●嵐山駅前の変化、その36(ホテル、桜の林)
視図法的に遠近がよく利いた風景が好きだ。それは大阪のせせこましいところに生まれ育ったからだと思う。京都市内は大阪市内よりもっと家が建て込んでいる。



だが、そうした密集地域は数キロ四方と狭い。そこを出るとすぐに郊外で、遠近感豊かな風景を楽しむことが出来る。嵐山もそうした場所のひとつでだ。山が迫ると同時に、渡月橋から大堰川を見ると、視線がずっと上流に導かれる。それは京都の他の場所にはない雄大さだ。雄大とは、京都ではという意味だ。京都は盆地であるので、箱庭的な意識が発達したところで、雄大さも箱庭的にちんまりとまとまっている。透視図法で言えば、すぐに奥が迫っていて、視線がどこまでも遠くに導かれることがない。そういう雄大な景色なら、まだ松尾橋から上流の方がはるかに見事だ。ところで、筆者が透視図法を明確に意識した最初は中学生の頃で、ムンクの「叫び」だ。その絵がとても気になったのは、遠近感の強調のためとも思える。遠近はどんな絵にもあるが、「叫び」では橋の欄干の斜線が上空の雲の曲線とよく対照を成してよけいに直線が意識せられ、目は叫ぶ人物から後方にいるふたりの小さな人物に行き、そしてその奥の入り江や雲に移動する。その光景とほとんど同じ場所は毎日散歩する松尾橋の上でもあるから、想像をたくましくすればノルウェーに行かなくてもムンクの気持ちになることが出来る。だが、ムンクの時代のオスロは今の松尾橋界隈とは違ってもっと人が少なくてさびしかったろう。人や車の往来の騒々しさを割引して想像すると、ムンクが感じたように、夕日の頃は絶叫したくなるほどさびしい感情をもたらしたのかもしれない。そう思うと、なおさらオスロに行かずに松尾橋で空想している方がいい。ムンクの孤独を追体験して孤独を味わうならば、もっと温暖なイタリアを散策している方がよい。
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 透視図法的な景色が駅前のホテル建設現場に広がっている。今日は3月21日に撮影した写真を掲げる。6年前にそのすぐ北にある桜の林の片隅で温泉が出た。嵐山には念願のものだった。その湯を毎日小型トラックで吸い上げて、それを嵐山のいくつかの旅館に配っている。その様子はとてもちゃちで、有馬などと比べるのも恥ずかしいほどだが、温泉は温泉だ。温泉を掘ったのはそれら湯を利用しているいくつかの旅館だろう。権利がどのようになっているのかはよく知らない。ホテルはこの温泉の井戸から南に100メートルほどのところに建つ。パイプを埋設して温泉を引くことが出来る距離だろう。だが、それには市道の下を潜らねばならず、また温泉を掘った人たちの許可も必要だ。ホテルの設計図を見ると、そんなパイプの敷設はない。おそらく温泉は使わないが、ホテルであるので、使用する湯の量は大変なものだ。そのために上水と下水管の工事は前もって行なわれた。それにガスや電気もだが、数週間前から近くで大々的なガス工事を毎夜やっている。ホテルから50メートルほど離れた道路で、直径2メートルほどの深い穴をふたつ掘っている。どんな大きなマンホールの蓋が設置されるのかと思う。また、その工事の音があまりにうるさく、深夜よく眠れないことがある。昨日は大雨の中、昼間からまたそのすぐ近くの道路をカッターで切っていたから、ガス管は今までの地元住民が使用していたものの何倍もの量を供給する太さのものに変えられるようだ。地下1階、地上4階のホテルひとつ建つだけで、いかに多くの附帯工事を先行させる必要があるかがわかる。また、温泉が出た6年前にホテルの計画が浮上したと聞くが、着工が遅れたのは発掘調査の必要と、その結果、そこそこ何かが出て来たからだ。だが、その調査も完了し、そして今月7月から着工となった。見通しのよい光景は、やがてホテルによって視線がさえぎられる。視線のさえぎりは風通しの悪さも意味するから、説明会ではホテルの背後になる数軒の住民がかなり意見した。今まで川からの風があって涼しかったのが、ホテルという壁によって蒸し暑くなるという不満も出た。狭い京都市内に比べて嵐山は広々したところの代表であったのが、市中と何ら変わらないことになる。
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 さて、同じ21日に撮影した桜の林の写真も掲げておこう。「嵐山駅前の変化、その5」に同じ角度で撮影した2枚の写真を掲載したので見比べてほしい。それは1月17日に撮ったもので、約2か月ぶりとなる。その間、桜の蕾が次第に膨らんだ。もうひとつの大きな変化は、以前「雪見橋」で紹介した、中の島公園に至る木造の太鼓橋につながる道の片側にテント張りの店が出来たことだ。20日にテントを詰めた荷物が運び入れられ、設営が終わったのが21日であった。ちょうどそのときに撮影した。見通しのよい桜の林が、テントによって一気にそうではなくなった。近くにちょっとした食べ物を売る店がほとんどないので、観光客にとってはこうした店はありがたい面もあるし、また紅白の幕は桜に似合う情緒もある。そのため、土地の所有者である阪急も文句を言わないようだが、ある人から耳にしたところによると、警察が勝手に店を出すなと注意したところ、業者は昔からやっていることであり、今すぐにやめると生活権が侵されると主張し、結局警察は黙認しているようだ。2枚の写真は桜の林を東西反対方向からのものだが、2枚ともテントが視界をさえぎり、これら2枚だけではその奥に桜の木が続くことが想像出来ないだろう。このことは筆者にはなかなか面白かった。つまり、目前に何か問題が生じた場合、実際はその問題の向こうにずっと遠くまで視界が広がっていることを想像するならば、問題は些細なことに思えるのではないか。誰しも問題にぶち当たると、時としてそれが途方もない大きなものに見えて意気消沈する。だが、実際は一時的な場合が多い。その問題がなくなればまた眼前はすっきりする。実際はなかなかそうは行かないとしても、そのような心の余裕を常に持っていることは精神衛生上、きわめてよいことではないか。ただし、それがテントのような架設のものであればよいが、50年も建ち続ける巨大なホテルとなると、その陰になる住民は憂鬱だ。50年先には今生きている住民も、またホテル建設業者も生きていない。そう思えば住民としては引っ越しを考えたくもなるか。前にあるものが動かなければ、自分が動いて眼前の見通しをよくする必要がある。人間は動物であり、同じ場所に住み続けるより、適当に各地に住む方が楽しい。
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by uuuzen | 2010-07-14 01:05 | ●駅前の変化 | Comments(0)


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