離れてたのがくっつけられましたね。
そうでんな。
いよいよ工事が本格化し始めたようやしね。
邪魔になったというわけや。
いや、わたしは前から桜の木の下で、邪魔なんはあなただけです。
せやけど、そのうちお互い邪魔物扱いでっせ。
そりゃわからへんけど、心配やね。
撤去されるかどうか?
そう。ここから追い出されたら、どうなるんやろか。
そらもう終わり名古屋や。
ゴミ?
ま、そうや。
そんなアホな。まだわたしら使い物になりますよ。
そうは言うても、新しい駅前に不似合いや。
わたしらみたいな古株好きもいると思うんやけど。
そうやろな。見てみ、今写真撮られてるで。
ああ、あの物好きマニマンや。
駅前の変化を記録してるようやな。
わたしらが消えても記録に残るんやろか。
そんなんどうでもええやんか。
それにしても隣り同士は何か新鮮な気分やね。
桜の木の下でムード満点やしな。
せやけど、桜の木の下には死体があるとか言うね。
ほな、わしらはもう死体同然かいな。
そう覚悟した方がええかも。
それにしても木陰はええな。
そやろ。あなたはずっと炎天下やったさかいに。
木陰にいると、ごろんと横になりたなるな。
なってもええよ。
あんたの上に寝そべってもええか。
あのね、そんな恥ずかしい姿、観光客に見せられへんよ。
もうすぐ最期のようやから、ええやろ?
セクハラですよ。そんなん言うたら。
かまへんがな。枯れ木同士で。もう遠慮することあらへん。
「おい、ここの床几、積み重ねとけ。後で撤去するし。」
「はい監督、夕方に産廃のトラックが来ます。」