傾向にある。そのために平気で食料を捨てるが、一方では自分がいやなものは日常的に見たくないということで、葬儀会館には反対を唱える。そうなると、死臭の漂う部屋で会食など、全く論外で、人間は死臭を発するものという考えすらも否定する。だが、そんなに潔癖を重んずる人でも死ねばその瞬間から腐敗して、辺りに死臭を撒き散らす。
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 先日のネット・ニュースで、いわきから避難したパン職人が東京で働いているが、客からいわきの職人が焼くものはいらないと言われたらしい。これも穢れを遠ざけようとする日本の神道の考えからすれば当然と言えるのかもしれないが、その穢れは本人のせいでは全くないし、また実際にその人の作るパンが放射能によって穢れているかどうかは、小学生でもわかる。にもかかわらず、そのような心のない言葉を発するところが日本人にはある。話はやや違うかも知れないが、筆者が小学生の頃、学校で習字のうまい児童を各クラスから1名ずつ選抜して、コンクールに出品する課題の文字を教室で書かされた。筆者より2,3年下の女子が筆者の近くにいて、その子は左手で筆を握っていた。それを見た50代の男性教師は、筆者も驚くような蔑視の言葉をみんなに聞こえるように発した。その先生には直接教わったことはないが、いかにも戦前派といった硬派な印象で、そのこわおもてにはどうにも馴染めなったが、筆者の予想どおり、心のない言葉を平気で発する差別主義者であったのだ。その蔑視の言葉を浴びせられた女子は半泣きになっていたが、道徳教育がまだ充分行なわれていた昭和30年代前半でも、先生自身が暴言をそうとも思わない鈍感な体質があった。話を戻して、福島のパン職人の作ったパンを買わないという意識は、自分の地元に葬儀会館を建てるなというのと根は同じ問題だ。痛み分けをするという精神がない。これには、人間の死臭をかぎたくても今はかげないような、穢れを徹底して嫌悪し、隔離する意識が広まったせいでもある。そして、その穢れを生きている者に対しても平気でぶつける伝統が日本にはある。いわれのない穢れであるのに、そうみなすことは、それだけ日本人はお上意識が強く、その一方で賎民蔑視が根強いからだ。上にはペコペコ、下には横柄で、こういう連中はどの世界でも見るこが出来る。それが学のないような連中のことであれば、内心せせら笑って相手にすることもないが、権威や権力を持つ者の中にもいることが始末に悪い。だが、そういう連中も老人臭を発し、それに続いて死臭を漂わせるのであるから、人間は平等か。穢れたものの中に臭いものは当然入り、そうなると老人は含まれるから、これからの日本はますます穢れの国と若者からはみなされる。植物をよく写生する筆者は、花に混じって蕾を見るのが好きだが、必ずそこには枯れた茶色のしわくちゃになった花が混じる様子を見る。それが現実であり、真実だが、写生でもそういう花も含めて描く人は変人とみなされる。美しく咲く花だけが花の名に値するのであって、枯れたものはもう用がない。人間で言えば、10代と20代だけが花であり、それ以降はみな枯れが目立ち、用済みという考えを持っている。今日の写真は去年10月18日のもの。
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by uuuzen | 2011-08-07 13:20 | ●駅前の変化 | Comments(0)


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