●嵐山駅前の変化、その78(脇道から広場)
験の夢を見たと、先日家内の兄が話してくれた。定年後に予備校に勤めていることがその理由だと想像するが、それ以外に学生時代の苦痛が心の奥に根を張っているからだろう。



筆者は数年に一度そのような試験絡みの夢を見る。夢の中で、全く勉強していなかった箇所があることを自覚していながら、その学習がテストの当日に間に合わず、万事休すという思いを抱いて目覚める。何ともいやな夢を見たと思いながら、現在そのようなテストのある生活から解放されていることに胸をなで下ろす。日本は資格社会と言われ、学校を卒業した後も試験を受ける機会は多く、また学生時代の考えが抜け切らず、不要と思える資格まで取得するのに躍起になっている人もある。使わない資格に意味があるとは思えないが、資格をたくさん持つことで人生を大船に乗った気分で進めると思っているのだろう。筆者は資格嫌いで、それが取得出来る機会があっても無視して来た。だが、これは資格ではないが、コンテストに作品を応募することは多少続けて来た。ところがこれも、世間で最高権威と思われている会に出品することはしない。そして、目指す公募展で望む賞をもらった後はそれに関心がなくなった。自分の技術が世間でどの程度であるのかを確認出来ればそれでよかったのだ。今は資格試験や公募展からは無縁となって、気分はまさにゆうゆうゆうぜんだが、これは若くて挑戦気分に溢れる人からすれば精神の弛緩状態で、世の中にいてもいなくてもいい存在に思えるだろう。日本では、一旦資格を取ってしまえばそれがいくら錆びつこうが、それがなくては勤められない機関の中で保護されて過ごすことが出来るし、また本人もそれを当然と思ってなおのこと努力しないことになる。そういう人は大勢いる。そして、そういう安楽な道のあることを子どもはよく知っているので、いい大学を目指し、また資格を取ろうとしたりする。そして、資格のない世界や、資格が通用しない世界は人生の脱落者がたむろするところと考えることにもなる。資格がなくても、積み重ねた経歴がものを言う世界はある。履歴書で言えば職歴がそれに当たる。だが、この職歴も有名な会社にでも勤務していたという資格同然のものならばいいが、そうでない自営などの場合、面接官からはいったい何をして来たのかと馬鹿にもされるだろう。そのため、筆者はどこかへ勤めて給料をもらう生活は出来ないし、またするつもりもないが、食べて行く必要はあるから、何らかの行為を金に変える必要がある。それを労働と言うが、筆者はほとんどそのことを自覚したことがない。にもかかわらず、この年齢まで生きて来たのは、きっと霞を食べるだけで平気な仙人かと思わないでもない。仙人は長生きするものであるから、まだ20年や30年はゆうゆうゆうぜんとした気分で生活したいものだが、さてどうなるか。
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 一昨日、芦屋に二人展を見に行った帰り、阪神の岩屋駅に行き、そこで顔馴染みの路上販売店で割れ洋菓子を買った。小雨が降っていたが、傘は持って出なかった。駅に戻ってプラットホームを歩いていると、右足が滑って、体が右に横倒しになった。その瞬間右手に持った菓子入りの大きな袋がグシャッという音を立てた。どうせ割れ菓子なので、それが粉になってもどうってことはない。その菓子袋が、体全体をコンクリートに打ちつけることを防いだ。だが、右の骨盤を打って痛みが走った。コートを着ていたので、軽傷で済んだが、これがもっと高齢なら、骨盤骨折で動けなかったろう。筆者が見事に滑ったそのかたわらに子ども連れの親子がいて、筆者をじっと見ていた。バナナの皮でも落ちていたなら話はわかるが、たいして濡れてもいないのに転んだ。転ぶなど全く予想していなかったために転んだのだ。これが足元に雪や氷があれば注意する。普段たいていの人は転ぶことを意識せずに歩いているが、筆者がちょっとした湿り気に足を取られて転んだことは、路上の小石に蹴つまずく可能性を示唆していて、老人が杖をついて歩くことの意味がわかる。つまり、簡単に言えば老人を自覚した方がいい年齢になったのだ。まだどうにか50歳台であるので、老人老人と何度も書くのは早くそうなりたがっているようなところがあるが、還暦を迎える年が回って来たとなれば、老人を意識するのは仕方がない。ところで今は入試のシーズンであるから、学生が筆者と同じように駅で見事に転ぶと、縁起が悪いと思うだろう。あるいは、滑ることをそれで体験したので、テストの方はOKと思うか。それはそうと、阪神電車で梅田に出て、地下を歩いて阪急に乗ろうと階段を上がっていると、人が階段の途中で群がっていた。通りすがりに覗くと、60代半ばの男性が倒れていた。階段を転げ落ちたようだ。頭を打ったのかもしれない。それが筆者であったかもしれず、そのような事故がいつどこであるかわからないことを思う。だが、これは自覚していても防ぎようがない。ある程度は用心して歩くことで防止出来るが、その用心ぶりがいかにも老人っぽい仕草となる。いや、逆に見れば、老人になると体力が落ちて動作がのろくなるが、それは本能的に事故を思って用心してのことで、意識せずとも自然にそのような行動が身につくだろう。筆者は転んだ後、さっと立ち上がった。立ち直りが早い分、まだどうにか若い。今日の写真は7月14日のものだ。明日も同じ日の別角度のものを数枚掲げる。今日の3枚目は阪急嵐山駅の改札を出て右手すぐの駐車場で、前回は「嵐山駅前の変化、その69」に掲げた。いよいよアスファルトが張られて営業間近だ。
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 もう少し書こう。昨夜久しぶりに胡粉を乳鉢で練っていると、底が抜けた。練っている時、鉢の底を乳棒でこんこんと叩いた。その音がいつもとは違って鈍かった。わずかなヒビが入っていたのだろう。厚い底がそのようになるとは、よほど力を入れて練っている証拠だが、家内に言わせると「単に荒っぽい」だ。そう言えば以前もっと大きな乳鉢を同じようにして割ったことがある。道具は消耗品であるから、そのように割れることは予想のうちに含めておくべきだが、それが納得行かない気分であるのは、事故に免疫があまりないからだ。事故は急に生ずると思っておくべきで、またそのようであるからこそ、新しいものも生まれる。話は戻る。岩屋のプラットホームで転んだ時、コートの右ポケットに、「嵐山駅前の変化、その14」の最後に掲げたメキシコの土産品の小銭入れや、画廊でもらった名刺、それに1日乗車券が入っていた。倒れた際、小銭入れのチャックが名刺や乗車券に強く押しつけられ、浮き彫りになった。阪神梅田駅の改札を出る時、改札が閉まったままで、出られなかった。おかしいなと思って乗車券を調べると、チャックの跡がついて皺になっている。それを元通りにすることは不可能だが、適当に指で曲げを延ばして入れ直すと、通過出来た。もらった名刺の1枚は中央に大きな家紋がエンボス加工してある。もう1枚は、活版印刷屋を探して特製の和紙に刷ったもので、文字が紙の表面より少し沈んで見える。この味わいは今は見られなくなったが、昔筆者が作った名刺は町の馴染みの印刷屋の活版印刷のため、同じように文字に味わいがある。最初に作った100枚はうっすらと卵色の上質なものを使った。同じものをもう100枚依頼したところ、印刷屋は間違って別の真っ白な紙に刷った。それは間違いであったが、刷り直しするほどでもなく、そのまま引き取った。ところがやはり気に入らず、ほとんど使っていない。また最初の100枚はまともに100人に手わたしたのではなく、個展の際に置くなどして、見知らぬ人が持って帰った枚数が多い。そのために1年に3枚程度しか名刺を交換したことがないと先日書いた。それはそうと、芦屋の個展ではある女性が筆者にわざわざ引き合わせると言い、近くに住む男性に電話をかけて呼んだ。そして、その人から活版印刷の名刺をもらったのに、筆者は名刺を持ち歩かず、手わたすことが出来なかった。こういう場合、後で送るのが礼儀なのだろう。その人は芦屋最後の遊び人と呼ばれているようで、絵に描いたようなダンディな趣味人だ。谷崎潤一郎の『細雪』の舞台になった地域の人で、実際その小説の気配が周囲に漂っているような気がした。彫刻や浄瑠璃、オペラなどの話を多少したが、狭い画廊の内部は人が次々と押し寄せ、あまり長居は出来なかった。お愛想にしろ、筆者の個展の際には訪れたいと言われたが、さてそれがいつになるやら。その粋人と話をした後で、岩屋駅に行って転んだ。
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by uuuzen | 2011-03-08 14:54 | ●駅前の変化 | Comments(0)


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