●街中のさびしい桜
岩釉の白い茶碗は新収蔵品なのか、ルーシー・リーの作品があることに気づいた。大山崎山荘美術館の企画展『山荘美学』でさわひらきの最大の画面作品を見終えた後、ふと目をそらして時のことだ。



同館は正式には頭に「アサヒビール」がつくが、さすが大企業の力と言うべきで、若い世代に人気のある作品をさりげなく置いている。昨日はこのルーシー・リーの作品が展示されていることを触れるつもりであったのが、すっかり忘れてしまった。それが今日思い出したのは、2月13日に大阪の東洋陶磁美術館に彼女の展覧会を見に行ったことを思い浮かべながら、その当日撮影した写真の中に、没にするには惜しいものが何枚かあって、今日はようやくそれについて書く気になったからだ。今しがたのNHKニュースでは東京で桜の開花が認められたと言っていた。例年より6日遅いそうだ。地震の被災地はストーヴがないと生活出来ない寒さというので、桜が咲くのはまだ1か月ほど経ってからと思えるが、それでも確実に季節は暖かくなる。今日は3枚の写真を掲げるが、その最初のものを撮りながら、ブログにどういう文脈や名目で掲げようかと思った。その日はひとりで大阪に出て『発掘された日本列島展』、『開高健展』、そして『ルーシー・リー展』の3つを見て周った。その間に今日の3枚以外にも掲げるつもりで撮った写真はあるが、『まさかこの写真を掲げる理由は見当たらない』と、最も掲げるきっかけが見つけられそうにないと確信していたものが、大地震が生じたことで思わぬ糸口がほどけた。とはいえ、今後その写真をこのブログに掲載するかどうかを迷っている。掲載するとしても、地震が生じたことで実現した筆者個人に関係する出来事については書かないだろう。だが、内心自分の長年の思いが意外な形で日の目を見たことに驚いている。それは喜びなのだが、その喜びが大地震という災害に関係して生じたことなので、複雑な思いをしている。もっと言えば、その実現したことは、この10年以上もの間、何度も夢に見て苦しんでいたことに大きく関係し、その苦しみが大地震という全く予期しない出来事に絡んで氷解した、あるいはほぼそうなったことに一種の恐さを感じている。何のことやら意味がわからないはずだが、別の言い方をすればこうだ。大地震以降、このブログは何らかの形で毎日必ずそれについて少しは触れているが、地震の1か月前に撮った写真が、今回の地震に反応しての筆者の行動を予期していることがわかって、驚いているということだ。だが、それは正確ではないかもしれない。筆者の思いどおりに何事も進んで来ている点で、驚きではないからだ。地震があったことによって、閉ざされていた門が開いたと言ってよく、今日掲げる3枚の写真も、ここでは触れないが、その閉ざされていた門と深く関係するもので、自分にとっては大きな意味を持っている。そして、その3枚を地震が生じた後、こうして掲げることになったのを、より意味深く感じている。
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 さて、最初の1枚は桜だ。2月中旬のまだ寒い頃に、大阪のど真ん中でこれを見かけた。この桜の下にはチューリップが取り囲んでいたが、それは写さなかった。造花の桜はさびしいものだ。誰も造花とわかれば軽蔑する。撤去しない限りいつまで同じ形でそこにある造花の桜は、桜の美学に反する。それでもこうした造花の桜を春になるとよく見かけるのは、街が華やかなピンク色に少しでも染まって見えてほしいという思いによる。筆者が大阪に住んでいた頃、近所にこうした造花を作っていたおじさんがいた。生きていれば80代のはずだが、この人とは銭湯で知り合い、それなりに付き合いがあった。筆者が小説家ならばその人を題材に短編を書くだろう。とにかく変わった人であった。その人の奥さんと一緒に家でプレス機を置いて花ビラや葉の皺を加工しているところを見せてもらったことがある。そうした家内工業は駆逐されてしまって、今では大きな会社しか残っていないと思うが、当時と今の桜の造花が全く変化がないのは、桜に関しては造花は早々と完成したからで、それだけ日本では造花の中で需要が多いことを示すだろう。どうでもいいことを書いてしまった。造花の桜から連想するおじさんについてもっと書くべきだが、この場では躊躇する内容が多い。さて、次の1枚は堺筋に架かるなにわ橋を中之島に下りて写したものだ。『夢みる家具 森谷延雄の世界』で触れたが、1月にもこの橋をわたっている。その時は夜だった。そして、写真に写る中之島に下りる階段を買い物かごを提げた女性が足早に下りて行った。そのことを思い出したので、筆者も同じように下りて、そして写真を撮った。撮影した理由は、丸い石すなわちゴッタが数個見えたからだ。中之島のこの界隈は、河川敷にレストランが新しく出来たりして、夜になってもそれなりに人が訪れることをその後知った。であるから、女性が買い物に行くのにこの橋を利用するのは納得出来ることなのだ。この写真を撮っている時、一眼レフのカメラを持った人が筆者の方を横から見つめていた。『何を撮っているのだろう』という不思議そうな顔をしていたが、被写体にならないと思っていたのかもしれない。実際そのとおりかもしれないが、筆者なりに撮っておきたい理由があった。だがそれには触れない。3枚目の写真は天神橋筋商店街に去年出来たスーパー玉出だ。玉出は大阪西成の地名で、そこにこのスーパーの本店があるのだろうか。いずれにしても大阪南部を拠点に展開しているスーパーで、市内各地にある。このスーパーは大阪北部に進出することが長年の夢だったが、天神橋筋商店街のパチンコ屋を改装してオープンしたのがこの店だ。近くにはJR環状線の天満駅があって、立ち寄るには便利で、いつ訪れても満員だ。特別安いというほどでもないが、この店は大阪に出た際によく立ち寄るようになっている。ここで買い物をして阪急に乗って嵐山に帰るのだが、地元のスーパーに行くより便利で安い。大阪地下鉄堺筋線の恵美須町駅の近くにスーパーがあって、もう7、8年前のえべっさんに行った際に立ち寄ったことがある。店内に派手なネオンがあって、さすが大阪と思ったものだが、それがスーパー玉出に入った最初であった。その後空堀商店街や生野の店にも入ったことがあるが、どこも同じ装飾をしてある。またレジが中国人の若い女性ばかりで、愛想はないがテキパキしていて気持ちがよい。この3枚目の写真は先の2枚とは無関係のようだが、筆者の思いの中では相互に関連している。
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 カメラを持って出かけると、たいていは写したくなるものに遭遇する。そう言えば一昨日は、電車の中で隣に立っていた髭面で眼鏡の若い男性がおもむろにニコンの一眼レフを取り出し、シャッターを切った。すぐにその画像がカメラの背面に映り、それを筆者も確認することが出来たが、カメラをかまえた時から筆者が予想したとおり、隣の車両の端、撮影者からは2メートルほどの距離にいて、座席でぐっすり眠る老人の剥げた頭が中心になっていた。頭の半分に光が射し、そこがテカッと光っていて、また老人がいかにも労働者風で疲れ切っている様子が、地震で被災した人を連想させるところがあった。それなりに面白い写真と言えるかもしれないが、ガラス越しに他人の眠る姿を撮るのはいい趣味とは言えない。だが、そういうことを思っていてはまともなカメラマンになれない。図々しく他人に踏み込んで、世界は自分のために奉仕していると思うくらいでなければ、迫力ある写真は撮れない。これは以前に書いたことがある7、8年前の出来事だが、観光客がよく通る嵯峨野の竹林の際で、初老の婦人が大原女の格好で珍味類を路上販売していた。筆者はそこを通りがかった時、初老の男性がその婦人に向けてカメラのシャッターを切った。婦人はその様子を見て、10メートルほど離れていたにもかかわらず、男性に勝手に撮るとは何事かと、しつこくまくし立てた。そのヒステリーに男性はすごすごと背を丸めて撤退したが、婦人の罵声はもっともな話だ。人を撮影する場合は許可を得るのが当然ではないだろうか。撮影されて嬉しくない人はいる。それを思うので、筆者は見知らぬ人を中心に写真を撮ることはしない。人が入ることがあっても、あえて人を写し込む思いはなく、ただその角度内に人がいて、その人が移動するのを待っていることが出来なかった場合だ。だが、写真は人が写っていないとやはりさびしいものになりがちで、顔がわからなくても人は写っている方がいい。それでも筆者の撮る写真は9割が無人か、あるいはそれに等しいほどに人は点景として写り込んでいる。そこに筆者の性格が出ているだろう。
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by uuuzen | 2011-03-28 14:02 | ●新・嵐山だより | Comments(0)


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